ポール・スミス 2020年秋冬コレクションのフィナーレ
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ポール・スミスの深淵を50周年のスカイブルーに臨む 2020年秋冬コレクションの緻密とユーモア

(左から)森星、三浦春馬、ポール・スミス、2020年秋冬コレクションルック
(左から)森星、三浦春馬、ポール・スミス、2020年秋冬コレクションルック
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 ポール・スミス(Paul Smith)は今年、創立50周年。アニバーサリーイヤーの幕開けとして、パリで新作コレクションのショーが行われた。メンズとウィメンズの2020年秋冬コレクションとして発表されたのは、刷新されたワードローブ達。清々しい青空のようなカーペットの上に、半世紀にわたって築き上げてきたクリエイティビティと、ポールならではのユーモアが散りばめられている。

ポールからの招待状

 社会、経済ともに英国が大きな転換を迎えていた1970年。初の女性首相として後に"鉄の女"と歴史に名を刻むサッチャーが就任するおよそ9年前に、ポールは最初のショップをノッティンガムに構えている。現在の規模からは想像もできないほど小さなその店の名は「ポール・スミスの紳士服(Paul Smith Vêtements Pour l' Homme)」。50年が経った今もポールの慧眼によってメンズウェアを提供し続け、またウィメンズやキッズ、アクセサリーや家具までその手腕を拡大。伝統的なクラフツマンシップと最先端のデザインを独創的に組み合わせ、美しくモダンなアイテムを生み出している。

 2020年秋冬コレクションの招待状からも、その余韻を感じ取ることができる。封筒に入っていたのは、端をピンキングした特大のブランドネームと品質表示タグ。丁寧にミシンがかけられていて、端を残した糸は手仕事の名残りだろう。

 タグの裏側には「100% INDEPENDENT FOR 50 YEARS」の文字。50年間にわたり独立したブランドである、この一文の重みが軽快な素材とのギャップを生む。ポールがこれまで変わらずに大切にしてきたのは「好奇心」「クオリティー」「本物であること」。だが、より注目したいのはウィットが効いたユーモアだ。末尾に記されている「人生を真面目に考えすぎないでください」の注意書き。ポールらしい茶目っ気に富んだアドバイスに思わず頬が緩む。見慣れた洗濯表示にも、ポール・スミスのラッキーアニマルでもあるラビットをひっそりと忍ばせている。

 

楽観と幸福のスカイブルー

 2020年秋冬コレクションのショーは、パリ18区のモンマルトルの丘のふもとにある「エリゼ・モンマルトル劇場」で行われた。ここは、ポールとも親交の深かったデヴィッド・ボウイをはじめとするアーティストたちがライブを行ってきた歴史あるホール。音楽と深いつながりを持つ会場には、ポールが「ハッピーで楽観的な色」と表現する色鮮やかなスカイブルーのカーペットが敷かれ、大空を崖下に望むような高揚した気持ちにさせる。

 スカイブルーは今シーズンを象徴するキーカラーとしてコレクションでも随所に登場。太畝コーデュロイの3ピースなど、ワントーンルックが直球でモダンに映る。ティール、テラコッタ、クレイといったナチュラルな色彩とのコンビネーションも際立った。50年を経ても色褪せないポール・スミス。その理由は色彩感覚だけではなく、確固たるテーラーリングに裏打ちされた緻密性と諧謔にある。

 

70年代のテーラードを改革

 ポール・スミスといえばスーツを連想する人も多いだろう。英国にルーツがあるブランドの多くは、テーラーリングを強みに持つ。過去に立ち返り再解釈することで新たな風を吹き込む今シーズンは、テーラードに新時代のポール・スミスを覗き見ることができる。

 ブランドが誕生した70年代のシルエットをベースに、クラシカルなアウターやスーツを再編集。丈が長めで縦長のフォルム、ラペルにステッチを効かせながらフロントは比翼仕立てなど、あくまでもクリーン&ミニマルだがディテールでハッとさせるのがポールのスーツならでは。

