(左から)竹内美彩、溝口翼
(左から)竹内美彩、溝口翼
Image by: FASHIONSNAP.COM

Fashion インタビュー・対談 Provided by: Tokyo新人デザイナーファッション大賞事務局

【対談】新鋭ブランド「フォトコピュー」が支持される理由は?下北沢KALMA溝口翼と語るクリエイションの根幹

(左から)竹内美彩、溝口翼
(左から)竹内美彩、溝口翼
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 2018年にデビューして以来、業界内外からの注目を集めるブランド「フォトコピュー(PHOTOCOPIEU)」。「イザベルマラン(ISABEL MARANT)」や「ヴェロニク ルロワ(veronique leroy)」で経験を積んだデザイナー竹内美彩が追求するシルエットへのこだわりとは?ファーストシーズンからフォトコピューを取り扱う下北沢のセレクトショップ「カルマ」のバイヤー溝口翼と語られる、表面的な"可愛さ"にとどまらない魅力とデビューから変わらないクリエイションの根幹。

竹内美彩
アパレル企業のデザイナーを経験後、神戸ファッションコンテストの受賞がきっかけで2015年にLa Chambre Syndicale de la Couture Parisienne(パリ・クチュール組合、通称サンディカ)校に編入。卒業後は「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」や「ヴェロニク ルロワ(veronique leroy)」で学び、2018年に帰国し自身のブランド「フォトコピュー(PHOTOCOPIEU)」立ち上げ。2019年度 Tokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門入賞。

溝口翼
2011年からヴィンテージショップ「HAg-Le」に入店し、メンズとウィメンズのバイヤーを担当。2017年5月、下北沢にヴィンテージからデザイナーズアイテムまでを取り扱うセレクトショップ「KALMA(カルマ)」をオープン。同店の店舗ディレクションとバイイングを手掛けている。

感覚と職人気質で作り上げるシンプルな魅力

F:お二人が初めて出会ったのは?

溝口:共通の知人がいて、その人の伝手でデビューコレクションを見せてもらうことになり展示会に伺ったのが最初ですね。

竹内:カルマは「1型でも2型でもいいから置いてもらいたい」と思っていたお店でした。溝口さんに声を掛けさせて頂いた時には、バイヤー向けの展示会は終わってしまっていたので、急遽プレス向けの展示会に来てもらってプレゼンしたんです。実は取り扱いが最初に決まった店舗の一つで、ファーストシーズンはシグネチャーであるドレスラインやニットなど、8ピースをセレクトしてくれました。

溝口:フォトコピューはヴィンテージのアイテムが多いうちのお店の中で、しっかり溶け込んでくれると思ったんです。それでいて、どんなデザイナーズヴィンテージを使っても、絶対に代用が出来ない表現を、フォトコピューは普通にやっている。実際、今までヴィンテージだけで大抵の表現は出来ているので、そこに当てはめられないフォトコピューの凄さは感じます。僕はいつもカルマの空間にフィットしていながら、ヴィンテージでは再現出来ないような絶対的な強みを持っているブランドさんを求めているので、そこにはまったというか。

F:フォトコピューの魅力は何だと思いますか?

溝口:やっぱり着たときのシルエットですね。今って、削ぎ落としたデザインで生地は良いとか、縫製にこだわってますっていうブランドは割と多いじゃないですか。でもそれだけの要素だと、店の中で埋もれてしまう。フォトコピューの服もぱっと見はシンプルなデザインですが、服の細部には服好きの心をくすぐるような細かいディテールに溢れている、無機質というよりは、有機質みたいなイメージ。そして着ると驚くくらい綺麗なシルエットが出るんです。

F:フォトコピューの服を手にとった顧客の反応は?

溝口:客層は20代から40代までと幅広いんですが、例えばメインのドレスラインを試着した方は、肩やウエストのラインなど、全てが立体的に見えることに驚いたり。ラックに並んでいると、すごく目立つというわけじゃないんですけど、うちの店では試着されたお客さんの9割は購入しますね。デビューして間もないですが、フォトコピュー目当てで来てくださる方もいるくらいで。広告を出したりはしていませんよね?

竹内:出してないですね。でもカルマのインスタで本当に素敵に投稿してくださっていて、それの影響もあると思います。写真はもちろん、コメントも丁寧で…すごくありがたいです。

F:溝口さんはどういった基準でアイテムをセレクトしていますか?

溝口:僕は男ですが、「これを今着たい」という女性的な視点も大切にしています。男性的な視点だけだと、どうしても凝ったオタクっぽいアイテムが多くなってしまうんです。男性と女性の両方の視点で見て、琴線に触れるものを選ぶようにしています。

竹内:女性的な視点はどうやって培われたんですか?

溝口:どうやってでしょうね(笑)。中間に立つよう心がけているだけで培われているかどうかはわかりませんが。

竹内:私も結構中立的かもしれないです。もちろん自分で着てみた体感として、ここが嫌とか、もっとこうなったほうがいいな、と思うことはあるんですけど。自分で着ながら、それを客観的に見ることができる自分もいるというか。

溝口:客観的に見るのは、意識的に?それとも無意識に?

竹内:無意識ですね。

溝口:竹内さんはそういうことが無意識にできる天才肌な面もありつつ、職人的なところも両方ある気がする。

竹内:いやいや私なんて全然ですよ(笑)。でも確かに作っている時は、職人気質な部分が出ているかもしれません。実際手を動かして部分縫いや本生地でトワルを何度も作ったりするので、その中で生まれる形があると感じています。例えばこのオーバーオールは、初期段階ではオーソドックスな形から入りつつ、自分の心地良い形を探りながら部分縫いを何度も作って、かなりしっかりパターンを引き終わる頃にはトップス部分を全て変更してしまいました。手を動かしながら形を探る作業で生まれたデザインです。

サロペット(画像:KALMA 公式Instagramより)

F:ウィメンズブランドですが、男性でも購入される方はいるんでしょうか?

