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【トップに聞く 2026】インターメスティック上野博史社長 “目黒蓮効果”で夏の売上20%増、サングラス強化が奏功

Video by: FASHIONSNAP

 アイウェアブランド「ゾフ(Zoff)」を展開するインターメスティックは、2024年の東証プライム上場を経て「第2章」を掲げる。2025年はサングラス事業が起爆剤となり、2025年1〜9月期決算では2桁の増収増益を達成した。10月には「メガネスーパー」を傘下に持つホルスホールディングス(Horus HD)を完全子会社化し、業界3位に躍り出た。業界再編の渦の中心に立ち、勢いに乗るものの、貫くのは「ナンバーワンではなくオンリーワン」の姿勢。上野博史社長にその狙いを訊ねた。

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上野博史/インターメスティック社長

上野博史社長のポートレート

(うえの ひろし)1973年生まれ、東京都出身。創業者の上野照博代表取締役会長の次男。イギリスの大学院修了後、テレビやCMなどの映像制作会社に入社。2001年「ゾフ」ブランドの立ち上げに伴い、インターメスティックに入社。PR、マーケティング、商品開発、店舗設計など、あらゆるサービス設計のクリエイティブを担当。クリエイティブ デザイン オフィサーとしてブランディング全体に携わる。2020年11月、インターメスティック並びに子会社ゾフの社長に就任し、現在に至る。

◾️インターメスティックとは
1993年に上野照博現会長が創業。2001年にゾフ1号店を下北沢にオープン。低価格・高品質のメガネ専門店チェーンの先駆けとして、5000、7000、9000円のスリープライスを実現。2011年4月に100店舗、2017年4月に200店舗、2020年12月に300店舗を突破し、2025年6月時点で国内316店舗を構える。2024年に東証プライム市場に上場した。2024年12月期連結業績は売上高が前期比12.5%増の448億円、営業利益が同43.3%増の50億円、純利益が同37.2%増の35億円。

「度なしサングラス」で新規客層獲得

⎯⎯ 株式上場を経て「第2章」に突入した2025年は、どのような1年でしたか?

 本当にチャレンジングな1年でした。サングラスの需要増を機に、今までのメガネという事業を超えていかに顧客とのタッチポイントを増やせるかということに挑戦し、新しいお客様の獲得に本格的に挑みました。

 マーケティングやPR施策を通して、「紫外線カット率100%レンズ」を使用した「サンカット グラス(SUNCUT Glasses)」という商品の独自価値が非常にうまくお客様に伝わったと感じています。元々日本はサングラスの着用率が30%未満と非常に低いのですが、欧米諸国のように着用率70%を目指していきたいという気持ちで、今年は精一杯のPR活動をしました。紫外線量増加の影響で紫外線ケアが当たり前の時代になっているという社会環境も後押しし、2桁成長につながったと考えています。

トップクリエイターとともに“サングラスの日常化”を提案するコンセプトサイトを公開した。

Image by: インターメスティック

⎯⎯ 好調をけん引するサングラス事業の全体の売上に対するシェアを教えてください。

 サングラスの売上シェアは完成品サングラス(完成品として販売している度なしサングラス)だけで10%を超えており、業界内を見ても高い水準です。度入りサングラスも含め、フレームとレンズをカスタムいただくカスタムサングラス(半製品)を含めるともっと伸長する見込みです。

⎯⎯ サングラスの強化で、客層に変化はありましたか?

 20〜30代のお客様の獲得につながりました。矯正器具としてのメガネは、「壊した」「なくした」「ぼやけた」しか買う理由がありませんでした。メガネは度を合わせないと使えない「半製品」ですから、お店に足を運んでメンテナンスをする必要がありますよね。一方でサングラスはサイズが合っていれば度を入れなくても使用することができる「完成品」として販売できる点が新しいお客様とのタッチポイントになりました。

⎯⎯ 日本市場でサングラスの着用率が低い理由をどのように分析していますか?

