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【大島育宙のドラマ・サム・ネイルズ】「いちばんすきな花」評 嘘だらけの世界に光を探す

ついでに、俺のネイルも見て!

【大島育宙のドラマ・サム・ネイルズ】「いちばんすきな花」評 嘘だらけの世界に光を探す

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芸人・映画ドラマ考察YouTube・コメンテーターなどで活躍する大島育宙が気になったドラマを紹介。今回はフジテレビ系列 木10ドラマ「いちばんすきな花」について。

Image by フジテレビ

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 ■いちばんすきな花
多部未華子(潮ゆくえ)、松下洸平(春木椿)、今田美桜(深雪夜々)、神尾楓珠(佐藤紅葉)のクアトロ主演。年齢、性別、育ってきた環境が異なる男女4人が、ふとした出来事を機に巡り会い、「友情」と「愛情」というテーマに自然と向き合っていく。“二人組になれなかったすべての人”に贈る物語り。
脚本:生方美久(『silent』、第33 回フジテレビヤングシナリオ大賞 『踊り場にて』)
音楽:得田真裕(『silent』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『アンナチュラル』『MIU404』など)
プロデュース:村瀬健(『silent』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など)
演出:髙野舞(『silent』『アライブ がん専門医のカルテ』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など)

 最後まで人に優しく、言葉に厳しいドラマだった。先日最終回が放送された2023年10月期フジテレビ系ドラマ「いちばんすきな花」の話だ。対人関係に悩む4人の若者が奇跡的な偶然から1つの家に集い、新しい友人関係を築き、それぞれの悩みを乗り越えていくヒューマンコメディドラマだった。

 近年稀に見る、口コミでの説明が難しいドラマでもあった。ドラマ本編を観ていない人に面白さを伝えるのがこれほど難しいドラマはなかなかない。前述の筆者のドラマ説明にも、都合により丸めた方便が多分に含まれている。

 まず、主人公が「4人」というのは半分本当で、半分嘘だ。ゆくえ(多部未華子)は長年の親友・赤田(仲野太賀)の結婚により、2人で会えなくなったことに納得がいかない。椿(松下洸平)は婚約者(臼田あさ美)の浮気により、2人が向き合えていなかったことを認識する。夜々(今田美桜)は容姿端麗な女子として、男らからの性的な視線の集中から逃げながら生きる。紅葉(神尾楓珠)は社交性の高さゆえ、かえって2人きりで人と向き合うことを恐れて友人がいない。

 「クアトロ主演」という聞き慣れない宣伝文句で並べられた4人の主役級俳優は、不調なテレビドラマ業界が苦肉の策として流行らせている「ダブル主演」「トリプル主演」とは訳が違った。主人公4人の共通点は「2人組という単位を過剰に個人に押し付ける社会に適応出来ず、あぶれた」という点だけだ。最終回まで、実質誰か1人が主役だったという偏りもなく、均等に主人公らしさが配分されていた。1人の主人公では描けない世界へのフラットな視線。3人グループだと2人組ができた時に誰かが1人になってしまう。4人という人数には確かに必然があった。

 しかし、その4人という布陣も二転三転する。後半、不在の中心・美鳥(田中麗奈)がミステリの黒幕のように浮上し、物語の構造を逆転させる。以降、美鳥の視点を通して主人公4人を客観的に見つめるシークエンスが繰り返される。真の主人公は遅れてきた美鳥だ、と言って過言ではない。最終回、椿(松下洸平)の家に集まる4人が総入れ替えになるトリッキーな展開も「主人公が4人」と説明し切らせないための自己言及だ。

 美鳥の登場によって、4人の邂逅(かいこう)を「偶然」とも言えなくなる。冒頭の説明は嘘だらけなのだ。家庭環境や社会性に困難を抱えていた美鳥はライフステージごとに別の顔で主人公の4人と出逢っていた。彼らは多数派が美鳥に貼るレッテルに流されず、美鳥と個人として向き合った数少ない人だった。椿の家に4人が集まったのも偶然のように描かれるが、半ば必然であったことが解き明かされる。

 白状してしまおう。主人公たちが「悩みを乗り越える」も嘘だ。「4人は4人」というシェルターを得たことで少しだけ外の社会に期待しなくなっただけだ。ゆくえは赤田と引き続き自由には会えないし、椿の職場での舐められ方は変わらない。夜々は職場で色目を使ってくる同僚に心を開かないし、紅葉が飲み会から帰る時にはほとんど誰にも気づかれない。それを「乗り越えた」と読みたがるのは多数派の思考だ。かすり傷にも生存性バイアスにも気づかず、自身の成功体験を振り翳して他者にも成長を押し付ける人たちの論理だ。成長しなくていい。一方向に流れなくていい。わかりやすくあろうとしなくていい。人と向き合う時に自分の理解に当てはめず、言葉を信じながらも疑う。

 このドラマが示したコミュニケーションの形は愚直なまでに誠実だ。テレビドラマのわかりやすさを徹底的に解体しようとする、無謀な企画だが、これまでの物語に救済の回路がなかった多くの人の光となった。

 「口コミでの説明が難しい」と、自分に言い聞かせるようについてきた嘘も捨てなければならない。口コミに、コミュニケーションに、制限時間は本当はない。現代を生きる我々が勝手にタイムリミットを自縄自縛で設定して勝手に焦っているだけだ。赤田は妻にゆくえとの関係を「ちゃんと」説明したが拒まれたのに、改めて説明の機会を得て、理解された。このドラマを語る時に言葉を選ぶ我々の態度が、社会への期待値を下げながら、圧力も下げていく。混迷と諦念の時代に物語が世界を変えるとしたら、こういう形なのだと思えた秋だった。

■Some NAILs:最近の...大島のネイル

『いちばんすきな花』がスタート時期に、自分が宣伝で長期間関わっていた映画『キリエのうた』が公開されたので、そのイメージカラーのネイルをしていました。

大島育宙

Yasuoki Oshima

映画・ドラマレビュー&考察YouTuber、お笑いコンビ XXCLUBのボケ担当。YouTube『大島育宙【エンタメ感想・考察】』を配信。ポッドキャスト番組は脚本家 高野水登との『無限まやかし』、芸人みなみかわとの『炎上喫煙所』、アナウンサー 西川あやの、哲学者 永井玲衣との『夜ふかしの読み明かし』に出演。ラジオ 文化放送『西川あやの おいでよ!クリエイティ部』は火曜日レギュラーとしてコーナー「大島育宙のオーシマが推します」を担当。

■フジテレビ系列木曜劇場『いちばんすきな花』
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、一ノ瀬颯、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀、田中麗奈、ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
キーヴィジュアル ©︎フジテレビ
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