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【令和のマストバイヴィンテージ】古着屋オーナーが選ぶ「VCMマストバイヴィンテージ」座談会 vol.3

座談会

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【令和のマストバイヴィンテージ】古着屋オーナーが選ぶ「VCMマストバイヴィンテージ」座談会 vol.3

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 歴史的な背景を持つ、ヴィンテージ古着。製造された年代が古いものや希少性が高いものが一般的に珍重されていますが、ヴィンテージの楽しみ方はそれだけではありません。この連載では、さまざまな視点でヴィンテージ古着の楽しみ方が味わえるアイテムを、国内最大規模のヴィンテージの祭典を主催するVCM代表 十倍直昭が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に紹介しています。

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 今回は特別編。「VCMマストバイヴィンテージ」と題し、11月2日と3日にパシフィコ横浜 展示ホールCで開催される「VCM VINTAGE MARKET vol.7」に出店する古着屋さんのオーナーをお呼びし、それぞれのお店の出品アイテムのなかから「マストバイヴィンテージ」を紹介してもらう座談会を、3回に渡ってお届けします。第1回第2回に続いて3回目となる今回のゲストは「着ままにTshirt」オーナーの松尾士さん、「チルウィーヴ(chillweeb)」オーナーのTillさん、「スクロバ(skrova)」オーナーの今泉陽介さんです。

VCM inc.代表取締役

十倍直昭

2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

理学療法士から古着屋に、「着ままにTshirt」オーナー松尾士

──まずは松尾さんから。古着を好きになったきっかけを教えてください。

松尾士(以下、松尾):小学校の時に兄が着ていた「ナイキ(NIKE)」のTシャツやスウェットがすごく格好良くて、それをお下がりでもらったのがファッションの原体験です。本格的に古着を買い始めたのは中学生になってから。僕の周りでは、大阪のアメリカ村に行って古着を買ってくるのが格好良いという共通認識があり、自分もアメリカ村にある古着屋さんで2〜3000円のトップスなどを買っていましたね。年代やブランドがどうこうではなく、古着を着ること自体が格好良いという感覚でした。その頃のアメリカ村は強引な客引きが結構あって、知らないお店に無理やり連れて行かれる、なんて経験もしました(笑)。高校のときにコンビニでアルバイトしていたんですが、たまたま買い物に行った「ウィゴー(WEGO)」で、レジのお姉さんに「うちで働いてみない?」と声を掛けていただいて。

松尾士

松尾士

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──逆ナンですね(笑)。

松尾:そうなんですかね(笑)。でも、そのスカウトがきっかけで実際にウィゴーでアルバイトを始めました。自社製品を着なければいけなかったので、商品を着つつ、自分が好きな古着やブランドのものを少し取り入れるという感じでしたが、より服が好きになりました。

──その後、「着ままにTshirt」を始めるまでのいきさつは?

松尾:大学卒業後は理学療法士として病院で働いていました。「着ままにTshirt」のインスタグラムアカウントを作ったのが、2021年のことです。コロナ禍で自由時間ができたので、趣味で集めていたTシャツを1枚ずつ文章と共に投稿するようになったんです。当初はTシャツを販売するつもりは全然なくて、「美術館のように楽しんでもらえれば」というような気持ちで情報発信をしていたんですが、徐々にオンラインやVCMのようなイベントでTシャツを売るようになりました。1年ほど前に理学療法士を辞めて、今は古着屋一本で活動しています。

十倍:松尾さんはVCMの初期から出店してくれているんですが、とにかく情報発信がうまいんですよ。ジャンル分けもかなり丁寧にしていて、ファッション初心者からヴィンテージを知り尽くした玄人まで、松尾さんの投稿を見ていると欲しくなってしまう。

十倍直昭

十倍直昭

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Till:松尾さんはトークもお上手ですよね。ユーザーファーストが徹底されていて、インスタライブなどの動画の使い方もトップクラスだと思います。

今泉陽介(以下、今泉):うちのお店で働いてほしいです(笑)。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

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十倍:今の時代、「この人から買いたい」「ここで買う理由」を求めている人が多いと思います。「着ままにTshirt」は、それができている一流のお店のひとつ。それに加え、お客さんに上品な人が多いイメージがあります。

松尾:カップルで来てくださるお客様はかなり多いです。ヴィンテージTシャツは安いものではないので、おふたりの間で価格やデザインに対するギャップがあることも少なくありませんが、それも含めて一つの購入体験として楽しんでいただけているのかなと思います。一見男性が好きそうなハードな雰囲気のプリントでも女性が着てみると意外と可愛く見えたり、「怖いからバンドTはやめて」というようなやり取りがあったり、接客をしているとTシャツ選びにも色々あって、僕も楽しいんです。