 要因の一つとして、レンズの色が濃いサングラスは「不良の象徴」といったイメージが根強いことが挙げられると思います。ですから、紫外線カット率はそのままに色の薄いレンズを軸に打ち出しました。また、若い頃からサングラスを着用する習慣がないことや、学生にはサングラスが不要という暗黙の了解が浸透していることも原因の一つと考え、学校と協力して目の健康に対する理解を促すような取り組みも積極的に行いました。多くの学校や先生方から、学生のサングラス着用について議論いただいていて、実際に学校校則に変化が起きつつあります。そもそも「レンズに色がついていないと紫外線がカットできない」と勘違いされている方もかなり多いので、クリアレンズでも十分にカットすることができるという業界の常識の発信にも注力しています。

ゾフと提携した取り組みとして、東京都の女子聖学院中学校高等学校では、2025年10月27日から、国内で初めて学校生活での指定サングラスの着用を可能にした。

Image by: インターメスティック

⎯⎯ 6月にSnow Manの目黒蓮さんをグローバルブランドアンバサダーに起用しました。

 ニーズやタッチポイントの細分化によってマスコミュニケーションが非常に難しい時代の中で、目黒さんのように世代を問わず幅広い方々へしっかりと訴求ができる方というのは稀有な存在だと考えています。CMは反響もとても大きく、CMを放映した7〜8月で全店売上が前年同期比20%以上アップと好調に推移しました。サングラス姿に新鮮味があり、クリーンなイメージを持つ目黒さんに着用いただいたことも、サングラスが好調な要因の一つになったと考えています。

2025年6月に発信したキャンペーンヴィジュアル。目黒の着用モデルはヒット商品に。

Image by: インターメスティック

路面店強化を狙う2026年

⎯⎯ 2023年12月に中国本土(上海)撤退、シンガポール事業もフランチャイズに変更しました。海外展開に対する意向をお聞かせください。

 特に海外市場には安価な模倣品が流通していますので、オリジナリティを追求した商品や事業体で乗り込んでいかない限りはなかなか差別化ができていかない。まずは日本のビジネスを確立し、オリジナリティのあるコンテンツをしっかりと増やしてから海外を強化していくのが正しい道だと考えております。

⎯⎯ 国内ではインバウンドの売上は落ち着きつつあるという声もありますが、ゾフはいかがでしょうか?

 インバウンド売上は路面店に大きな影響が出るものですが、ゾフは路面店があまり多くなく、ショッピングセンターへの出店が中心です。ですので、現状はそこまでインバウンド情勢の影響を受けてはいません。心斎橋パルコ、グランド東京渋谷、西銀座、京都河原町、原宿の5店舗はインバウンド比率が約50〜70%(時期により変動)と高いですが、継続して売上を伸ばしています。インバウンド売上は我々としても重要で、それには路面店戦略が欠かせません。よって今年は路面店出店にも力を入れて、インバウンド客獲得を重視していきたいと考えています。

⎯⎯ ECの売上にも成長が見られます。こちらも度を合わせず購入が可能な「完成品サングラス」好調の影響が大きいのでしょうか。

 そうですね。このほか、社内の「スタッフインフルエンサー」の発信が奏功してきていることや、多数展開しているキャラクターIPやブランドなどとのコラボレーションといった、新しいタッチポイントから新規顧客の流入が大きくなっています。今後は少子化で雇用も難しくなっていきますから、特にECの成長には注力していきます。そうした中で、やはり完成品を買いやすい環境は引き続き作っていくべきだと考えています。

2025年は熊谷隆志の「GDC」との初コラボも発表。アパレルブランドやIP、インフルエンサーなどとの多数のコラボを展開しているのもゾフの特徴のひとつ。

Image by: インターメスティック

上場しても統合しても、「オンリーワン」であり続けたい

⎯⎯ 昨年12月に原宿・竹下通りにオープンした新業態店「ゾリータ トウキョウ(Zolita TOKYO、以下ゾリータ)」は、ロリータ × アイウェアという意外な掛け合わせが話題を呼びました。インバウンド集客が見込めるエリアで100%UVカットクリアレンズを使用したサングラスを打ち出す路面店ということで、ゾフの注力領域を掛け合わせた店舗でもあります。

