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映画のように香りで物語を紡ぐ フレグランスブランド「メゾン ド ラズィ」ができるまで

映画のように香りで物語を紡ぐ フレグランスブランド「メゾン ド ラズィ」ができるまで

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 現代のアジアンソウルをラグジュアリーに解釈し、香りの物語を紡ぐ──。シンガポール発のフレグランスブランド「メゾン ド ラズィ(MAISON DE L'ASIE)」が日本に上陸。熱気を帯びるフレグランス市場のなかで、静かに存在感を高めつつある。ファウンダーのエリザベス・リァウ氏は、生まれ育ったシンガポールを18歳で離れ海外に渡ったことで、西洋的オリエンタリズムとは一線を画す"生きたアジア"の精神を考える機会を得た。また、祖父の影響でクラシカルな映画や物語の世界にも没頭し、「頭の中では、いつも想像と現実が私のストーリーを作り上げている」というほどの愛好家だ。そんな彼女の香りのディレクションは、まるで映画監督のように、じっくりとストーリーを形作っていく。物語の世界に魅了された少女が香りの世界に足を踏み入れ、アジアを背負うブランドを目指す、創作の根源とは何か。

芸術好きな祖父と、兄たちと過ごし“クラシカル”なものが好きだった子ども時代

⎯⎯ここ数年、さまざまな新しいフレグランスブランドが誕生していますが、「メゾン ド ラズィ」がとりわけアジアを大切にする理由はなんでしょうか。

 自分のコアにあるアジアでの生活を、距離をおいて見つめ直したことが大きな要因でした。18歳で長年生活したシンガポールを離れ、オーストラリアに住み、一度シンガポールに戻り、ドバイでプライベートエクイティファンドに就職したのですが、その後もさまざまな国で過ごしたことで、アジアを新たな視点で見つめ直すことができるようになり、この“大陸”の解釈を広げ、高めることができると感じたのです。

⎯⎯シンガポールで過ごした幼少期、どんなお子さんでしたか?

 私は3人兄弟の末っ子で、とても仲が良い2人の兄がいました。そして、父方の祖父と特別親しくしていました。彼は私に芸術や映画、歴史などクリエイティブなあらゆるものを教えてくれて、かけがえのない時間を過ごしました。祖父や兄たちの影響で、子どもの頃から常に何かを観察し、想像していて、歳の割にクラシカルな作品を多く好んでいました。内省的で少し不思議な子だと思われていたかもしれません。口数は多くありませんでしたが、その分いつも私の脳内には何か物語が生まれていて、楽しんでいたんです。

⎯⎯フレグランスへの興味も、元々お持ちでしたか?

 ドバイで仕事を始めてから、頻繁にイタリアに旅行するようになり、フィレンツェで初めてニッチフレグランスを購入したんです。それで完全に心を奪われ、今に続くフレグランスとの関係が始まりました。

Image by: FASHIONSNAP

悲しくも美しい経験から、フレグランス作りがスタート

⎯⎯純粋な“フレグランス好き”が、ブランドを立ち上げようと考えた背景は何でしょうか。

 金融業でキャリアをスタートした後、アート分野の仕事に10年ほど携わりました。今思うと、さまざまなジャンルのアートに触れながら、人々との深いつながりや、感情の動きなどをじっくりと観察できるような"媒体"を探し求めていた気がします。同時に物語への情熱はずっと抱いていて、実は映画監督になりたいと考えていたくらいです。そうした自分の方向性を内省していくうちに、フレグランスがとても自然な表現媒体なのではないかと感じるようになりました。目には見えない香りを介して、記憶や感情を掻き立てる、稀有で美しいものですよね。そこに、私が長年頭の中に書き溜めてきた物語を乗せられないだろうかと。それから、人生には普遍的に共感を得る、表現されるべき瞬間があると強く思う経験も立ち上げのきっかけになりました。

⎯⎯表現されるべき瞬間とは、どういうものですか?

