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VR服の新潮流 “普段着”が売れる「メタバースファッション」の現在地

ストリートスナップのように楽しむユーザーが増加

ベタバースファッションのコラージュ

じわりと盛り上がっているメタバースファッション

ベタバースファッションのコラージュ

じわりと盛り上がっているメタバースファッション

VR服の新潮流 “普段着”が売れる「メタバースファッション」の現在地

ストリートスナップのように楽しむユーザーが増加

ベタバースファッションのコラージュ

じわりと盛り上がっているメタバースファッション

 3Dモデルで作られた仮想空間で、ユーザーがアバターを操作し自由に発信・交流できるWebサービス、通称「メタバース」は、次世代のコミュニケーション手段として徐々に認知と利用が高まってきた。そんなメタバースの内側では、実はファッションを起点とした新たなカルチャーが誕生しつつある。(文・GANTAN.writing)

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メタバースの現在地 利用率8%の新世界

 2021年10月に「フェイスブック(Facebook)」が社名を「メタ(Meta)」へと変えてメタバース事業への注力を宣言、2030年にユーザー10億人という目標を掲げてから、あと少しで4年が経とうとしている。

 日本の現状はどうだろうか。博報堂DYホールディングスが実施している「メタバース生活者定点調査2024」(2025年3月発表)によると、国内でメタバース関連のサービスを「認知」している人は38.4%(2023年:40.5%、2022年:36.2%)。そのうち「2~3ヶ月以上の継続利用」をしている人は8.7%(2023年:8.4%、2022年:8.3%)だ。この数字を堅調と見るか、期待ハズレと捉えるかは人それぞれだろうが、市場として未だ拡大しきっていないような印象を受けたのではないだろうか。

グラフ

国内でメタバース関連のサービスを「認知」している人の割合(メタバース生活者定点調査2024より)

Image by: 博報堂DYホールディングス

 では、メタバースの中ではいま何が起きているのか。7月某日、VRプラットフォーム「ヴイアール チャット(VRChat)」で行われたユーザーイベントに参加した。VRChatは、2017年にユーザー登録を開始した古参のメタバースだ。

 イベント会場にアクセスすると、40人ほどのユーザーが思い思いに談笑していた。一目で気が付いたのは、アバターの「服装」の多彩さだ。ワンピースや色落ちしたデニムを着こなし、大胆なパターンを合わせた“スタイリング上級者”ユーザーもいる。サングラスやシルバーアクセサリーなどの小物使いも映える。

ポーズを取るアバター
ポーズを取るアバター

Image by: KKinosh

 このイベントの名前は「リアルクローズ集会(通称:リアクロ集会)」。アバターにリアルクローズ(普段着)を着せて集まっている。2022年3月からコミュニティを主催するJONER(ユーザーネーム:ジョネ)さんはこう話す。

「VRChatに『リアルクローズ』のトレンドが出てきたのは、ここ3年ほどです。いままでアバターの衣装はアニメ系やSF系の衣装が主流でしたが、徐々に現実にあるようなデザインのアイテムが増えてきています」(JONERさん)

女性のアバター

JONERさん(「リアクロ集会」主催)

Image by: GANTAN

 デニムのアイテムではコットンの繊維までモデリングが施され、縦落ちや“やれ感”など「わかる人にはわかる」質感が表現されている。スタイリングの雰囲気もリアルだ。

「『オーバーサイズ』と『サイズが大きな服』は違いますよね。そういう大づかみな理解ではなくて、ウエストの位置や、アイテムの合わせ方で今っぽさを追求するようになってきました。ファッションの解像度が高い人が増えてきたという印象です」(同氏)

 アバターを着こなした参加者たちの話題は、服のことばかり。男性も女性も混じり、なかには韓国からアクセスしてきた、日本語が堪能な海外ユーザーもいる。「おしゃれなアバターの条件は?」と聞いてみたところ、「自分らしいコーディネートを組んでいる人」という答えが多く聞かれた。

究極の着せ替え空間「VRChat」とは

 現在、継続利用者層8%という日本のメタバース人口。そこではユーザーたちが自由自在にアバターを着飾り、ファッションを楽しむカルチャーが盛り上がっていた。その中心地のひとつがVRChatだ。

 実はVRChatではアバター用のファッションアイテムが大量に流通しており、まるで現実のストリートのように着こなしを楽しめる。ユーザー本人の服の趣味を反映したコーデもあれば、逆に普段は着ない組み合わせを楽しむ人もいる。仮想空間では男性ユーザーが女性アバターを使ってウィメンズのコーデをすることも気軽にできるのだ。