 下北沢に1号店を出店し、原宿にも旗艦店を持つ「東京ブランド」であるゾフが、日本から海外に向けたカルチャーをどのように発信していくべきかと考えた時に、原宿の竹下通りという場所はインバウンドの注目度が高いエリアとして注目していました。そこでゾフらしい表現をするとしたら「ロリータ」だろうと。上場はしたものの、やはり遊び心というか、「カルチャーを作る」という姿勢がすごく重要であると常に考えていますので、ゾリータのような振り幅のある取り組みも続けていくことで、「日本にゾフあり」というコミュニケーションを取っていきたいと考えています。

◾️ゾリータ トウキョウで展開するアイウェアは全て「紫外線カット率100%クリアレンズ」

ゾフはなぜ「ロリータ」に着目? 新業態誕生の背景

FASHION

⎯⎯ ロリータ × アイウェアというコンセプトは上野社長が考案されたんですか?

 そうですね。色々な方の協力をいただいたのですが、正直何がヒットするのかもわからない時代の中で、市場規模自体は小さいかもしれませんが、熱心なファンの方々が紡いでいるロリータというカルチャーを僕が単純に応援したいという気持ちと、頭部から足元まで全身をこだわって飾っているのに、目元の部分を飾るものがないのではないかという気づき。そしてマーケットリサーチを通して、ルミネにもラフォーレにも109にもロリータのフロアがあるということは、需要は確実にある。ファンの方に愛されるブランドになれば、ファンの方が育ててくださるんじゃないかと考えました。

Image by: インターメスティック

⎯⎯ ロリータ以外のカルチャーとアイウェアの掛け合わせも今後検討していく?

 基本的に、ゾフはメガネをTシャツのように掛け替えるカルチャーを作るということをコンセプトにしています。しかし1号店が誕生してから25年経ってもなかなか「メガネを掛け替える」というカルチャーが育っていない中で、これからはしっかりとゾリータのような面白い切り口をどんどん発表していくことでカルチャーを作っていきたい。「ナンバーワン」を目指すのではなく、100年続く「オンリーワン」のカルチャーを作っていきたいというのが方針です。

⎯⎯ 昨年10月にはホルス ホールディングスを完全子会社化しました。合算の国内売上高(720億円)が業界3位*となり、第2位のジンズの最新国内売上高(766億円)に迫る勢いですが、「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」を目指すんですね。

※インターメスティック2024年12月期とホルスホールディングス2025年4月期の売上高の合算による

 業界の順位にはあまりこだわりがありません。単純に顧客を見て、今の時代に顧客が何を求めているのかが非常に重要だと考えています。今はどの業界も「モノ余り・コト不足」でビジネスが非常に難しい。誰もが簡単に情報にリーチできるからこそ、企業より顧客の方が先に情報を手に入れる場合もありますし、顧客が手に入れている情報は競合も手に入れてすぐ模倣できる。「オンリーワンじゃなきゃ生き残れない」、と強く感じます。これからAI時代になっていけばなおさら、オンリーワンのコンテンツをしっかりと作って、独自の商品で独自の顧客や市場を作っていく道筋がないと、本当にやりたいことの本質は見えてこないのではないかと思いますね。これは25年間やってきた上で私が辿り着いた結論です。これまでの取り組みは正直ただ競合を増やしただけだったというか。現在は競合が参入しやすい市場環境が国内だけでなく世界中で出来上がっています。だからこそ、他社が真似できないことを追求するのがとても重要ですね。

⎯⎯ 傘下に入った「メガネスーパー」に対して、どのような点を魅力に感じていますか?

