マッシュルームのショーケース
Image by: mushroom
ボロボロ、ギリギリでジーンズとわかる......。画像だけ見るとこんなものが売れるのか?と疑問に思ってしまうアイテムが高額でSOLD OUTになっている古着屋がある。新潟県弥彦村に店舗を構えるヴィンテージショップ「マッシュルーム(mushroom)」だ。日本国内だけではなく、海外のコレクターたちからの注目度が高い異ジャンルなヴィンテージショップの正体は?オーナーの土田鏡氏に聞いた。
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観光地に出店したことで客層が拡大
現在は、新潟県弥彦村に店舗を構えるマッシュルーム。実は現在の場所は移転後だという。初めてお店を開いたのは2002年12月21日、新潟県古町。多くの人に気軽に足を運んでもらえるようにと観光地の弥彦に移転したという。
「2020年12月20日に現在の弥彦村へ移転リニューアルオープンしました。公園や緑が沢山あるような立地か観光地での出店を5年ほど前から検討していました。最終的には第一希望の観光地、弥彦に決めました。理由は沢山ありますが弊社のようなヴィンテージに特化した形態のショップは気軽に足を運んで頂くのが難しいため、観光地のような色々な人たちが集う場所の力を借りて気軽に来店頂ける環境を作りたかったのです。オープンから約4か月経過しましたがその点は思っていた通りになりました」
店舗は2フロア構成で、2階には古着のリペアやリメイクを行う「リストア(restore)」を併設。1階ではデニムをメインに、時代の変化やトレンドの影響を受けにくいワークやミリタリーアイテムなどを取り扱っている。
「移転リニューアル前は30代、40代のお客様を中心に50代、60代の客層がメインでしたが、移転後は10代、20代の若い世代も増えました。レディースアイテムの取り扱いが無いのですが来店される男女比率は半々」
ビンテージを軸にした取り扱いは変わらないが、移転後は80年代以降の古着の割合を増やしたという。またメンズアイテムのみを展開しているが、観光地という立地もあり来店客の半分は女性。顧客の年齢層も10〜20代が増えてきており、移転後はより幅広い世代に支持される店として繁盛している。
ボロボロだけど超お宝アイテム、誰が買っているのか?
マッシュルームで販売しているアイテムの中で一際目を引くのが、なんといっても「アーカイヴ」ジャンル。土田氏がアメリカのイベントやフリーマーケットで知り合ったというディーラーが炭鉱跡地で掘り起こしたアイテムを販売している。
土田氏はアーカイヴアイテムに趣向があったことに加え、「誰も手を出していない未開拓なジャンル」という点が決め手でアーカイヴジャンルの取り扱いを始めたという。
「この分野に自分自身が興味を持った事がきっかけでしたが、同時に誰もやっていない難しい分野である事で追いかけてくる同業者もいないだろうという点、然るべきルートが無い限り入手ができないという点、独占できるという事が魅力でした。取引先の数名のアメリカ人ディーラーが炭鉱跡地で見つけたアイテムを買い付けているのですが、その人達との信頼関係があった上で取引できている縁もあり今に至っています。日本や世界の人達に関心を持ってもらえるように取り組んでいきたいです」
一見すると、とても実用に耐えられないようなボロボロなアイテムも多いが購入者は着るのではなく「飾る」ことで楽しんでいるという。
「ディスプレーして画を飾るように楽しむ方が多いです。海外(アメリカ、ヨーロッパ、アジア圏)の方にも販売しています。何かと比較できて相場の見えるジャンルでは無いのでそこが一番難しい部分ですが誰も始めていなかったジャンルなので今後の展開も楽しみです」
日本ではこれまで根付いていなかったカテゴリーのため、土田氏が購入者とコミュニケーションを取りながらジャンルを開拓しているような状態だという。客層は30代から上の世代が多いとのことでアートに積極的な世界中のニューリッチなどが食指を動かしている可能性もある。
「購入して下さるお客さん達とは実際に店舗でお会いしてというパターン、WEB上の通販でのパターン両方です。アーカイヴというジャンル程、掘り下げて興味を持つ人は日本でも少ないので恐らく皆さん非現実的だった部分が実際に触れられるという事で新鮮に感じられているんだと思います。ただ、価格が安いわけではない為、高所得者の方がお客さんです」
今までで一番希少なアイテムの驚愕なプライス
これまで販売した中で特に希少なアイテムは?の答えは、1873年製の「リーバイス(Levi's®)」のウエストオーバーオールズと土田氏は答えてくれた。
「1873年製のLEVI’Sのウエストオーバーオールズです。これはジーンズという名称になる前の個体で、現存するLEVI'Sデニムの中でも最も古い個体として知られているので希少です。現実離れしているワールドクラスの逸品です」
ちなみにこの個体は現在も販売中で、価格はなんと1650万円。店舗のショーケースに入っているため、買えなくともマニア垂涎のアイテムを一目見ようと多くのコレクターが来店するという。ただ、現在のヴィンテージブームの加熱はあまり感じていないという。
「正直に言えば他のショップさんほどヴィンテージブームを感じていません(笑)。すみません。ただ弊社にも若い世代のお客さんが来店して下さるのでありがたいです。全国的に出店ラッシュが続いているようですから25年ぶり位のブームなのだと思いますが」
もともとマッシュルームでは、ヴィンテージアイテムのほかにオリジナルアイテムの展開を予定していたという。店名はオリジナルアイテムを展開する際のブランド名として決めていた「マッシュルーム」を命名したが、ショップの体制を整えるため古着屋として運営を決めたという。
「店名を『mushroom』にした理由は元々、当初は古着の取り扱いの他に『mushroom』というブランドネームでオリジナルのアイテムを展開するためでした。ですが、オープン直後に中途半端になるのが嫌ですぐに古着一本という方針に切り替えて今に至っています。弥彦という、憧れていた観光地で出店ができた事で色んな可能性も出てきたので、今後は客層を意識してこの地ならではのオリジナル商品の展開も視野に入れていこうと思っています」
今後は、古着のセレクトが安定してきたためオリジナルアイテムの展開を視野に入れているそうだが、アーカイヴアイテムについては継続して積極的に販売する予定だという。
「獲れたての新鮮な魚を売るようなスタンスで買い付けてきた古着を販売するショップですから、このアーカイヴというジャンルのアイテムに関してもその考えは変わらず、アメリカで見つかって日本に入れる事ができた際、間髪入れずにお勧めですのでどうぞ。というやり方を継続していくつもりです」
見るだけでも楽しいマッシュルームがどんなアイテムを掘り起こしてくるのか、コレクター達の期待は高い。
■mushroom vintage clothing store
住所:新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦1108-1
問い合わせ:0256-78-7966
公式サイト
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