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三越伊勢丹HD、杉江俊彦社長による新体制で何が変わったのか<2018年ハイライト>

伊勢丹新宿店本館
伊勢丹新宿店本館
Image by: FASHIONSNAP.COM

 三越と伊勢丹の経営統合から10周年を迎えた三越伊勢丹ホールディングスは、杉江俊彦社長による指揮のもと、"新時代の百貨店"を目指し改革を進めている。新体制の始動から2年目を迎えた今年、杉江氏が取り組んだ施策とは。そして直近の業績は。2018年の同社の動きを追う。

2017年の改革

 今年の動向を振り返る前に、2017年の施策を2つのポイントでまとめた。

<ポイント>
①新体制のもと、経営主軸を成長戦略から構造改革にシフト
②成長事業を「不動産事業」「カード事業」「EC事業」に集中

杉江社長(左)Image by: FASHIONSNAP.COM

■ポイント解説

①経営主軸は成長戦略から構造改革へ

 前任の大西洋代表取締役社長が推進してきた成長戦略から構造改革に切り替え、主に不採算事業の整理・縮小やコストコントロールの強化に乗り出した。

②「不動産事業」「カード事業」「EC事業」に集中

 不動産事業ではグループ保有不動産を有効活用した取り組みに着手し、カード事業では従来のハウスカードから基幹事業に自立。また、EC事業では3ヶ年経営計画(2018年度〜2020年度)の一環としてデジタルを活用した成長戦略を発表した。

 

2018年の改革

 2018年は構造改革をさらに推し進めた1年となった。本部体制や業績をはじめ、セール時期の見直し、店舗のリニューアル、新サービスの展開などをトピック別でまとめた。

<本部体制・経営戦略の変化>

<ポイント> 
①2018年3月期連結決算の純損失は9億円の赤字も、改革や既存店事業の好調から手応えを見せる
②4月1日付でチーフオフィサー制を導入
③赤字が恒常化していた伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越の閉店を決定

■ポイント解説

①2018年3月期は8期ぶりの赤字

 5月9日に発表した2018年3月期の連結決算では純損失が9億円と8期ぶりの最終赤字となった。赤字の原因は同社が3ヶ年計画(2018年度~2020年度)で掲げているリフォーメーション(収益体質の強化)とトランスフォーメーション(事業構造の転換)によるもので、杉江社長は決算説明会で「赤字覚悟で、できるだけ膿出しをしたかった。当初の赤字予想よりも低かった」とコメント。一方で、改革が順調に進み既存店事業が好調だったこともあり手応えをみせた。2018年度は130億円の黒字化を目指し、2019年度は過去最高益を達成する計画。

②人事改革にも本格的に着手

 業務執行の効率化とガバナンス体制の見直しのため、ホールディングスの本部制を解消し、チーフオフィサー制を導入。また三越伊勢丹HD初の女性取締役として、花王の久保山路子氏が社外取締役に起用された。

③新たに3店舗の閉店を発表

 9月26日に開催した取締役会で、投資回収の見込みが立たず赤字が恒常化していた伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越の3店舗の閉店を決議。営業終了日は伊勢丹相模原店と伊勢丹府中店が2019年9月30日、新潟三越が2020年3月22日を予定している。

2018年3月期連結決算
【全体】
売上高:1兆2,680億円(前期比1.2%増)
営業利益:244億円(同2.0%増)
経常利益:273億円(同0.3%減)
【百貨店事業】
売上高:1兆1,444億円(前期比0.6%減)
営業利益:144億円(同30.6%増)

<セール時期の変化>

2018年1月4日の伊勢丹新宿本店本館の開店直前の様子Image by: FASHIONSNAP.COM

 冬のクリアランスセールを昨年より1週間前倒しし、1月4日にスタートさせた。伊勢丹新宿本店のセール初日にはオープン前に約8,000人が行列を作り、開店時刻を20分繰り上げ10時10分にオープンした。商況は、入店売上ともに順調に伸び、前年比2ケタ増となった。

夏のクリアランスセール行列の様子Image by: FASHIONSNAP.COM

 夏のクリアランスセールでは、近年はグループ全店で7月中旬から春物と夏物のセールを同時に行っていたが、今年は春物と初夏物、盛夏物と晩夏物のセール時期をずらして実施した。第1弾となった6月29日からの夏セールは例年の7月中旬から約2週間前倒しで開催。伊勢丹新宿店では10時の開店時点で開店待ちの列が4,000人まで伸びた。

<店舗リニューアル>

■伊勢丹新宿本店

パビリオンで取り扱うアイテム例Image by: FASHIONSNAP.COM

 伊勢丹新宿本店を2019年中にリモデルすることを発表。2段階で行われ、第1期では今年で設立15周年を迎えた伊勢丹新宿本店メンズ館を2018年秋〜2019年春にリニューアルオープン。第2期では本館を中心に、時計や宝飾、化粧品、ラグジュアリーブランドを強化していく計画で、2019年春夏~2019年度中のオープンを予定している。

■日本橋三越本店

フラワーアーティスト ダニエル・オストが手掛けたインスタレーションImage by: FASHIONSNAP.COM

 日本橋三越本店が10月24日に第1期リニューアルオープン。「接客」に重点を置きパーソナルショッピングを強化し、知識と経験豊富なスタッフを「コンシェルジュ」や「ガイド」として新たに配置した。空間デザインは「白く輝く森」をテーマに建築家の隈研吾氏が手掛け、グランドオープンを記念したインスタレーションはフラワーアーティストのダニエル・オスト氏が担当した。