 全くゾフの商圏と被らない事業を展開していること。彼らは非常にロードサイドが強いのですが、我々はデベロッパーに対して優位性があり、客層も異なります。何よりも、コンタクトレンズ販売で業界ナンバーワンの売上を持っている会社です。メガネの購入周期は3年に1度と言われていますが、コンタクトレンズの購入周期はとても短いですよね。コンタクトレンズを着用しながら、度なしのサングラスをかけてもらうなど、メガネとも親和性が高い商材です。

 タッチポイントを増やすという戦略の一環として、コンタクトレンズはメガネやサングラス購入のきっかけの一つになりうると考えます。コンタクトレンズの着用者は低年齢化が進んでいますし、新たな顧客獲得につながる重要なアイテムになってくると考えています。

⎯⎯ 子会社化からまだ日は浅いですが、すでに着手している連動施策はあるのでしょうか。

 施策自体はまだありませんが、2週間に1度セッションや分科会を開催しています。インターメスティック全体としてのどのようにシナジーを作っていくかはこれから考えていくことになりますが、同じ精神のもとにやっていきたいと考えています。

この日の上野社長のメガネはゾフの「STROBE XX」(販売終了品番)。

⎯⎯ 競合では「ジンズ」と比較されることが多いかと思います。競合にはないゾフの強みを教えてください。

 ジンズホールディングスは規模も大きく、スピード感と柔軟性に優れた素晴らしい企業だと思います。対して我々は、彼らの柔軟性を見習いつつも「競合ができないこと=ゾフにしかない価値」を提供していきたいと考えています。

⎯⎯ 具体的な事例を挙げると?

 成果が出ているサングラス事業では、単なるサングラスではなく、紫外線を100%カットするレンズを使用した「サンカット グラス(SUNCUT Glasses)」という商材を起点にコミュニケーションをしています。サングラスならどこでもいいのではなく、ゾフでしか手に入らない機能性を強みにゾフを選んでいただくのが重要です。

 日経MJ2025年上期ヒット商品番付に選出されたオールラバーメガネ「ガリレオ(Galileo)」は、“壊れにくい”ではなく、“壊れない”と言い切ることができる性能の商品として既存製品との差別化を図っています。特許の取得や商標の管理も含めて他社ができない部分に対しても徹底的に取り組むことでビジネスの軸を太くしていきたいと考えています。

オールラバーメガネ「ガリレオ」

Image by: インターメスティック

再編の時代こそ必要なのは「オリジナリティ」

⎯⎯ ゾフは2026年に誕生25周年を迎えます。更なる成長に向けて今後特に重点的に取り組んでいくことは?

 チャレンジ精神を忘れずに、今年以上の成長ができるようにきちんと顧客起点で新たな挑戦をして参りたいと思います。今までのビジネスモデルは大切にしつつも、現状国内市場自体は停滞傾向にあるので、今が新たにチャレンジを仕掛けていくフェーズなんだと思います。

 2024年の上場を経て、社内の士気は高まっていると思います。私の心境としては、社会的責任をどう果たしていけるかということが非常に大きくて、単純に我々が事業をいかに拡大していくかということだけでなく、アイウェアを誰もが付け替えるファッションアイテムとして確立させていく必要があると考えています。

⎯⎯ 改めて「ゾフ」らしさを一言で表すと?

 目指すべきはやはり「遊び心のあるブランド」です。真剣でありながら、どこか楽しくなるようなブランドでありたいですね。


⎯⎯ 今年のアイウェア市場はどのようになっていくと予想していますか?

 アイウェア市場単体で言うとまだわかりませんが、今は海外企業が積極的に日本企業を買収するなどプレッシャーがかかっているので、また新しい動きが出てくるんではないかなと思います。やはり資本があるところが強くなっていくのが現実ではあると思います。

⎯⎯ メガネスーパーの買収による規模の拡大はまさにそういった考えを象徴する出来事のように感じます。アイウェア業界内でも今後も再編が進んでいくとお考えになりますか?

 そうですね。再編によって企業価値が明確になるような形であれば進んでいくと思います。逆に言えば、だからこそ改めてオリジナリティが特に大切になってくるんだと思います。

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション雑貨、アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

最終更新日:

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