コーディネート例
コーディネート例
コーディネート例
コーディネート例

Image by: ミズナ・リシア

 VRChatのユニークユーザー数は、現在世界で800万人以下。日本人は70万人程度と言われている(外部データから推計)。一般層向けのWebサービスとしては決して大きいとは言えない規模だが、そのなかに非常に濃い「アバターファッション」が生まれた背景を、サービスの黎明期から振り返ってみる。

 同サービスは2017年にユーザー登録を開始したアメリカ発のメタバースだ。日本ではまずアニメ・ゲーム・SFなどを好むユーザーに注目された。VTuberプロダクション「ホロライブ」「にじさんじ」が活動をスタートした時期とも重なっている。

 仮想空間でアバターを操作し、現実の性別やバックグラウンドにとらわれずに自己表現する楽しみが生まれてきたなかで、日本のVRChatコミュニティでは、3Dモデリングのスキルを持つユーザーがオリジナルのアバターを自作し、外部ツールでサービス内にアップロードして使う、独自のアバター文化が育っていった。

 ここまでが黎明期。その後、新型コロナウイルスのパンデミックでリモートコミュニケーションが生活の一部となり、メタバースも一気に光を浴びた。Facebook(現・Meta)の「Oculus Quest」などの高機能なVRヘッドセットの発売もユーザー層拡大を後押しするなか、VRChatにも変化が起きる。ユーザーが自作アバターを別のユーザーに配布したり、商品として販売したりするようになったのだ。いまもユーザーから愛される伝説的なアバターがいくつか登場した後、人気のアバターの髪型や体形をアレンジして自分なりの姿に変えるカスタムカルチャーが生まれ、ほぼ同時期にアバターに装着できる「着せ替えアイテム」の流通がはじまった。アバターのカスタムは、ユーザー内では「改変(かいへん)」と呼ばれている。人々がマスクで顔を隠し、ファッション業界では着心地重視のシルエットとエシカル・サステナビリティがトレンドになったパンデミック期。VRChatの小さな仮想空間では「アバター改変」という名のデジタルなファッションシーンがひっそりと誕生していたわけだ。

改変イメージ
改変イメージ

「改変」のプロセス

Image by: MADOi

 そして、2023年にパンデミックが事実上収束。メタバースも拡大期から落ち着くことになる。しかし、日本を中心とした個人ユーザーたちが自力で作り上げたVRChatのファッションブームは、全く勢いを落とさなかった。

市場規模は50億円超えか 売れまくる「VR服」

 現在、VRChatでのファッションの素材となるアバターやアイテムの大部分は、日本ではピクシブ社が運営する個人クリエイター向けマーケットプレイス「ブース(BOOTH)」で販売されている。

BOOTHに出品されている商品

BOOTHのアイテム写真

Image by: Lily♡jewelry

BOOTHのアイテム写真

Image by: ちよ家

BOOTHのアイテム写真

Image by: EXTENSION CLOTHING

 現在、BOOTHの3Dモデルカテゴリーは、実質的にVRChat用アイテムの売り場になっていると言っても過言ではない。実際、BOOTHに出品中の3Dモデル約20万点(2025年7月末時点)の人気アイテム上位100位まで確認したところ、すべてがVRChat対応だった。では、売上高はどの程度あるのか。

グラフ
グラフ

3Dモデル商品の取扱高(「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2025」より)

Image by: BOOTH

 ブースの公式発表では、3Dモデル商品の取扱高は2024年時点で約58億円。前年比で約187%成長、2018年の約5000万円と比較すると116倍という凄まじい拡大を続けている。ブースの運営は、この成長を牽引した要素を「VRChatの利用拡大」だと説明している。あくまで推測だが、58億円のうち50億円以上はVRChat内の経済圏なのではないか。

 冒頭にあげたように、2022年から2024年までの3年間、メタバース全体の利用者は8%台を行ったり来たりしていた。その一方、VRChatではマーケットサイズの激動とともに新興のクリエイターエコノミーが勃興していたのだ。2024年の注文者数は約22万人(前年比147%増)に成長。ユーザーからクリエイターが生まれ、アイテムはトップスやボトムスだけではなく、スニーカーからキャップ、バッグ、アクセサリー、ネイルチップやタトゥーシールまで広がり、バラエティ豊かなコーディネートが仮想空間で繰り広げられるようになった。