竹内:ニットなど着られるアイテムは、男性の方も買って頂いています。今シーズンはコートを買ってくださった方もいましたね。体制が整いタイミングがあれば、男性の服にもチャレンジしたいなと考えています。

PHOTOCOPIEU 2019-20年秋冬デビューコレクション

可愛いだけじゃない"アウトロー"な服作り

F:まだ3シーズン目にも関わらず注目を集めている理由は何だと思いますか?

溝口:やはり着たときの美しさっていうのが一番大きい。着たときのフォルムの新鮮さを、お客さんもしっかり感じているんじゃないですかね。そういうブランドが今少ないので。

竹内:今の日本の市場に、ちょうど無いものを作れているのかなとは思います。今は、きちんとしていて、清潔で可愛いみたいなものとは逆の"アウトロー"なところにいきたくて。そこを全面に出すわけじゃないですけど、少し斜に構えていたいです。現代の女性が求めているのに、需要が足りていないところを見つけて形にしていくことに興味があるので、自分もその現代女性の中の一人として今感じているムードを表現していければと思っています。それが、ナチュラルで柔らかい雰囲気でありながら挑発的だったり、装飾的なものに冷めていたりというイメージに表れていて、結果として自分の感じている時代のムードを同世代の女性と共有できた感じがしています。

F:デビューからここまで、なにか変えたところはありますか?

竹内:特に何も変えていないですね。立ち上げからずっと、シルエットで勝負していきたいという思いを強く持ち続けています。ただ一方で素材の選択肢は増えました。それこそ「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」に入賞して、その支援で生地の開発に力を入れられる体制を整えることができましたし。知らない機屋さんに連れてってもらうこともあって、すごく勉強になったし良い経験でしたね。そうした生地へのこだわりが変化として現れていったら嬉しいです。でも生地や素材の質にこだわりすぎると、デザインの必要性が希薄になってしまうので、一つの服になって着たときに初めて100点満点になるように意識するところはあって。だからどんなに可愛くて使いたい生地でも、私のデザインに合わないなって思って諦めることも多いです。

溝口:どういうところが合わないなって思うの?

竹内:主張の強い生地の場合、シルエットにもこだわるとやりすぎに見えてしまうんですよね。今はフォルムで見せていきたいところがあって、今はあえて可愛すぎない生地を使うようにしています。

時代を超えて残る服とは?

F:ヴィンテージから刺激を受けることはありますか?

竹内:あります。例えばヴィンテージのアラン柄セーターが好きなんですけど、そのままだとどうしても素材感と丈感が今っぽくないと思い、今の時代感を反映させて作ったりもしましたね。

F:お二人が考える長く残る服ってどんなものでしょうか?

竹内:うーん、溝口さんは長く着てるものとかあります?

溝口:「バーバリー(Burberry)」のコートは10年くらいは着てるかな。

竹内:昔買ったあるヨーロッパメゾンのドレスがあるのですが、パリで着ていたときに通りすがりの人から「その服素敵ね」って言われたり、その服を着ていると褒められることが多かったりするんです。その服を着るたびに自分に自信が持てる経験が重なって、その繰り返しで自分にとって必要不可欠な存在になっていて。最終的には自分のイメージそのものと捉えるようになっていきました。そういう風に人それぞれの感性にフィットして、自分の自信に繋がるものであれば時代を超えて長く残るのかなって。

溝口:フォトコピューもそうなれるブランドの1つだと思いますよ。表面的な可愛さだけを備えたアイテムだったら、いっぱいあるんですけど、フォトコピューは竹内さんの職人気質なこだわりがきちんと表現されているから。それこそ着る人が自信を持つことに繋がるようなアイテムだと思います。

PHOTOCOPIEU 2020年春夏コレクション

フォトコピューが目指すもの

F:今の日本のファッションについて何か思うことはありますか?

竹内:自分たちが学生だったころと比べると、最近新しく出てきたブランドの作る服は結構変化してきているなとは感じます。新しい世代は、"周りも心地良くなること"を意識しているというか。今まではより自分に投資することが贅沢だったけど、今は他の困っている人を助けるということが、ひとつのお金の使い方になっているというか...。自分だけじゃなくて、皆で心地良く生きていこう、というムードが強くなってきていると感じます。その中で生まれる倫理的なものづくりとか、誰かのために作るとか、そういったことをやろうとしているブランドを見つけると、今っぽくていいなと思います。

溝口:それは確かに感じられますね。あとは量産型が多いかなって印象を受けます。僕はアメリカに行くことが多くて、向こうの人達は周りの目線を気にしないからそこは日本と違うなって。

竹内:海外と比べるなら、日本の人は自分の身体をよく見せることは苦手なのかなって感じるところはあるかも。お金をかけて色々な服を着る日本はファッションとして先進的かもしれないけど、服に頼りすぎないで自分の精神や身体をよく見せるのは海外の方が上手いなって。だからこそ日本のブランドとして、体の線の美しさをどうやって見せていくかということに意味を見出だせるというか、やりがいを感じることができているんだと思います。

F:今後のフォトコピューについて。

溝口:芯は今のまま曲げずにいてほしい。そこが強みだと思うので。

竹内:私は変わることより変わらないことのほうが難しいと思っていて。もちろん今後は売り上げなど商業的なことを考えなきゃいけない機会も増えると思いますが、その都度クリエイションとバランスをとりながらも、自分の大事にしていることは変えないでいたいですね。あと今はまだ会社の基盤が整っていないのでそこがしっかりしてからですが、タイミングを見て海外に進出したいなとは考えています。

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