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歴史的背景を持つ、ヴィンテージ古着。人気が高く希少なアイテムの価値は高まり続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第51回は「リーバイス(Levi’s®)」70505 ビッグE編。
2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
デニムジャケットの基礎を築いた傑作“フォース”
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アメカジをはじめとしたカジュアルファッションに欠かせないアイテム デニムジャケット、いわゆる「Gジャン」。そのなかでも、今回はリーバイスの70505、通称“フォース”を紹介します。

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まずは、“フォース”に至るまでのリーバイス デニムジャケットの歴史をざっくりと見ていきましょう。リーバイスが初めてデニムジーンズを発売したのが、1870年頃。そして、初めてデニムジャケットを作ったのは1905年頃だと言われています。当初は「PLEATED FRONT BLOUSE(前にプリーツを施したブラウス)」などという名称でしたが、1930年頃に506XXという品番が与えられます。506XX、通称“ファースト(1st)”は左胸にひとつだけ付けられたポケットと、フロントのプリーツ、そして背面ウエスト部のシンチバックが特徴の「ワークウェア」という印象が強いモデルでした。続く507XX、通称“セカンド(2nd)”が生まれたのは1953年頃で、“ファースト”から継承されたプリーツと左右両胸のポケット、サイドアジャスターが特徴で、袖付の方法が変更されて動きやすくなるなど、“ファースト”の改良版のようなモデル。
1961年頃に登場した557XXが、通称“サード(3rd)”です。“サード”の最大の特徴が、フロントに走るV字のステッチです。これは、“ファースト”と“セカンド”に用いられていたプリーツの機能(可動域・縮率対策)に加え、強度を保ちつつシルエットを整え、生産性を高めるという目的があったと言われていますが、縦のラインを強調する視覚的効果も抜群。これまではワークウェアだったデニムジャケットが、“サード”でカジュアルウェアに進化したと言われています。また、リーバイスのデニムジャケットで初めて防縮加工を施したデニム生地が用いられており、利便性も高められています。
そして、1967年頃に登場した70505が、通称“フォース(4th)”。“サード”と“フォース”が、トラッカージャケットとも呼ばれる今のデニムジャケットの基礎を築いたと言われています。リーバイスにおけるデニムジャケットの完成形と呼べるでしょう。











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“フォース”は、フロントのV字ステッチなど全体的には“サード”の特徴を踏襲していますが、着丈が長く、アームホールが細くなったことで都会的でスタイリッシュな雰囲気にブラッシュアップされています。
今回ピックアップしたのは、通称“ビッグE”。リーバイスのタブに織り込まれたリーバイスのスペルが大文字の「E」になっているモデルです。1960年代後半から70年代にかけて「E」は小文字の「e」、通称“スモールe”に変更されます。ビッグEとスモールeの違いは、タブのデザインだけではありません。生地に用いられている染料も違うので、ビッグEのほうがヴィンテージらしく味わい深い表情を持つ個体が多いんです。

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まだまだ買える、“ヴィンテージの入口”
当連載で口が酸っぱくなるほど言及してきましたが、ここ数年でヴィンテージの価格は総じて上昇を続けており、特にリーバイスのデニムジャケットは最近かなりの人気を集めるようになっています。しかし、この“フォース”ビッグEは「ガチ」のヴィンテージデニムジャケットながら、マニアでなくともまだ手に入れられる相場をキープしています。サイズや状態にもよりますが5万円くらいから入手が可能。以前紹介したコーデュロイジャケットをはじめ、コットンツイルやピケなど、素材のバリエーションが多いのも“フォース”の特徴で、デニム素材以外のアイテムならば手に取りやすい価格の個体も沢山あります。














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僕は、この“フォース”ビッグEが初心者にとって「ヴィンテージの入り口」になるアイテムだと考えています。技術力の向上で、復刻版やレプリカのヴィンテージの再現度には目を見張るようになりましたが、やはり古い年代に作られたヴィンテージでしか味わえない魅力が存在することも事実です。ぜひ、永遠の定番である“フォース”ビッグEをきっかけにヴィンテージの世界に足を踏み入れてみてください。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭
最終更新日:
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