バーチャル上のファッション
バーチャル上のファッション
バーチャル上のファッション

Image by: lulu

 もちろん、ブースにはリアルクローズだけではなくアニメ系のコスチュームや動物やロボットのような姿など、ありとあらゆるVRChat用アバターと装飾物が並ぶ。ここまでの多様性と熱気は、ほかのメタバースでは見られない。その理由は、VRChatがあえてユーザーの行動に干渉しない方針をとっていることも影響している。作品のアップロードもプログラムの組み込みも自由であるかわりに、運営側が主催するイベントはほとんどない。犯罪、性的目的、明らかなハラスメントなどを除けば、コミュニケーションはユーザーに任され、皆が勝手に遊んでいる。その“ゆるさ”は、どこか「ニコニコ動画」を思わせる。「初音ミク」を生み、米津玄師やAdo、ヨルシカなど無数のクリエイターを育んだニコニコ動画のようなプラットフォームに、VRChatもなれるだろうか。

リアルブランドも参入 仮想世界のファッションの行方

 今後、メタバースのファッションシーンはどうなるのか。考えられるのはリアルブランドの参入の本格化だ。これまでも「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ナイキ(NIKE)」などの著名ブランドがさまざまなメタバースを利用してショップを立ち上げ、アイテムを販売してきた。現在も継続的に、あるいはキャンペーン的に仮想空間への進出を続けている。

バレンシアガ 2025年フォールコレクションではVRChat用アバター「ユキ」がモデルに起用されたと言われる(BALENCIAGA 公式Instagramより)

 この記事で紹介してきたVRChatでも例外ではない。筆頭と言えるのは、毎シーズンVRChat用アイテムを出している「ビームス(BEAMS)」だ。「Tokyo Mood by BEAMS」という街区型のワールドを設置し、ファッション好きなユーザーに人気のフォトスポットになっている。このほかに、アダストリアも自社ECサイト「アンドエスティ(and ST)」で参入。大丸松坂屋百貨店もクオリティの高いアバターを販売している。博報堂DYホールディングスは「TOKYO AVATER GATE」という自前のアバター向けECを始動した。

女性のアバター

Image by: しおまる

 面白い取り組みとしては「カシオ(CASIO)」がアバター用の「Gショック(G-SHOCK)」を出したキャンペーンだ。現実のブランドも、リアルクローズのカテゴリーならプロダクトの特色を活かしやすい。

 大手だけではない。「ハトラ(HATRA)」はアバターブランドとコラボし、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」はVRChatを含む3種のメタバースで着用可能なオリジナルドレスを発表。「クロマ(chloma)」はリアル/VRChat兼用のアイテムを展開したことがある。アバターに着せてもよく調和することに驚かされる。

chromaを着たアバター

chlomaの服を着たアバター
chlomaの服を着たアバター
chlomaの服を着たアバター
chlomaの服を着たアバター

Image by: nay

 リアルブランドのメタバースデビューは、今後も続いていくだろう。ビジネスとして見れば、糸も生地も不要で、在庫リスクも物流コストもゼロのVR用の服は、利益率が極めて高い。アパレル企業が強力なブランディングをもって「3Dモデルのデータ販売」という飛び地に参入できるチャンスはそうそうないはずだ。

 しかし、本格的なビジネストレンドになるには課題がある。VRChatに限れば、絶対的なユーザー数が足りない。いくら熱狂的なカルチャーがあるとはいっても、1000万人もユニークユーザーがいないプラットフォームでは広告すら打ちにくい。

 そして何より、現在は個人クリエイターが強すぎる。かつて裏原宿のストリートブランドが時代を動かしたように、VRChatでは個人発のアバターファッションブランドが新作を待ち望むファンを抱えている。「エクステンションクロージング(EXTENSION CLOTHING)」「メゾンダルク(MAISON DARC.)」「メルティリリー(Melty lily)」「レーヨン(LAYON)」といったアバター専門ブランドは、VRChat内では「アンダーカバー(UNDERCOVER)」や「シュプリーム(Supreme)」と同じくらい有名だ。

ファッションアバター
ファッションアバター
ファッションアバター
ファッションアバター

「メゾンダルク(MAISON DARC.)」を着たアバター

Image by: TATAMI

 競合は個人だけとは限らない。VTuberがブランドを立ち上げたり、アニメなどのIPがアイテムを売り出す可能性もある。仮想空間のファッションシーンは立ち上がったばかりのカオティックな状況であり、だからこそ楽しい。

 そしてシーンの行方は、私たちが将来「どこで、どのように生きるか」のヒントをくれるはずだ。人と人のコミュニケーションが起きる場所に、必ずファッションは生まれるのだから。

GANTAN.writing

GANTAN.writing

インタビューライター。取材領域はビジネス・ファッション・テクノロジー。Discordコミュニティ「知財ハンター協会」理事。

最終更新日:

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