 VCMなどのイベントを出店するときは、どうすればお客さんに楽しんでもらえるか、事前にかなり計画を練りますね。Tシャツはジャンルが無数にあるので、イベントのときはひとつのジャンルに特化した方が、そのジャンルが好きな方に刺さるだろうな、と考えています。最近では、ゲームTシャツに絞ったポップアップを開催しました。また、そのイベントに向けてどういうプロモーションをすれば、よりワクワクしてもらえるか、ということも常に考えていますね。

今泉:本当にうちで働いてよ(笑)。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

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映画パロディのエイプ × スチャダラT

──では、松尾さんの「マストバイヴィンテージ」1点目をお願いします。

松尾:今回持って来た3枚とも全て、パロディTシャツです。業界の大御所である今泉さんとTillさんとはジャンルが被らないようにしました(笑)。1枚目は映画「シックス・センス(The Sixth Sense)」を思わせるヴィジュアルなんですが、これはスチャダラパーが2004年にリリースしたアルバム「THE 9th SENSE」に合わせて「ア ベイシング エイプ®︎(A BATHING APE®︎)」が製作したものです。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

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Till:この頃のエイプは、こういうパロディネタが多いですよね。

松尾:最近は日本のミュージシャンTシャツに注目していて。1990年代から2000年代初頭のものは、米国製ボディを使ってたり、意外とデザインが格好良かったりと、発見がたくさんあるんです。ヴィンテージと呼ぶにはまだ少し若いけれど、こういうのが今手に入れたい「マストバイ」なアイテムではないかと。価格もまだ1万円台後半くらいなので、手を出しやすいと思います。この頃の裏原系はLサイズまでが多くて、XLは本当に出てこない。このアイテムも、見つかるのはLサイズばかりですね。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

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「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

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十倍:王道のヴィンテージももちろんいいんですが、最近は個人的にマニアックなTシャツを探したい気分です。値段に関わらず、いわゆる「グッドレギュラー」なものを。

今泉:相場ができあがってないものを、自分の価値観で探すのが面白いんですよね。

今ではコンプラ違反で作れない?企業パロディTシャツ

──2枚目はなんとウィキペディアのTシャツですね。

松尾:これもパロディで、「My Wife Knows Everything(私の妻はすべてを知っている)」と書かれています。

Till:本当だ(笑)。オフィシャルではないんですね。

松尾:そうなんです。この手の企業ロゴパロディだと、グーグルをモチーフにしたものはよく見かけますが、ウィキペディアは少し珍しいかなと。これも2000年代のものです。黒ボディなので合わせやすいですし、プリントが比較的小さめなので、ジャケットやシャツのインナーとしても使いやすいと思います。

十倍:こういうちょっとジョークが効いたメッセージ系のTシャツも気になりますよね。今だとコンプライアンス的に作れなそうな過激なやつとか。

松尾:うちはご夫婦で来られるお客さんも多いので、奥さんが物知りな方にお勧めしたい一枚です(笑)。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

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探しても見つからないクレイアニメの悪ノリパロディT

松尾:3枚目は、「ボブとはたらくブーブーズ(原題:Bob the Builder)」というイギリスのクレイアニメのパロディTシャツです。日本では2000年頃に放送されていたので、僕と同じ30歳前後の方なら知っているかもしれません。これはいわゆるクスリ系のパロディですね。プリントの文言が「Bob and his Bongers」になっていて(「bonger」はマリファナの喫煙器具を指す隠語)、キャラクターの目も赤くなっています。元々の作品内での決め台詞が「Can we fix it?(直せるかい?)」で、それに対して仲間たちが「Yes, we can!」と答えるんですが、そこも「Can we smoke it?」と、もじられていますね。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会
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「VCMマストバイヴィンテージ」座談会
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Till:アムステルダムのお土産物屋とかでよく売っているような、悪ノリのTシャツですね。これ系ばかりを集めているコレクターもいますね。

松尾:可愛らしい子供向けのキャラクターを、こういう方向に持っていくセンスが面白いなと。僕自身、このアニメが好きだったので、見つけた時は嬉しかったですね。こういうTシャツは探そうと思って見つけられるものではないので。

