Fashion インタビュー・対談

LVMHプライズファイナリスト「ルドヴィック デ サン サーナン」が提案する"性"への新たなアプローチ

ルドヴィック デ サン サーナン
Image by: FASHIONSNAP

 アートやセックス、ポップカルチャーを着想源に、センシュアルな服を作り出す27歳のデザイナー ルドヴィック デ サン サーナン(Ludovic de Saint Sernin) 。2018年LVMHプライズのファイナリストに選出され、デビューシーズンの2018年春夏コレクションは「アディッション アデライデ」や「スーパー エー マーケット」、伊勢丹新宿店などの有力店で展開している。ブランド立ち上げ早々から注目を集めるルドヴィックが提案する、「ユニセックス」や「ジェンダーレス」とは異なる"性"に対する新しいアプローチとは。

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【ルドヴィック デ サン サーナン】
 ロンドンとパリを拠点に活動するフランス人デザイナー。ベルギーで生まれ、幼少期をアフリカのコートジボワール共和国で過ごした後、家族でパリに移住。パリの芸術学校ESAA Duperréでファッションデザインを学んだ後、「バルマン」のデザインチームに加入。2018年春夏シーズンに自身の名を冠したブランド「ルドヴィック デ サン サーナン」を立ち上げた。2018年には「LVMH Prize for Young Fashion Designers 2018」のファイナリスト9組に選出されている。

インスタ限定で販売されたアイテムも

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ー ブランドの立ち上げからまだ1年ほどですが、短期間で支持を集めていますね。

 ブランド自体は新しいですが、世界観やイメージは出来上がっていると思っています。僕はルックブックやキャンペーンといったイメージを作り上げるのが好きで、世界観を色濃く反映したビジュアルが人の目に留まりやすい、ということもあるかもしれません。

ー 具体的にどのようなイメージなのでしょうか?

 ミニマリズムとセンシュアリティの融合とでも言いましょうか。常にエレガントにキープするようには意識しています。物議を醸すような表現ではないですが、性(=セックス)の要素に魅力を感じる人は少なくないようですね。ソーシャルメディアを通じて、そういったイメージや世界観を早い段階から認知してもらえていると感じています。

ー インスタグラムなどSNSに積極的ではない人もいるかと思いますが、ストレスや重荷に感じることはないですか?

 僕自身は楽しみながら使っていますね。オーガニックにフォロワーが増えていて嬉しいです。モデルやフォトグラファー、アートディレクターなど、インスタを通じて出会ったアーティストとコラボすることも多く、前シーズンのキャンペーンの撮影とディレクションを担当してくれたルイス・ベネガス(Luis Venegas)もその一人なんです。以前彼のサイン会に行ったことがあるのですが、当時彼は僕のことを知らなくて。その後、コレクションを見た彼からインスタ経由で連絡があり、一緒に仕事をすることになりました。バイヤーからインスタを通じて連絡をもらうこともあったり、ビジネスツールの一つとして重宝しています。顧客に直接販売することもありますね。


ー 顧客にはダイレクトメッセージ(DM)から販売するということでしょうか?

 はい。ファーストシーズンの2018年春夏コレクションで作ったレザーのレースアップブリーフはバイヤー向けには展開していなかったのですが、インスタに写真を投稿したところ「欲しい」という声が多くて。バレンタインに合わせて、「インスタ限定ポップアップ」と題してDMを介して直接販売しました。

ー 2018年秋冬コレクションのテーマは「シュルレアリスム」。

 シュルレアリスムは、普段僕が好んでいるミニマルなテイストに比べると少し派手で大胆なアートムーブメントです。特別魅力を感じていたわけではないのですが、今回のコレクションでは自分自身への挑戦として居心地の良い場所から抜け出し、シュルレアリスムを表現しようと思いました。具体的には、シャツのカフスを通常の倍くらいの大きさにデザインしたり、スカーフをそのままの長さでパンツとして生まれ変わらせたり。またサルバドール・ダリ(Salvador Dali)など多くのシュルレアリスムアーティストにとって重要なシンボルだった卵は、モデルの肩の上に乗せたものをはじめルックブックにもたくさん登場させています。

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(左)レペットとコラボしたブーツ/(右)ショーでモデルが肩にのせて登場した卵のピース

ー コレクションでは「レペット(Repetto)」やスカーフブランド「ベグアンドコー(Begg & Co)」とコラボレーションしていますね。どのような経緯で実現したのでしょうか?