 私の場合は、2018年に母を亡くしたことが大きな転機になっています。非常に悲しい出来事でしたが、この脆くも人間的な瞬間を理解するために内面を見つめ直した時間は、ある種の美しさを感じる経験でもありました。大切な人の喪失は、誰しもが経験することですよね。この美しくエモーショナルな瞬間の物語をクリエイティブに落とし込み、共有することに意義を感じたのです。

Image by: FASHIONSNAP

⎯⎯強い感情的な経験と目に見えない香りという媒体がぴったりハマったんですね。

 元々、さまざまな原料を試して自分だけが使うフレグランスを作ったことがありましたが、創造の本当のきっかけとなったのは、立ち止まって自分自身とは何者なのか、そし てそこに至るまでのあらゆる道のりを問い直したことでした。ほんの小さな決断が、あるいは決断しなかったことが、いかに私たちの物語を脆くするのかを悟る瞬間は、非常に謙虚な気持ちになります。これらすべてが、この感情を「伝えたい」という願望につながりました。実際、映画のサ ウンドトラックは私を導いてくれることが多く、最初のチャプターは作曲家のエンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)による「ニュー・シネマ・パラダイス(New Cinema Paradise)」のサウンドトラックに導かれました。その「立ち止まる瞬間」を、美しいものに転換することで意味が生まれ、消化できるかもしれないと感じて、どこか運命に導かれるようにブランドをスタートしました。

目指すのは、映画のような香りの旅

⎯⎯ブランドが掲げる理念やテーマのようなものはありますか?

 「メゾン ド ラズィには、ふたつの核があります。ひとつは「魂の宿るラグジュアリー」であること。2つ目は「意外性を持ったアジアの香り」です。ブランド名はフランス語で「アジアの家」という意味を持っています。私がこのブランドで目指したのは、アジアに対する固定観念を打ち破り、映画のような香りの旅を通じて、感情的な記憶や哲学的な夢、アジアの物語を伝えていくことなんです。

 このブランドの香りは、映画のように続く物語の“章”と捉え、各章ごとに哲学・感情的なテーマを映し出しています。物語の背景にはアジアの国々があり、現在展開しているチャプター1はシンガポール、チャプター2はインドネシア、チャプター3はタイ、チャプター4がインド。さらに、各章に呼応するテーマを設けています。物語の主人公は、香りをまとう“あなた”自身。誰もがノスタルジアを感じたり、夢を見たり、自己を探求したりする経験があると思いますが、私は香りを通じてそれらをキュレーションしているような感覚なんです。

Image by: MAISON DE L'ASIE

4つのチャプターのテーマ
・チャプター1「シンガポール」:<追憶>物語の始まり。郷愁と記憶を語る3つの香り
・チャプター2「インドネシア」:<夢幻>3つの香りが魔法のようなバリ島の幻想へ誘う
・チャプター3「タイ」:<混沌>時の移り変わりを表現した3つのフレグランス
・チャプター4「インド」:<超越>世界の礎となる神聖な存在。心の安らぎを呼び起こす

⎯⎯香り作りのインスピレーションとして、自身の内なる経験や記憶などが大きく影響しているように感じます。

 インスピレーションの源は、アート、音楽、映画、そして記憶や経験から生まれる個人的な物語です。個人的なスタートであっても、誰しもが経験しうる物語として香りに投影したいと思っています。母親との繋がりの儚さを理解することから生まれた「マザー ラブ」から始まり、「ナンニャン」、「ロスト ラヴァーズ」と続き、シンガポールを舞台にした第1章「ノスタルジアとアイデンティティ」のコレクションが完成しました。このコレクションは、自分は誰か、どこから来たのかを問う物語が込められています。

マザー ラブ エキストレ ド パルファム

Image by: MAISON DE L'ASIE

 第2章を代表するフローラル調の香り「バリ ハイ」は、私のお気に入りの映画のひとつ「南太平洋(South Pacific・1958年)」に着想を得て作ったもので、誰しもが探し求める楽園や象徴的な理想像がテーマでした。10歳くらいの時に、祖父と何度も見た作品で、戦争中に米兵たちが太平洋の島々に避難するという話なのですが、“島”は多くの人が逃避する先、追い求める場所として描かれ、そしてこの映画のテーマソングが「バリ ハイ(Bali Ha'i)」という曲だったんです。香りはココナツやローズ、ラム、タバコリーフなどを組み合わせ、陶酔するようなフローラルに仕上げました。

⎯⎯内省的な“自分のストーリー”を、“誰しもが共感できるストーリー”へと昇華するのは、とても抽象的でクリエイティブな作業ですよね。日頃意識していることはありますか?

