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夕方から始まるフリマという名の“温厚で緩やかなデモ” イケてる若者が集まる、高円寺「北中夜市」

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夕方から始まるフリマという名の“温厚で緩やかなデモ” イケてる若者が集まる、高円寺「北中夜市」

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 「すごいねー、なんだか違う街に来たみたい」とすれ違い様に聞こえたのは、高円寺駅の北口に位置する商店街通り、北中通りだ。この通りでは、毎月第三日曜日の16時から「北中夜市」と称する路上フリーマーケットが継続的に開催されている。大きくはない商店街通りだが、手作りのアクセサリーや古着、古物、ローカルフードなどを販売する40店舗が軒を連ね、大変な賑わいを見せている。特筆すべきは、商店街でのフリマであるにもかかわらず、出店者・来場者ともにファッショナブルな若年層が多いこと。また、出店枠を募れば若者から応募が殺到し、すぐ枠が埋まってしまうほど人気を集めている。

 北中夜市を企画するのは、高円寺の北中通りでリサイクルショップ「素人の乱」の店長である松本哉。松本は、2000年代に、「途中でやめる」の山下陽光らと共に、いたずらに消費を誘起する行事への抗議を名分に駅前でコタツと鍋を出して行った「クリスマス粉砕集会」や、チャリ撤去に反対する「オレの自転車を返せデモ」など、デモの特性を活かした活動で話題をさらった過去を持つ。そんな松本は、なぜ北中夜市を開催するに至ったのか。そこには独特で着実な「まちづくり」の考えがあった。

出店者も、来場者も若い人が本当に多いですね。

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 楽しそうな雰囲気に誘われてフラっと立ち寄ってくれる人が多くて。最初は来場者だった人が今度は出店者になり、「同い年くらいの人が出店しているなら」とまた新しい来場者が増える、というサイクルなのかな。ありがたいことですよね。

 話は少し違うかもしれないけど、10年前と比べて若い子たちが小さい商売に意欲的で「大きいところに所属しなくてもいいから、自分がやれることをやっていく」というのを求めている気がするんですよね。景気が悪くなったことも要因としてはあると思うんだけど、「有名人になりたい」ではなく「自分のお店を持ちたい」という小さな野望を叶えるために、出店している人も多いんじゃないかな。北中夜市を通して、「商売をやるということは、こんなにおもしろいんだ」と思って欲しいし、そういう子たちが将来お店を構えてくれたら、商店街の人間としてそれ以上に嬉しいことってないよ。

出店数は?

 フリーマーケットが30店舗、北中商店街から10店舗の計40店が軒を連ねます。出店料は一律1000円で、出店枠は早い者勝ち。商店街には、日曜休みのお店も多いことから、毎週第三日曜日にやることにしています。

最近では出店枠が早々に埋まってしまうと聞きました。

 こっちが驚いているくらいですよ(笑)。何かきっかけがあって爆発的に認知度を広めたというわけではなく、徐々に知られていったんだと思います。出店者の話を聞いていると、フリマをやっていた人たちがフリマの行き場を失い、最終的に流れ着いたのが北中夜市だった、というのが一番正確かも。たしかに、代々木公園や新宿の三角広場など、昔は定期的にフリーマーケットって開催されていたんですけどね。再開発はもちろんですけど、ごちゃごちゃした雰囲気がどんどん世の中に受け入れられなくなって、その中でフリマ文化も淘汰されたのかな。

北中夜市が初開催されたのは、2013年。

 実は、それ以前から北中商店街でフリーマーケットをやっていたんですよ。でも、一年に一度のお祭りとして開催していたんです。震災と原発問題で世の中が暗くなったことを受けて、地域の人がちゃんと繋がるような街にしなければ、と2013年から名称を変えて、定期的に開催することにしました。

「夜市」と聞くと、屋台、露店、雑貨、売店、移動販売などが毎日開催されている、台湾の夜市を思い浮かべました。

 たしかにそれもちょっと着想としてありましたね。台湾に行って夜市が盛り上がっているのを目の当たりにしたんですけど、何に驚いたって、台湾の夜市は一過性のお祭りではなく、生活の場として機能していたこと。夜中でも関係なく、子どもやカップルが縁日で遊んでいたり、1人でご飯を食べている人も、家族でご飯を食べている人もいる。

夜市とは日常の延長にあり、生活の場として機能していることである、と。

 屋内で開催されるような、デザインフェスタやTOKYO ART BOOK FAIRのような「フェスティバル」は一過性のお祭り感が強いけど、屋外で催される「市場」「夜市」の方が生活に紐づいている気がしませんか?公園で催されるフリーマーケットも、フリマが終わったらただの公園に戻っちゃうけど、商店街というそもそも日常と密接な場所だったら、フリマが終わっても商店街は商店街として機能し続けるじゃないですか。だから、元々あったフリマを少しだけアレンジしたんです。具体的には、回数を増やして、日常に馴染ませること、飲食ブースを増やし、座って飲めるところを意図的に作ること、昼ではなく夕方からにすることで、帰る人と来る人がゆるく立ち寄れるようすることなどです。生活の延長でありながらも、なんとなく見知らぬ人と話しやすい雰囲気が市場や夜市にはあると思うんですよね。