 テーラードアイテムで重視しているのは、ケアフリーとコンフォートだという。隅々までポールの審美眼が行き渡った緻密性がアイテムに宿り、この2つの要素を満たす。チェックやハウンドトゥースといった伝統柄はソフトに織り上げることで、ジャケットをレイヤードするという特異なスタイリングも実現させた。

 テーラード、その部分だけを抜き出してもポール・スミスが一つの境地に到達していることがわかる。だが面白いのは、モデルにはあえて最小限の手入れだけを残したところだろう。ヘアメイクはあくまでもフレッシュでナチュラル。「健康的な見た目の男女、シンプルさ、それは作品とも近しいものです」とポールが語るように、男女の垣根を越えたスタイルとも言えるテーラードは、装わない美しさの価値観を探る新時代の模範にも思える。

 

日本の食品サンプルが起源、スパゲティ柄

 細部までのこだわりは時として自由度を狭めてしまう事があるが、ポールはそこに絶妙なユーモアを織り交ぜることで、窮屈さからの解放を与えてくる。その真骨頂がプリントだ。

 シグネチャーであるマルチストライプをはじめ、これまでにもユーモアが詰め込まれた珠玉のパターンが多く提案されてきたが、数々のアーカイブプリントのうち記憶に深く残るのはスパゲティ柄だろう。

 80年代に日本に訪れた際、食品サンプル専門店で見つけたスパゲティプレートにポールが一目惚れしたことに端を発するスパゲティ柄。後にそれがフォトグラフィックプリントに落とし込まれ、一瞬で多くのファンを虜にしたことで知られている。そんなスパゲティ柄が、2020年に復活。しかしノスタルジーだけに収まらないよう、拡大や編集を施すことでモダンにアップデートされている。ニットやマキシ丈のダウンジャケットは、ランウェイでも注目を浴びた。

 また、FAX機によって誤ってロゴが細長く引き伸ばされたかのようなファックスプリントや、シャツやジャケットの裏地に使われたドット柄は、いずれもポップアートのよう。柄まで作品として扱うことで、装いに変化とひねりを加える役割を果たしている。

 

ゲストの多彩なスーツスタイル

ポール・スミス 日本におけるメンズブランドアンバサダー 三浦春馬

 ショー会場には各国から多くのゲストが集い、特にカラフルなスーツスタイルが目を引いた。日本からのゲストとして招かれたのは、日本におけるメンズブランドアンバサダーを務める三浦春馬。そして3回目のショー出席となる森星。2人とも同じベルベット素材だがカラーとデザインが異なるスーツスタイルをそれぞれ着こなし、フロントロウでショーを見届けた。

三浦春馬、US版VOGUE編集長アナ・ウィンター、US版GQ編集長ウィル・ウェルチ、森星

「カラーのコントラストがとても綺麗でした。ブルーとグレーのコンビとか、ハイセンスではあるけれど挑戦してみたくなります。スパゲティ柄も惹かれました。特に最後、ポールさんが出てきた時に奥様にビッグハグを届けた瞬間はハートウォーミングでしたね。50周年、本当におめでとうございます」(三浦春馬)

「ポールさんのエナジーと、包み込む愛のようなあたたかさに触れました。私が目標にしている中性的なイメージに近づけるようなスタイルがたくさんあって、特に気になったのはメンズウェア。機能とデザインの両立とか、ファッションが果たす役割を改めて感じることができました」(森星)

フィナーレで弾むように登場し拍手を浴びたポール・スミス

 フィナーレは祝福の拍手が鳴り止まずピースフルなムード。50周年というアニバーサリーイヤーにふさわしい、そして今後も力強くスカイブルーの大空に成長線を描くような、期待を感じさせるショーだった。

 

■Paul Smith:公式サイト

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