──最後に、VCMに来場するお客さんへメッセージをお願いします。

松尾:半年に一度のイベントに向けて、今回もとびきり良いものを買い付けて準備しています。今回紹介したパロディTシャツ3枚は、2日目に出そうと思っています。1日目はもちろん、2日目に来ていただいても遜色ないくらい楽しめるように、新しい商品をたくさん追加します。パロディTシャツだけでも100枚以上ご用意する予定なので、ぜひ両日とも楽しんでください。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

松尾さんが取材時に着用していたTシャツは1990年代の「ギャップ(GAP)」

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アニメT専門店の先駆け、「チルウィーヴ」オーナーTill

──続いてTillさんお願いします。ファッションを好きになったきっかけを教えてください。

Till:父がファッション好きで、家にファッション誌「スマート(smart)」があったんです。小学生の頃、家にある漫画を全部読み終わって暇になったらスマートを読んでいたので、自然とファッションに興味を持つようになりました。父はエイプなどの裏原系ブランドが好きで、お下がりを着ることもありました。小学校高学年で「シュプリーム(Supreme)」のアーチロゴのスウェットを着て塾に行ったりしていました。今考えると生意気ですね(笑)。

Till

Till

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──古着の入口はなんだったのでしょうか。

Till:自分で服を買い始めたのは、小6か中1くらいです。ただ、お小遣いではブランドものは買えないので、おしゃれをするなら古着しか選択肢がなかった。地元の広島にある古着屋や「サンキューマート」などで買っていました。僕は昔からこじらせているタイプで、人と被りたくないという気持ちが強かったので、古着も年代や生産国などで選ばず、単純に奇抜な服を探していましたね。メタルも好きだったので、中学の頃はバンドTシャツもよく買っていました。2014年に上京してからは、個人で古着卸をしていました。「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」や「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」などのアーカイヴアイテムを仕入れて、海外のディーラーに売ったりしていました。

──アニメTシャツに興味を持ったのはいつ頃ですか?

Till:漫画やアニメ、ゲームは子供の頃から好きで、Tシャツもずっと集めていましたが、昔は今のようにアニメTシャツが簡単に見つけられませんでした。僕がコレクターとして本格的に活動を始めたのが2015年頃なんですが、ちょうどそのあたりからアニメTシャツの需要が高まっていったように感じます。コミュニティ自体はその少し前からありましたけど、アニメTシャツの専門店というのは、僕が知る限りではほとんどなかったと思います。

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──きっかけはやはり「アキラ」ですか?

Till:そうですね。シュプリームがコラボしたあたりから一気に注目度が高まりました。それまでは原宿や高円寺の一部の古着屋でしか見かけなかったものが、多くの人の目に触れるようになった。

今泉:当時はまだ「アキラ」でも3万円くらいでしたよね。

Till:それでも高い方でしたけどね。「うる星やつら」のラムちゃんTシャツも1万円台でした。2020年に、集めていたアニメTシャツを販売するポップアップを高円寺や下北沢でやってみたら想像以上に人が来てくれたので、2022年に「チルウィーヴ(chillweeb)」をオープンしました。

3人の集合ショット

Tillさんを含むマニア3人が、アニメTシャツカルチャーの歴史を熱弁

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FASHIONインタビュー・対談

十倍:Tillさんのお店はインバウンドのお客さんが多いイメージがあります。

Till:そうですね。お店を代田橋から原宿に移転してからは、お客さんの3割くらいが海外の方です。でも、僕は松尾さんとは大違いで情報発信などは特に何も考えずにやっています。そもそも、お店を始めた時もアニメTシャツがこんなに大衆に受けるとは思っていなかったんです。一部のアニメ好きが来てくれるお店になればいいな、くらいに考えていました。

十倍:ヴィンテージTシャツを専門的に扱う古着屋は、そのカルチャーに精通しているところが人気になっていると思います。例えばバンドのアルバムのTシャツだったら、そのアルバムの話だけじゃなく前後のツアーの話までできると付加価値になる。Tillさんはアニメに詳しいだけでなく、ファッションの知識もあるから、ただのアニメ好きとは違う説得力があるんですよね。

入門アイテムとしてお勧めの米国イベントT

──では、「マストバイヴィンテージ」の紹介をお願いします。

Till:アメリカで開かれている「オタコン」という、日本でいうコミケのようなイベントのTシャツです。ホワイトボディのものは2002年、ブラックが2003年のもので、どちらもロンTです。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会