飲食ブースのほとんどは、高円寺周辺にお店を構える人たちが出店していますよね。

 そうですね。北中夜市が終わった後も「あ、あの時出店していた人だ」とか「あの時来てくれた人だ」という会話になりやすくて、結果的に店舗への継続的な集客にも繋がっているんです。俺は、街を歩いているだけで挨拶ができるような街になれば、と思っていて。都市開発が進み、綺麗にはなっていくけどコミュニティが減っていく中で、北中夜市が開かれたコミュニティとして機能すればいいな、と。

商店街には伝統にこだわる年配の人も多いイメージですが、新しい取り組みに消極的な意見はなかったんですか?

 そりゃありましたよ。でも、やっているうちに「いいね」と言ってくれるようになりましたね。あとは、俺らって死ぬほど腰が低いんですよ。「すみません!終わった後の掃除とかなんでもやります!」と謝りながら、異様に腰は低いのに強行突破はするという技で切り抜けました(笑)。変にツッパリ精神を出すと、絶対に喧嘩になりますからね。新しいことをするには、ある程度の土下座精神も必要だ、と俺は訴えたい(笑)。

松本さんの関節に彫られたタトゥー。「ナックルタトゥーって、みんな汚い言葉を彫りがちだから、俺はあえて優しくていい言葉を彫ろうと思って(笑)」

松本さんは「素人の乱」というリサイクルショップの店長でもあります。

 昔は買い付けも行っていたんですけど、あまり面白くなくて。今は、近所の人からの買取がほとんどですね。やっぱり、地域でモノを回している方が楽しくて。同じような理由から、アルバイトも高円寺の人しか雇わないと決めています。

素人の乱という名前の由来は?

 古くからの友人である陽光くん(「途中でやめる」デザイナー 山下陽光)と決めました。2人で「店を開こう」と決めた時に、陽光くんは「ニート・スポット」が良いと言っていて、俺は「百姓一揆」が良いと意見が割れたんですよ。それで、折り合いつかないので、折衷案として「素人の乱」になった。深い意味なんてまったくない(笑)。

 陽光くんとは、彼が一時的に高円寺で人の店を間借りして「トリオフォーショップ」という服屋を営んでいた時に知り合って、かれこれ20年くらいの仲になりますね。彼は、ただの商売人になるつもりが無いのがいいですよね。自分が一番得意なファッションという無理のない範囲で、稼いで、その範疇でふざけていますから。

取材中、かかってきた電話をと取る松本さん。「『立ち退きで次に出すお店の物件を探しているんだけど何か知りませんか?』だって。俺は何屋さんだよ(笑)。でも、俺のところには不思議と物件情報があつまってくるんだよなぁ」

松本さんは「儲ける」という感覚はあるんですか?

 商売人ですから儲けの努力はしているつもりなんだけど、実際のところは「どうでもいい」と思っているのかも。どちらかと言えば、続けることの方が大事で、お店や生活が成り立ってさえいればいいんです。俺、儲けるのは下手なんだけど、トントンにするのは超うまいんですよ。リサイクルショップもギリギリ±0で運営しているし、赤字になったこともないけど、別に儲かっているわけでもない(笑)。

松本さんが高円寺に店を構えて約20年が経ちました。幼少期は江東区亀戸で過ごしたそうですが、なぜ縁もゆかりもない高円寺に愛着を持ち続けているんでしょうか?

 2つ理由があるかな。一つは、10代の時に初めて高円寺に来た時に、外国に行ったような気持ちになったこと。今は少し綺麗になってしまったけど、残党のようにおかしな人が生き残っているから、まだ街として楽しいと俺は思っている(笑)。個人的な感覚でしかないけど、下北沢の再開発で、あそこら辺に住んでいた変な人たちが高円寺に流れている気もするんですよね。

 もう一つは、俺が町工場と商店街ばかりの亀戸で育ったこと。小さい頃に、商店街のおじいちゃんやおばあちゃんに面倒を見てもらった思い出があって。知らない大人にいきなりぶん殴られたり、怒られたり、面白い遊びやたまに悪いことを教えてもらったことで、人格形成がされたと思っているんです。親と先生だけでは、綺麗事しか教えてくれないけど、「先生には内緒だぞ」という大人の茶目っ気みたいなものが、どれだけその人の人生を豊かにしてくれるか。俺としてはそれがとても大事だと思うから、気軽に挨拶できるような商店街を維持したいって思っている。