 私が大切にしているのは“オリジナルの思考”です。映画、読書、音楽、建築など多くのものからインスピーレーションを受け、散歩中も常に何かを考えています。単に見たものや聞いたものを記録するのではなく、理解し、自分なりの解釈で届けられるよう思索しているんです。そうした深い観察で、自らのオリジナルの思考を形成しているように思います。

⎯⎯メゾン ド ラズィのフレグランスが、いわゆる典型的なアジアの香りと異なる点は何でしょうか。

 私は、良いフレグランスハウスには、目を閉じてもそのブランドの香りだと分かるような核があるべきだと思います。設立当初から、控えめでエレガントであり、フランスの伝統的な調香技術に敬意を払いながら、アジアの香りの作り手として、どう表現するかを考えてきました。私たちはトレンドに倣った創作はしませんが、その代わりに本質的な品質にこだわることで、個性を編み出すように努めています。フレグランスは35〜40%の高濃度で、ルームフレグランスでさえ一般的なオードパルファムやオードトワレ程度の濃度に匹敵する構成なんです。

 この美しい品質と時間の経過によって香りが花開いていくような広がりを叶えました。まるで映画の物語が“展開”するように、香りの始まり、中間、終わりがあるように調香していったのです。香りのレイヤーが繊細に重なり移ろうことで、個性を持つことができたのだと思います。

マザー ラブ エキストレ ド パルファム(100mL、4万2900円)

Image by: MAISON DE L'ASIE

アジア発フレグランスとして“誇れる”ブランドに

⎯⎯ブランドを立ち上げてから約6年。現在は日本を含む海外に進出しています。困難や、反対に手応えを感じたターニングポイントはありましたか?

 立ち上げ当初から、世界に受け入れられると信じていました。初めは全て1人でこなし、クリスマスでさえ孤独に仕事をしていましたが、そんな時でも、これは私だけの物語ではなく、みんなの物語だという信念がありました。

 最初の転機は2023年で、初めてミラノの国際見本市(エクサンスでしょうか)に出展し、そこで良い反応を得ることができました。ちょうど中東では従来の重厚感のある香りから軽やかな香りに意識が広がり、アジアではヨーロッパや中東的な深い香りが評価されるようになっていて、メゾン ド ラズィの香りの広がり方がちょうど受け入れられるのではないかと、可能性に期待が高まりました。

 そして今年は、その見本市にパネルディスカッションのスピーカーとして招かれました。これが私たちのさらなるターニングポイントだと思います。最初は無名だったアジアのブランドが、代表して話すことは大きな責任を感じましたが、非常に誇らしい瞬間でもありました。

⎯⎯今後のローンチの計画を教えていただけますか?

 プロダクトについてお話しすると、ライフスタイルコレクションを広げ、年末にはキャンドルなどを発売する予定です。夏には、「コアコレクション」と「マスターパフューマーコレクション」のお披露目を計画しています。マスターパフューマーコレクションは世界的に著名な調香師たちと共にアジアを解釈するという面白い試みです。また、新しい香りについては、常にさまざまなアイデアがあり、すぐに作るのではなく年月を経て洗練させていくものもあるので、まだ世に出していない香りについて考えると、いつもとてもワクワクします。

⎯⎯たくさんの新作が控えているのですね!自身の表現媒体として始まったブランドですが、これからの未来像をどのように描いていますか?

 立ち上げ当初から、ラグジュアリー分野におけるグローバルなアジアブランドになるという大きな目標がありました。ビジネス面では今後も積極的にグローバルで展開していくつもりです。私たちのブランドには独自のポジショニングがあると見ています。 なぜなら、それは私たちのフレグランスやパッケージに込められた想い、ブランド哲学の真正性、私たちの物語、そしてそれらが目的と意図をもって語られていることに尽きると思うからです。さらに、お客さまは心から「意味のあるブランド」を求めている──。それこそが私がラグジュアリー消費財市場に参入した当初からの目標でした。アジアに対するステレオタイプが少しずつ緩和されてきている今、アジアブランドとして、自分たちだけでなく周りからも誇りに思ってもらえるブランドになれるように進み続けたいと思っています。

(編集:平原麻菜実)

最終更新日:

<取り扱い先>
下記百貨店フレグランスカウンター内
伊勢丹新宿店/東京大丸/新宿タカシマヤ/髙島屋横浜店/松坂屋名古屋店/髙島屋京都店/髙島屋大阪店/大丸 福岡天神/ブルーベル・ジャパン公式オンラインストア:ラトリエ デ パルファム

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