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とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第26回は「ペンドルトン(PENDLETON)」ボードシャツ編。
2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
「ペンドルトン」のボードシャツがヴィンテージ市場で人気のワケ
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アメリカ最古のアパレルブランドとしても知られるペンドルトンを展開するペンドルトン・ウーレン・ミルズ社(PENDLETON WOOLEN MILLS)は、1863年にアメリカのオレゴン州で創業しました。創業者が元々毛織物職人だったことから、ウール素材のアイテムを得意としています。そんなペンドルトンを代表するアイテムが、「ボードシャツ」。1963年に「サーフィン・U.S.A.」を大ヒットさせたアメリカのロックバンド「ザ・ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)」がレコードのジャケットなどで頻繁に着用していたことで、人気に火が付きました。ザ・ビーチ・ボーイズは、アメリカ西海岸のサーフカルチャーを象徴する存在。それ以来、ボードシャツはアメカジに欠かせないアイテムとして愛され続けてきました。カジュアルに着やすいオープンカラーでボックスシルエットなので、今のファッションにも馴染みやすいのが特徴です。
ボードシャツは多くの古着屋さんで扱っている定番中の定番ですが、今回改めてピックアップしたのは、最近ヴィンテージ市場でペンドルトンのボードシャツの評価が急上昇しているからです。あくまでも僕の予想ですが、そのきっかけは当連載でも以前ご紹介したオンブレチェックシャツにあるのではないかと考えています。1950年代のオンブレチェックシャツはヴィンテージシャツのなかでもトップクラスの人気を誇るアイテムでしたが、近年さらに評価を高め、価格も高騰しています。ボードシャツにはオンブレチェックシャツに似た柄のアイテムが少なくないので、オンブレチェックシャツの人気に引っ張られて注目が集まっているのではないか、というのが僕の推論です。
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ペンドルトンはブランドの歴史が長いだけあって、ボードシャツだけでも無数のバリエーションがあります。僕がボードシャツを選ぶときに最も重視しているのが「色」です。いかにもアメカジ、なイメージの赤系もいいんですが、最近はブルーやブラックなどの寒色系のチェック柄が気になっています。
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ボードシャツはオンブレチェックシャツ同様、1950年代から60年代のものが人気です。状態やサイズにもよりますが、相場はだいたい3万円から。高いものだと10万円オーバーの個体もあります。ペンドルトンのシャツの年代は、タグで見分けられます。今回ピックアップしたアイテムならば、タグの四角の囲みの中に全ての文字が収まっているのが、1950年代のアイテムです。
四角の囲みの下に「PURE VIRGIN WOOL」と記されているのが1960年代のアイテム。1970年代に入ると当時のファッショントレンドの影響を受けて少し襟が大きくなってしまうので、僕は今のファッションに取り入れやすい50〜60年代のアイテムを中心に集めています。
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「お買い得」なのは1990年代以降のアイテム
古い年代のヴィンテージは風合いが独特で素敵ですが、実は1990〜2000年代の比較的年代が浅いアイテムにも良いものが多いんです。この年代のアイテムの相場はだいたい1万円台から、サイズや状態によってはアンダー1万円でも買えるにも関わらず、生地のクオリティが高くて非常にお買い得なんです。マニアなら是非とも1950〜60年代のヴィンテージを狙ってほしいところですが、初心者でも気軽に買えるアイテムがまだまだ残っているのがボードシャツの魅力。とはいえ、いつまでも今のようなお手頃価格で買えるかは分からないので、気になる方はお早めに。
また、ペンドルトンのウールシャツには、無地やタータンチェック柄、ネイティブアメリカン柄など、無数と言えるほどのバリエーションがあります。丈夫で長持ち、暖かくて自宅で洗濯もできるので、お気に入りのアイテムを見つけたら、デニムのようにじっくり着用して、自分だけの一着を育て上げてみてください。
今回ご紹介したシャツは、ペンドルトンのコレクターでもあるYouTuberのFJさんからお借りしました。VCM VINTAGE MARKETでも質の高いボードシャツを毎回多数出品していただいているので、イベントの際は是非チェックしてみて下さい。
編集:山田耕史 語り:十倍直昭
vol.1 Carhartt × STÜSSY編
vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編
vol.3 HERMÈS ヘラクレス編
vol.4 リーバイス ギャラクティックウォッシュデニムジャケット編
vol.5 ポロ ラルフ ローレン オープンカラーシャツ編
vol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
vol.7 シュプリーム ゴンズジャケット編
vol.8 ソニック・ユースTシャツ編
vol.9 HERMÈS アクロバット編
vol.10 ナイキ クライマフィット ジャケット 2ndタイプ編
vol.11 カルバン・クライン「オブセッション」Tシャツ編
vol.12 マルタン・マルジェラ ペンキデニムジャケット編
vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編
vol.14 エルエルビーン ボート・アンド・トート編
vol.15 HERMÈS クレッシェンド編
vol.16 オンブレチェックシャツ編
vol.17 HERMÈS アレア編
vol.18 スカジャン編
vol.19 カルチャーポスター編
vol.20 エルメス グレンデシャン編
vol.21 アディダス レザートラックスーツ編
vol.22 コム デ ギャルソン オム シャツ編
vol.23 ハーゲンダッツ編
vol.24 HÈRMES トルサード編
vol.25 フレンチフレーム編
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