<新商業施設の開業>

 百貨店事業以外にも、各地域のニーズに合わせたり、三越伊勢丹ホールディングスがテナントリーシングのノウハウを反映した新施設が開業。これらは同社が持っている不動産を活用する形で展開している。

■フード アンド タイム イセタン

 今年3月、横浜のジョイナス内に新商業施設「フード & タイム イセタン ヨコハマ(FOOD&TIME ISETAN YOKOHAMA)」を開業。クイーンズ伊勢丹をリニューアルしており、カフェ・レストランやイートイン、グローサリー、フレッシュフードなど29店舗が出店した。

■ミーツ国分寺

 ミーツ国分寺は今年4月、国分寺駅北口にある施設「シティータワー国分寺 ザ・ツイン」の商業部分である1階〜4階に開業「クイーンズ伊勢丹」や「イセタン ミラー メイク&コスメティクス」、HMVの書籍を中心とした小型書店の新業態「hmv BOOK store」など49店舗が出店している。

<新サービス開始>

■ハレの日に向けたパーティープランとフォトプラン

Image by: 三越伊勢丹

 ハレの日に向けたパーティープランとフォトプランの提供を6月から開始。両プランともに予約は実施時期の2〜6ヶ月前から受け付けている。

■食品のオンライン定期宅配サービス「イセタン ドア」

イセタン ドア公式サイトより

 6月下旬にスタートした「イセタン ドア(ISETAN DOOR)」は、伊勢丹のバイヤーやスタイリストが目利きした食品やミールキットなどを届けるオンライン定期宅配サービス。毎週木曜日にはサイト上に定期ボックスが公開され、ユーザーは必要な商品だけを選ぶこともできる。

■服のシェアリングサービス「カリテ」

「カリテ」期間限定店の様子 Image by: FASHIONSNAP.COM

 銀座三越では富士通との協業で開発したドレスのシェアリングサービス「カリテ(CARITE)」を8月1日から11月30日までの期間限定で展開。ブライダルへの出席や女子会など特別な日のためのアイテムをアプリを通じて有料レンタルできるサービスで、「デラ(DHELA)」や「フリッカ(FLICKA)」「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」「セルフポートレイト(self-portrait)」など13ブランド約200着のドレスを中心としたウィメンズウェアをラインナップした。新システムの有用性や事業制の検証を目的としたトライアルとして実施された。

■宅配ネットクリーニングサービス「リネット」とのコラボレーション

 三越伊勢丹が展開する婦人服プライベートブランド「クロージング イセタンミツコシ(Clothing ISETAN MITSUKOSHI)」の全商品を対象にした「アパレルケアサポート」を8月1日に提供開始した。月額390円のプレミアム会員になるとクリーニング料金が10%オフになるほか、服を買うだけで新品のような肌触りが蘇るという「プレミアム仕上げ」、早朝・夜間の集配サービス「プレミアム便」などのアフターケアが受けられる。

■働く女性に向けた新サービス「イセタントランクサービス」

Image by: 三越伊勢丹

 働く女性に向けた新サービス「イセタントランクサービス(ISETAN TRUNK SERVICE)」を伊勢丹新宿本店で10月から開始した。顧客が好みのブランドを選択すると、4点セットまたは8点セットの商品パックが自宅に届くというもので、配送された商品は最大7日間試着が可能。欲しい商品のみを購入し、不要な商品は送料無料で返品することができる。

このほかの動き

■不動産事業

 11月27日、取締役会において同社の完全子会社である三越伊勢丹が所有する千駄ヶ谷5丁目の賃貸用不動産「サウスゲート(SOUTHGATE)新宿」を一般事業法人に譲渡。経営資源の有効活用による資産の効率化と財務体質の強化を目的としており、2019年3月期第4四半期決算において、約294億円を固定資産売却益として特別利益に計上する。

■カード事業

 クレジットカードと連動している三越伊勢丹のカード事業「エムアイカード」にも動きがあった。昨年5月に開始したカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)が運営するTポイントの付与・利用サービスを3月末日に終了。同月からイオンとのポイントプログラムの相互連携サービスを開始した。

 また、三越Mカード、伊勢丹アイカード、MICARDの3つに分かれている百貨店カードの名称とデザインを統一し、5月下旬以降の新規発行分、有効期限更新分から新カード「エムアイカードプラス(MICARD+)」に順次刷新。プラチナグレードの百貨店カードや年会費実質無料の「エムアイカード」を新たに発行した。

 11月21日からは三越伊勢丹ホールディングスが「レクサス(LEXUS)」と提携し、子会社であるエムアイカードとレクサスのダブルネームによる新しいクレジットカード「レクサス東京 エムアイカード プラス プラチナ(LEXUS TOKYO MICARD⁺ PLATINUM)」の発行を開始。これにより東京都内レクサス正規販売店では車両購入時にエムアイカード(MICARD⁺、三越Mカード、MICARD、伊勢丹アイカード)の利用が可能となった。

次ページは>>三越伊勢丹ホールディングスの1年間の出来事をニュース記事でおさらい

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