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松尾:半袖は見たことありますが、ロンTは珍しいですね。

Till:このイベントでしか売られていないもので、しかもロンTは本当に数が少ない。ホワイトボディのほうの元ネタは「カードキャプターさくら」ですが、版権イラストを使っているわけではないので、値段もそこまで高くなく、アニメTシャツの入り口としてもお勧めです。一昔前の翻訳サイトで訳したような、ちょっと意味のわからない日本語がプリントされているのも味があっていいですよね。ボディも当時物のタフな「ヘインズ(Hanes)」製で、サイズもXL。これは2万円ちょっとでVCMに出せるかなと。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会
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今泉:最近はロンTの需要が高いですよね。袖にプリントが入っていると特に。

Till:ブラックボディのほうは、背面にイベントの歴代キーヴィジュアルがプリントされており、好きな方にはたまらないデザインですね。こちらはホワイトよりも少し高めの価格に設定しようかなと考えています。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会
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松尾:半袖と長袖の両方があるデザインだと、長袖の方が圧倒的に数が少ないので、価格が高くなる傾向があります。ただ、ロンT需要が高まっているからか、半袖のボディに後から袖を付け足したようなフェイク品も出てきているので注意が必要ですね。

王道ど真ん中のヴィンテージアキラT

Till:続いては、王道ど真ん中のスペシャルな一枚を。「アナーキック アジャストメント(ANARCHIC ADJUSTMENT)」の通称「鉄雄ピル」(「アキラ」の登場人物である鉄雄がピルを飲む有名なシーン)です。これは色々なカラーバリエーションがありますが、やはり黒が一番探している人が多いトップピースです。しかも、なかなか出てこないロンT。サイズはLですが、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のジョニオさんもこれぐらいのサイズ感で着ていました。

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十倍:これまでは大きさ=正義みたいな「XL神話」がありましたけど、最近はみんながみんなXLを求めるわけではなく、着丈を気にしてLサイズを選ぶ人も増えてきましたよね。

Till:そうなんです。これがもしXLだったら、値段が15万ぐらい上がるので、着られる人にとってはお買い得かと思います。本当に市場に出てこない一枚なので、今回の企画のために秘蔵コレクションから持ってきました。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会
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服としての完成度が高いエヴァのジャケット

Till:最後は「新世紀エヴァンゲリオン」のジャケットです。

十倍:コーデュロイなのがいいですね。

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Till:これは映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」が公開された2007年頃に、「コスパ(COSPA)」から出されたものです。フラッシャーを見ると、現在エヴァの制作を手掛けているスタジオカラーだけでなく、今はなくなってしまったガイナックスの表記もされています。カラーはブラックとパープルの2色展開。ブラックはこれまで何度か販売したことがあるのですが、今回は両方をデットストックで揃えることができました。

Till:服としてのクオリティがすごく高くて、刺繍も日本の職人さんが手掛けています。ポケットのステッチワークやサイドのアジャスターベルトなどを見ると、ファッションに精通した人がデザインに関わっていることがわかります。実は、このジャケットに価値を見出して売り出したのはうちの店が最初なんです。それまで業界では存在自体がほとんど知られていませんでした。エヴァって、世界的な知名度や後世への影響力を考えたら、「アキラ」や「攻殻機動隊」と同じくらいの価値がついてもいいと思うんですけど、なぜか少し安いのが個人的には解せないんですよね。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会
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Tillさんと松尾さんが着用

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──最後にVCMに来場する人へメッセージをお願いします。

Till:アニメTシャツはもちろんたくさん持っていきますが、今回は秋冬の開催なので、Tシャツ以外も用意しようと思っています。アニメに興味がある方、昔好きだったという方に、チャレンジしていただけたら嬉しいです。あと、「今季のアニメ、これが面白かった」みたいな話もしたいので、是非気軽にブースに遊びに来てください。

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Tillさんが着用していたのは1990年代のゲーム「スーチーパイアドベンチャー ドキドキナイトメア」のTシャツ

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スケートとヴァンズの仕掛人、「スクロバ」オーナー今泉陽介