 初めての秋冬コレクションということで、暖かく心地良いものにしたいと考えていて。ベグアンドコーのカシミヤが素晴らしかったので、スカーフをシュルレアリスムのアイデアに応用したいと思いました。レペットのシューズは、前シーズンのルックでスタイリングしていたことをきっかけに、今シーズン正式にコラボすることになったんです。フラットシューズとブーツを作っていて、ガーリーなイメージが強いレペットにとってもメンズが履けるシューズを作るのは新しい試みになったかと思います。

ー アートやセックスがクリエイション面において重要な要素である一方で、インスピレーション源にはクリスティーナ・アギレラなどポップシンガーも挙げています。

 デザインへのインスピレーションは旅から得ることが多いのですが、建築物や図書館で読んだ本、インスタで見かけたものから刺激を受けることもあります。ファッションは時に真面目すぎると感じることがあって、例えば一つのパンツが、安藤忠雄の建築物から影響を受けているのと同時に、アギレラのアルバムカバーやテレビドラマからインスパイアされていても良いと思うんです。相反するものを融合させるプロセスも楽しいですね。

"ユニセックスブランド"ではない

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ー ブランド立ち上げ前はオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)が率いる「バルマン(BALMAIN)」のデザインチームで経験を積みました。オリヴィエの元で働くのはどのような体験でしたか?

 バルマンではインターンとして働き始めました。オリヴィエとは歳も近く、若くして夢を叶えた人の近くで働くことはとても刺激的でしたね。多くのブランドではディレクターは遠い存在ですが、バルマンではオリヴィエと密にコミュニケーションをとりながら働ける環境で、とても楽しかった。今振り返っても素晴らしい経験だったと思います。

ー ウィメンズウェアで経験を積みながら、自分のブランドではなぜメンズを?

 メンズウェアに挑戦してみたい気持ちがありました。自分自身、買い物をするときに着たいと思うメンズブランドが少なかったんです。新鋭メンズブランドでシーズンごとに好きなアイテムを探すか、ウィメンズブランドで買い物することが多くて、自分にあったメンズブランドが一つでもあれば良いのにという思いがありました。ただ僕のブランドは、メンズファッションウィーク期間中に発表していますが、女性と男性の両方に向けた服として提案しています。実際、日本ではウィメンズ売り場で展開されていることの方が多いですね。

ー ユニセックスと表現されることについてどう感じますか?

 正直「ユニセックス」という言葉は、男性と女性の両性を打ち消しているようで好きじゃないんです。性は僕のコレクションにとって重要な要素のひとつなので。流動的なブランドで、男性が着たらメンズウェアで、女性が着たらウィメンズウェアというだけのこと。それを何と呼ぶか、名前を付ける必要があるとは思いませんね。

名前が長すぎる?カールからもらった意外なフィードバック

今年度のLVMHプライズのファイナリストにも選出。審査員にはカール・ラガーフェルドなど名だたるデザイナーがそろっていますね。

 学生の頃からずっと憧れていたデザイナーで、僕にとってはアイドルとも言える人たち。同じ部屋にいる、という事実だけで興奮しました(笑)。

ー フィードバックなど、何か印象に残りましたか?

 ニコラ・ジェスキエール(Nicholas Ghesquiere)は僕のブースに来て、2018年秋冬コレクションの卵のピースを指差して「インスタグラムのフィードで何度も見かけたよ」と声をかけてくれました。僕の作品を目にしているんだ、と感激しましたね。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)には、「君の名前は有名になるには長すぎる」と言われました(笑)。でも彼の名前も長い方だと思うので、カールならではのウィットに富んだジョークだろうと受け取っています。最終選考で、さらに深い話ができれば嬉しいですね。

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ー これから予定しているプロジェクトはありますか?

 今回の来日中に東京でフォトシュートをする予定です。日本人のフォトグラファーにコレクションを撮ってもらいたくて。あとはブランドにとって重要な「性=セックス」という要素と、今シーズンのコレクションに多く登場した「卵」に関連して、「テンガ(TENGA)」とコラボレーションしたいなとも考えているんです。それで今朝、企画書を送ったばかり。良い返事が聞けたら嬉しいですね。

場所提供:アデライデ

(聞き手:谷 桃子)

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