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歴史的背景を持つ、ヴィンテージ古着。人気が高く希少なアイテムの価値は高まり続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第56回は「エルメス(HERMÈS)」のシェーヌダンクル TPM編。
2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
エルメスジュエリーの定番シェーヌダンクル、最小サイズが人気のワケ
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当連載ではこれまでたくさんのエルメスのヴィンテージジュエリーを紹介してきましたが、そのなかでもシェーヌダンクルは最も支持を集める、まさにトップ・オブ・トップと呼べる逸品です。今回はシェーヌダンクルのなかでもTPMと呼ばれるモデルをピックアップしました。エルメスのジュエリーは大きい順にTGM(Très Grand Modèle=とても大きいサイズ)、GM(Grand Modèle=大きいサイズ)、MM(Moyen Modèle=普通サイズ)、PM(Petit Modèle=小さいサイズ)、TPM(Très Petit Modèle=とても小さいサイズ)と呼ばれています。つまり、TPMはシェーヌダンクルの最小サイズということです。

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「錨の鎖」という意味を持つシェーヌダンクルが生まれたのは1938年。後にエルメス4代目社長となるロベール・デュマ(Robert Dumas)がフランス・ノルマンディーの海岸で見かけた、船を係留する鎖からインスピレーションを得て作られました。馬具商をルーツとするエルメスが、馬以外の要素に目を向けたのは、このときが初めて。楕円形の鎖に「Tバー」と呼ばれるT字型のトグルと留め金をあしらったシンプルなデザインのジュエリーは人気を呼び、ブレスレットだけでなく指輪やネックレス、ペンダントなど多数のバリエーションが生まれました。
現在市場で流通しているシェーヌダンクルは、1960年代以降に製造された個体がほとんどです。1960年代のシェーヌダンクルは、通称「初期コマ」と呼ばれる細長くて四角いフォルムで素材はシルバー800。1970年代になると素材にシルバー925が用いられるようになり、1990年代にはマルジェラ期と呼ばれる(マルタン・マルジェラがデザインした訳ではありません)丸っこいコマになるなど、年代によって細かな違いがあります。年代別のシェーヌダンクルの詳細については、下の記事で解説しているので、興味がある方は是非ご覧ください。
シェーヌダンクルはどの年代、どのサイズもそれぞれ人気ですが、最近はTPMの需要が特に高くなっています。その理由として真っ先に挙げられるのが、他のサイズのアイテムと違ってTバーがないことによる付けやすさ。デザインがシンプルなので老若男女を問わず誰でも似合いますし、他のアクセサリーや時計などともケンカをしないので、とても汎用性が高いんです。サイズ違いのシェーヌダンクルと重ね付けもできますし、デスクワークのときに邪魔になりにくいという実用面でのメリットもあります。

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上が90年代以降、下が60〜70年代のアイテム
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衰えを見せない人気、ゴールドは大変希少
こちらのゴールドの個体は現行品ですが、店頭に並ぶことはほとんどないので、シルバーと比較して格段に希少な存在です。

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シェーヌダンクルのネックレスは40cm前後のものが主流ですが、男性でも無理なく付けられる50cmの個体も存在します。おそらく、当時の顧客が長さをオーダーしたのだと推測されます。特にこの60〜70年代の50cmのネックレスは非常に珍しく、市場では非常に高値で取り引きされています。なかでもゴールドの個体はほとんど出会えることのない、とても希少なアイテムです。

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シェーヌダンクルの需要は未だ衰えが見えないので、その価格も右肩上がり。相場は年代や状態にもよりますので、ご興味がある方は僕が運営する予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」にお越しになっていただければ、実物を見ていただきながら僕が直接ご説明いたします。
編集:山田耕史 語り:十倍直昭
最終更新日:
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