──それでは最後に、今泉さんお願いします。

今泉:古着を買い始めたのは中学3年生くらいからです。群馬が地元なんですけど、松尾さんみたいに当時僕の周りでも東京の原宿で服を買うのがステータス、という風潮があって。僕も原宿まで行って「ゴローズ(goro's)」に並んだりしていました。シルバーアクセサリーは高いので、買えたのは革ブレスくらいでしたけどね。1990年代後半はヴィンテージブームだったので、原宿の「トマホークチョップ(TOMAHAWK CHOP)や「マービンズ(MARVIN'S)」などの古着屋に通っていました。それと同時に裏原も好きで、アンダーカバーやエイプ、「グッドイナフ(GOODENOUGH)」、「ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)」などの裏原系ブランドのアイテムを、原宿の遊歩道で買っては売ってを繰り返していましたね。当時は定価で買えばプラス5万円くらいで売れたので。あと、「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」が好きでじゃらじゃら着けて歩いていたら、深夜番組の「トゥナイト」に「総額何百万円のアクセサリーを着ける若者」みたいな感じで取材されたこともあります(笑)。

今泉陽介

今泉陽介

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──すごい時代ですね(笑)。

今泉:1997年に上京して建築の専門学校に入ったときに、完全に古着にハマりました。スケートブランドや「ヴァンズ(VANS)」にハマったのも同じ頃です。「コンバース(CONVERSE)」なら「ベルベルジン(BerBerJin)」、「アディダス(adidas)」なら「ロストヒルズ(LOSTHILLS)」みたいに、それぞれのスニーカーブランドに強い古着屋さんがありましたが、ヴァンズはまだそこまで注目されていませんでした。当時はお金に余裕があったので、「見つけたら全部買う」という感じでしたね。

──専門学校卒業後は?

今泉:正直に言うと、僕はちゃんと働いたことがなくて、ずっとギャンブルをやっていたんですよ(笑)。最初は負け続けていたんですけど、ある時パチプロの人に必勝法を教えてもらって。そこから30歳くらいまでに、3000万円くらい貯まっちゃったんですよ。

一同:3000万円!

今泉:それで遊んで、服を買って、を繰り返していたら、お金がなくなって。貯金が100万円を切った時に、パチンコ屋で知り合った人に誘われて、高円寺の古着屋で働くことになったんです。それが2006年頃ですね。でも結婚して子供が生まれても給料が上がらなくて、これではやっていけないなと思って独立しました。それで2016年に「スクロバ」を始めたんです。

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──「スクロバ(skrova)」は、「sk」がスケート、「ro」がロック、「va」がヴァンズと、取扱商品が店名になっているそうですね。当時はスケートアイテムを専門的に扱う古着屋がまだ少なかったと聞きます

今泉:「スプラウト(SPROUT)」という古着屋で働いていた時に、原宿で初めてスケート系の古着を本格的に扱い始めたんです。そうしたら、「ビームス(BEAMS)」の方々がたくさん買い物に来てくれました。

十倍:今泉さんがスケートものとヴァンズの価値を高めた「仕掛け人」であることは、この業界では誰も否定しないと思います。

今泉:スケートブランドの服は、スケーターが実際に着てボロボロになって捨てられちゃうから、良い状態で残っているものが少ないんですよね。ヴァンズとスケートは間違いなく僕が火付け役ですけど、バンドTシャツのことは詳しくないです。音楽も聴かないし(笑)。

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──VCMのようなイベントに出るようになったのは最近ですか?

今泉:基本的にイベントは嫌いで興味がなかったんですけど、VCMは面白いですね。他の店のオーナーと話せる良い機会だし、半年に1回の楽しみになっています。

十倍:そう言っていただけると嬉しいです。僕がリスペクトしているお店に出ていただいているので、自分自身が一番楽しんでいるんですけど(笑)。ヴィンテージ好きが繋がる場として、長く続くイベントでありたいと思っています。

格好良いものが少ないヴァンズTシャツ

──それでは、今泉さんの「マストバイヴィンテージ」をお願いします。

今泉:今回はヴァンズに絞って持ってきました。まずはTシャツです。特に、白ボディのものは非常に面白いと思っています。

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松尾:ヴァンズのTシャツって、買い付けに行ってもほとんど見ないですよね。

今泉:これまで、ヴァンズのTシャツはほとんどフォーカスされていませんでした。いなたい雰囲気のものばかりで、格好良いものが少ないんです。そんな中で、自分が格好良いと思ったものだけを集めています。このおじさんプリントのものは1980年代初期の販促用だと思うんですが、袖に切り取り線がプリントされています。元々半袖だからカットオフする必要はないと思うんですけどね(笑)。

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Till:ボディはベルギー製ですね。

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今泉:個人的には、ナイキのヴィンテージTシャツでよく見る、スニーカーの肩掛けデザインのものが気に入っています。アメリカのビールブランド「クアーズ(Coors)」のロゴがプリントされているうえに、紐のところが発泡プリントになっているんですよ。