 俺に関して言えば、住んでいる場所も、遊んでいる場所も、働いている場所も全部高円寺なんです。そういう人が街を作らないといけないかな、と。全員がそうじゃなくても良いけどね。

2000年代初頭と比較すると、SNSの台頭で自警団が増え、自由やカオス的な雰囲気は年々薄まっているように感じます。

 「SNS拡散」という、警察よりも強力な人の正義によって、ボーダーラインのギリギリを攻める無法者が減りましたよね。「ちょっとでもダメなもんはダメ!」とルールをしっかり守る人と、本当に性根からの極悪人にきっちり分かれてしまったし、無駄なことがどんどん排除されていっている感覚もある。悪と善のグラデーションが2000年代にはまだあったかもしれないね。俺は、ボーダーラインギリギリのものが一番面白いと思っているんだけど、勘違いしないで欲しいのは、さっき言った「先生には内緒だぞ」的な悪いことは邪悪とは本質が全く異なるモノだということ。それに、「全員ボーダーラインギリギリを攻めろ」とも思わない。ボーダーラインを越えたくない人を越えさせるのは意味がないですからね。

 街の話にも繋がってくるんだけど、街に元気がなくなっていくと、コミュニティが無くなり、人は孤立せざるをえなくなるんです。そうすると、ご近所さんとの会話のような直接的な情報ではなく、ネットやニュースなどの知らない人からの情報がこの世の中の全てかのように錯覚してしまう。大半、ネットやニュースで流れている情報は綺麗事ばかりだけど、実際の世の中が綺麗事ばかりでまかり通っているわけではなく、グレーゾーンも存在するということは、生きていれば自然とわかっていくことですよね。人とのコミュニケーションで成り立つ、何が出てくるかわからないワクワク感を令和の時代でも味わって欲しいなという気持ちはあります。

右の男性は、昨日、高円寺の居酒屋で友達になった中国からの観光客だそう。

松本さんのこれまでの活動や、街への考えを聞いていると「北中夜市」というのは都市開発によって脅かされているコミュニティを守るための緩やかなデモなのでは、とも思いました。

 北中夜市は商店街主催のイベントだから、自分がやってきたことや「素人の乱」の活動と考えたことはないんだけど、どうしても「コミュニティを守りたい」「商店街や街をコミュニティとして維持したい」という考えから始まっているから、俺の思想はどうしても反映されやすいし、だからこそ俺も納得してやれているところがあります。なのでご指摘の通り、ある意味でこれは温厚で緩やかなデモなのかもしれない。

左)素人の乱で約10年働いている関さん。「松本さんは、はちゃめちゃなことをやってると思われがちだけど、人の道は外れてないんですよ。だからお店も、街の人々との関係性も長く続いてるんだと思います」

松本さんは、デモの特性をうまく利用したユニークな活動をされていたこともあり、様々な媒体で肩書きを「革命家」「活動家」と書かれていることも多いですよね。

 俺は、頭でっかちな思想や正義が大嫌いなんですよ。革命家とか活動家のような、思想を与えてくれるリーダー的な存在を世の中が求めているようにも感じているし、それをこんなに無責任な俺に投影されると「冗談じゃないよ!自分で考えてくれ!」と思う(笑)。

 俺は、何かをきっかけとした劇的な好転はこの世に存在しないと思っていて、極論を言えば、人の言うことを聞かない人を増やしていったほうが、生活のしづらい街や世の中は弱っていくと思うんですよ。だって、「このシステムを導入すれば世の中は劇的に良くなります!」と言われても、「そんなにうまくいくかな」って思いませんか?意図的に世の中のルールや体制に反抗するのではなく、自分の生活圏内で勝手をやって、それぞれの人が自分に嘘をつかず、正直に生きていけば、絶対に良い世の中になると本気で思っているんです。だから俺個人としては、あまり大きな変化やシステムの導入ではなく、「やれることをやる」というアプローチをし続けたい。

最後に、街とは誰のものだと思いますか?

 その街で過ごしている人のもの。住んでいる人、働いている人、遊びに来る人、全てを内包させて秩序を保たせることでこそ、コミュニティや新しい文化は生まれると思うんです。様々な人が集まれば、衝突が起こるのは当たり前で、全部が解決する日なんて来ないかもしれないけど、揉めたりしながら折り合いをつけ、秩序と無法がグラデーションのように変化していくのが街のあるべき姿なんじゃないかな。逆に言えば、ルールを勝手に定めることで「統制」を求めるのは最も暴力的だと思う。街、ひいては文化は、いろんな人が混ざり合うのが大事。混ざり合うきっかけに北中夜市がなれていたらいいなぁ。

(聞き手:古堅明日香)

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