
Mame Kurogouchi 2025年秋冬コレクション
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
「連続的に姿をかえ、表情をかえてゆくかたち そこに日本的な特色は見出せないだろうか」。これは書籍「日本のかたち」(1978年/淡交社)の中にある「くずし=変容」という表題で書かれた一節だ。書道や作庭がそうであるように、厳正なシンメトリーを嫌い、崩しや乱し、ぼかしによって余韻を作ることを好む傾向を日本人の特質だとする書籍の考えにインスピレーションを受けたのは、「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」のデザイナー黒河内真衣子。前シーズンの2025年春夏コレクションも、同書に影響され日常にあふれる物体の多様なかたちに着想を得て製作したが、パリ時間3月4日に発表した2025年秋冬コレクションはかたちをそのまま服に落とし込むのではなく、一度自身のパーソナルな部分を通して、表現の本質的なアウトプットに試みた。
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日本のクリエイターが物を創るとき、どれほど西欧の模倣をしたところで、辺境の島国という日本人をとりかこむ空間や風土のせいか、知らず知らずのうちに形相化されてきてしまうものである。マメ クロゴウチは世界で唯一の染色技法を持つ「京都マーブル」や刺繍工房「笠盛」など、日本の職人たちの技に感銘を受け、日本の技術を世界に発信してきたが、今シーズンは少し様相が異なる。浮世絵をはじめとした日本の特異なデザインの根っこにある部分は何か、日本人としての手ぐせとは何か、そうして俯瞰した問答を経て2025年秋冬コレクションは作り上げられたのだろう。それは、2025年春夏コレクションで試みた、自然物から工芸品まで、さまざまな「かたち」の外郭を捉えるアプローチからさらに深淵へ向かう。

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コレクションの軸となったのは、同書でも言及されている「漆器」。黒河内自身、柔らかな曲線や漆の質感に魅了され、普段から漆器を使っているという。実際に漆器を思わせる艶やかで優しい曲線パターンは首を覆うほど高く立った襟が特徴のジャケットや、歪なペプラムデザインが特徴のドレスなど随所にみられ、カラーパレットにも朱や深紅といった漆器に由来する色が用いられた。黒河内は毎朝餅を食べているそうで、焼くと毎回違う形になる餅の"表情をかえてゆくかたち"に着想を得たのがダウンシリーズ。餅を噛んだ時のようなソフトなテクスチャーを作るため、生地には黒河内が描いた繊細な野草の模様と、ウォータープロテクト加工が施されており、雲が幾重にも重なっているかのような有機的なシルエットには、崩しや乱しの要素も含まれている。

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"連続的に姿をかえる"流転するかたちは、伝統的な墨流し技法によりコクーンシルエットのドレスとフリルスリーブのトップスで体現。刺繍やジャカード、ニットといったブランドを代表するテクニックで質感豊かに表現されたアイコニックな草花のモチーフは、紅葉が秋の到来を祝福するかのように時の移り変わりを描写する。また、使い終わったコンタクトレンズは乾燥すると破けたり、歪んだりするが、黒河内はそのかたちの変容を綺麗だと思い1dayコンタクトを日々収集しているという。同じもののはずなのに、一つ一つ違うかたちになってしまう、日常の中にある小さなかたちの変化も服のフォルムに反映されており、これは流行という現象があるように静的ではなく動的なファッションという性質にもリンクする。

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よくクリエイターは何かにインスピレーションを得てアイテムを製作するが、インスピレーション源になぜ自身が感動、諒解したのかの思案がなければただのコピーアンドペーストにしかならない。今シーズンのマメ クロゴウチは、黒河内が日々の生活で感じた気づきを自身の中で咀嚼し、その素晴らしさは日本人に通じる普遍的な価値観や嗜好性であり、グローバルで見ても特異で価値あるものではないかと世に伝えようとしている。プリミティブで、最も大切な表現者としての資質は、日常の体験を通して開花する。なぜ今服を通して表現するのか、そんな自問に対する答えをスタイリストの鴨下亜衣と作り上げた38体のルックで示してみせた。
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