「VCMマストバイヴィンテージ」座談会
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──こちらのピンクのロゴのTシャツも可愛いですね。

今泉:これは「スタンダードカリフォルニア(STANDARD CALIFORNIA)」がオフィシャルで復刻デザインを出していますね。501がわかりやすい例ですが、ヴィンテージってある程度数がないと価格が高くならない。ヴァンズのTシャツは流通量が少ないので、ここにあるものでも2〜3万円くらいですし、スウェットやパーカは格好良いものがさらに少ないんです。

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現行品とは雰囲気が全然違うヴィンテージヴァンズスニーカー

──次はスニーカーですね。

今泉:1980年代のオーセンティックとスリッポンです。色がエルメスオレンジとティファニーブルーみたいでお洒落だと思います。

一同:これは格好良い!

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今泉:ヴィンテージのヴァンズのスニーカーは、現行品と比べてシルエットがシャープで雰囲気が全然違う。トゥの部分を見れば一目瞭然です。人気があるのはやっぱり黒ソールで、サイズは10インチ以上になると一気に値段が上がります。この状態で大きいサイズは本当にないですね。

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十倍:今泉さんはヴァンズのスニーカーを何足くらいコレクションされているんですか?

今泉:見つけたら全部買っていたので、多い時は150〜200足くらいありました。売るのは、仲の良い常連さんがお店に来た時か、正月の初売りか、VCMの時だけですね。今手元にあるのは40〜50足くらいです。

十倍:VCMでは毎回スクロバさんのブースを見て「売れ残れば自分が買いたい」って思うんですけど、いつも全部売れちゃうんですよね(笑)。

──最後にVCMに来場するお客さんにメッセージをお願いします。

今泉:うちの柱であるスケート、ロックT、ヴァンズを中心に、とっておきのアイテムを持っていくつもりなので、是非見に来てください。私物も10点くらい用意します。

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今泉さんが当日着用していたのもヴァンズのヴィンテージスニーカー

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編集:山田耕史

■店舗情報
「着ままにTshirt」
公式オンラインストア

「チルウィーヴ(chillweeb)」
所在地:東東京都渋谷区神宮前3-26-5 URAHARA CENTRAL APARTMENT202
営業時間:平日14:00〜20:00 土日祝 13:00〜20:00
公式オンラインストア

「スクロバ(SKROVA)」
所在地:東京都杉並区高円寺南4-21-6 福家ビル101
営業時間:13:00〜20:0
公式オンラインストア

最終更新日:

vol.1 カーハート × ステューシー編
vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編
vol.3 エルメス ヘラクレス編
vol.4 リーバイス ギャラクティックウォッシュデニムジャケット編
vol.5 ポロ ラルフ ローレン オープンカラーシャツ編
vol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
vol.7 シュプリーム ゴンズジャケット編
vol.8 ソニック・ユースTシャツ編
vol.9 エルメス アクロバット編
vol.10 ナイキ クライマフィット ジャケット 2ndタイプ編
vol.11 カルバン・クライン「オブセッション」Tシャツ編
vol.12 マルタン・マルジェラ ペンキデニムジャケット編
vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編
vol.14 エル・エル・ビーン ボート・アンド・トート編
vol.15 エルメス クレッシェンド編
vol.16 オンブレチェックシャツ編
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vol.22 コム デ ギャルソン オム シャツ編
vol.23 ハーゲンダッツ編
vol.24 エルメス トルサード編
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vol.30 モヘアカーディガン編
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vol.32 リーバイス「後染め」ブラックデニム編
vol.33 エルメス オスモズ編
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vol.43 パタゴニア パフボールベスト編
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vol.47 1940〜60sシャンブレーシャツ編
vol.48 プリントネルシャツ編
vol.49 キャントバステム編
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vol.51 リーバイス 70505 ビッグE編
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vol.58 ラルフ ローレン総柄セットアップ編
vol.59 エンポリオ アルマーニ フォトT編
vol.60 ヴァイパールーム Tシャツ編
vol.61 エルメス ヴァンドーム編
vol.62 オールドステューシー 総柄Tシャツ編
vol.63 エルメス キーリング編
vol.64 レノマ マルチポケットジャケット編
vol.65 リーバイス507XX & 507編
vol.66 リーバイス ピケジャケット編
vol.67 リーバイス 501 66 前期編
vol.68 P-44 ダックハンターカモ編
vol.69 VCMマストバイヴィンテージ vol.1
vol.69 VCMマストバイヴィンテージ vol.2

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