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マッシュホールディングスが、2025年8月期の連結決算を発表した。売上高は前期比13%増の1363億円で、営業利益は2年連続で100億円を突破。2021年から4期連続の増収増益を記録してきたが、上場を控え、営業利益額の増減については発表しなかった。
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事業別では、ファッション事業が同14%増の941億円だった。看板ブランドの「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」が同8%増で350億円を突破したほか、「セルフォード(CELFORD)」が同16%増と成長。「スナイデル(SNIDEL)」ではメインラインが横ばいだったものの、ラウンジウェアの「スナイデル ホーム(SNIDEL HOME)」が同28%増の25億円超、コスメの「スナイデル ビューティ(SNIDEL BEAUTY)」が同26%増の17億円と成長し、スナイデルブランド全体では250億円に迫る規模となった。
2024年8月期にほぼ横ばいだったビューティ事業は、2023年4月に社長に就任した豊山ヤム陽子氏が指揮をとった構造改革が進み、同14%増の200億円だった。リテール事業では「コスメキッチン(Cosme Kitchen)」が同21%増、「ビープル(Biople)」が同8%増と伸長した。プライベートブランドでは、全体として伸びている中で、「トーン(to/one)」が同16%増と成長。特に新作コンシーラーのヒットが全体の売上を底上げした。スナイデル ビューティでは、人気のアイシャドウ「アイデザイナー n EX01」が累計販売数4万5000点を突破し、デビューから続く2桁成長を継続し売り上げをけん引している。
フード事業は減収。デリカテッセン「パリヤ(PARIYA)」をグリーンハウスグループに譲渡したマイナスが響いた。一方、「ジェラート ピケ カフェ(gelato pique cafe)」は同9%増、「手打ち蕎麦 欅」などを手掛ける蕎麦事業は同19%増と、パリヤを除いた既存事業は増収で着地した。
◆バブアー66%増、ライセンス事業が急成長
ウィメンズファッションを主力にする同社だが、2022年8月期以降、メンズ事業・ライセンス事業・キッズ&ベビー事業をさらなる成長への柱として設定。各カテゴリーの中長期の売上目標としてそれぞれ100億円を掲げている。2022年8月期時点では3カテゴリー計の売上高は75億円だったが、2025年8月期では282億円に成長。2026年8月期に300億円達成を見込む。
特にライセンス事業は、前期比167%増の156億円と急拡大した。2024年10月からの11ヶ月分が連結対象となった「レスポートサック(LeSportsac)」が寄与したことや、積極出店している「バブアー(Barbour)」が同66%増と大きく成長したことが貢献。バブアーの売上高は70億円(流通価格は100億円)に迫っている。メンズ事業は前期比10%増の71億円、キッズ&ベビー事業が同28%増の55億円だった。
◆海外事業が伸長、背景は?
国内売上高が1224億円、海外が138億円と、比率はおおよそ9:1。海外事業が同21%増と伸びた背景には、これまで約10年に渡り、小売事業を運営するためのパートナーとして取引があった中国企業を今年3月に買収したことがある。同社が展開しているハイエンドブランド「ヴィヴィニコ(IIIVIVINIKO)」などがポートフォリオに加わったことが増収に寄与、海外店舗数は89店の純増となった。
国内外を合わせたEC売上高は同3%増で、EC化率は35%だった。EC化率は前期から1ポイント減少したが、これは店舗売上が既存店で同6%増と好調だったことが要因だという。
2026年8月期の売上高は、同12%増となる1500億円超えを見込む。国内は同10%増、海外は同30%増の成長を目指す。
◆2025年8月期を振り返って 近藤広幸社長に聞く

マッシュホールディングス 近藤広幸社長
⎯⎯2025年8月期を振り返って、業績が良かったブランド、事業について教えてください。
まず、ジェラート ピケは大きく成長しました。メインラインだけでなく、スリープ、キッズ&ベビー、キャット&ドッグといったこの数年で立ち上げた新カテゴリーを含み軒並み前期比20%増以上と、成果が出ています。ビューティ事業ではコスメキッチン、ビープルの既存店売り上げが回復し、手応えを感じた1年でした。
⎯⎯基幹ブランドの1つであるスナイデルのメインラインは微増でした。
この1年間は中国の市況を鑑みて、スナイデルとジェラート ピケの新規海外出店をなるべく控えていました。今期(2026年8月期)から出店攻勢をかけ、スナイデルも成長を見込んでいます。また、スナイデル ホーム、スナイデルビューティが好調であり、これについてあまり悲観はしていません。
「ミラ オーウェン(Mila Owen)」「フレイ アイディー(FRAY I.D)」もほぼ横ばいでした。こちらも海外出店がほぼゼロだったため、大きな成長にはつながりませんでした。ただ、数字的な成長には表れていなかったとしても、モノづくりのレベル自体はかなり上がっており、感触はかなり良い。今後伸びていくと見込んでいます。リブランディングを進めていた「リリー ブラウン(LILY BROWN)」は2024年8月期に続いて2期連続で過去最高益を達成しました。 こちらも順調です。
⎯⎯ライセンス事業が高伸長しています。
レスポートサックは、我々の傘下に加わって以降の11ヶ月の業績として、前期の12ヶ月分との比較で5%の増収でした。元来の規模が大きいブランドなので、5%増というのはかなり手応えがあります。2026年8月期はアパレルラインもデビューし、更なる飛躍が期待できます。元々知名度があるブランドであり、我々に求められるのは若い女性たちにも期待されるブランドに転換すること。新商品や新ジャンルの開発も進めていくので、今後顧客のポートフォリオが大きく入れ替わると見ています。
バブアーは、以前はほとんどが男性客でしたが、我々のポートフォリオに加わって以降は女性客が増えています。カップルで購入してくれることも増えており、一定の手応えを感じています。

⎯⎯ビューティ事業は踊り場を脱した印象です。要因は?
構造改革によって、一人ひとりの力が結果に繋がりやすくなったことが大きいです。現場の声が届きやすくなりました。また、積極的なイベント開催も要因の一つです。「ビープルフェス」をECと店舗を巻き込んだ三位一体型に変えたり、コスメキッチンが主催する日本最大級のオーガニックの祭典「THE ORGANIC DAYS」を継続的に展開したりと、様々な施策が成功を重ねています。
ビューティ事業として海外展開も目指すところではありますが、今はまず国内でのビジネスに集中します。しっかりとMDを構築し、地盤固めを進めていきます。
⎯⎯さらなる成長に向けてカギを握る海外事業では、3月に中国の取引先を買収しました。
今回買収したパートナー企業とは10年近い付き合いで、ともに中国事業を成長させてきた「戦友」です。これを機に同じグループとしてやっていこうとなっただけなので、あまり大きく変わった実感はありません。
ただ、業績的な視点で見ると、るヴィヴィニコをはじめとする買収した企業の展開ブランドが上乗せされるのは大きい。これらのブランドは既存のマッシュブランドと同じく、出店やブランディングを強化し、育てていく方針です。ヴィヴィニコは、中国のドメスティックブランドとしてはかなり高額の部類で、客単価は5万〜7万円前後。当社のブランドポートフォリオの中でも価格帯としては最上位に位置することになるので、中国でこれまでアプローチできていなかった顧客層獲得に期待したいですね。

⎯⎯今後も積極的にM&Aを実施していく考えですか?
ブランド・企業に対するリスペクトがないまま、数字を大きくすることを目的にM&Aを進めてしまうと、企業風土が違いすぎてハレーションを起こすなど、裏目に出ることもあります。ですから、上場に向けて企業価値を高めるためにM&Aを加速していくという方針は打ち出していません。今回の件は、たまたま良いご縁があったということですね。2022年に、3〜5年以内の株式上場を掲げて投資ファンドのベインキャピタルに一部株式を売却しましたが、上場に向けて、順調に準備が進んでいると専門家にも言っていただいています。
⎯⎯2026年8月期の注力点を教えてください。
今期(2026年8月期)は売上高1500億円超えを目指します。カギを握るのは、ビューティ事業と海外事業の成長。特に海外事業はコロナ禍で苦しんだ分、2026年は本格的に反撃の年にします。ビューティも2年間かけて構造改革を進めてきたので、その成果が一気に表れてくる。それらに加え、これまで注力してきたメンズ、ライセンス、キッズ&ベビーという3つの新カテゴリーも引き続き伸ばしていきます。店舗数も今期中に35ほど純増する見込みです。
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