ローラ
Image by: FASHIONSNAP
モデルのローラが手掛けるライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」が、5周年を迎えた。“地球にも人にも優しい”ブランドとしてスタートした同ブランドは、日本とアメリカを拠点に、サステナブルなデニム工場として知られるベトナムのサイテックス(SAITEX)や、日本のデニムブランド「クロ(KURO)」とタッグを組み、環境に配慮したコレクションを展開している。
サステナビリティをスローガンに掲げながらも、大量生産を余儀なくされる業界の現状にぶち当たり、最初の数年は「試行錯誤の連続だった」と振り返るローラが今、見据えるものとは? さまざまな葛藤と心情の変化を経て、ブランドディレクターとして成長を続ける彼女が考える、“本当にサステナブル”なファッションの話。
チャレンジの連続だった5年間
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──2025年春夏コレクションでブランドは6年目を迎えますが、改めて、これまでを振り返ってみていかがですか?
少しずつチャレンジを重ねることで、成長できた5年間だったと思う。「エコな服を作りたい」という思いを起点に、最初は古着の回収とリサイクルをしているブリング(BRING)のリサイクルポリエステルを使ったワークアウトウェアを作るところから始まって、ベトナムのデニム工場のサイテックス(SAITEX)に出会ってからは、デニムに注力したベーシックアイテムを作れるようになって。2025年春夏コレクションからは、和の要素を取り入れたものづくりを進めていたり。できることが増えてきて、ようやくここまできたという感覚かな。

──今日着ているのも、新作の着物をベースにしたジャケットですよね。
着物って、デザインの美しさはもちろん、着ると不思議と気持ちが高まって、丁寧に生きようという気持ちにさせられるんだ。服に袖を通した瞬間、自信がつくような感覚ってすごく素敵だな、そんな風に着る人の自信につながるような服が作れたらいいな、と思って、着物の要素をデザインに取り入れるようになったの。
──着物の魅力を知ったきっかけは?
最近、茶道を始めて、着物を着る機会が増えたのがきっかけ。袖を通してはじめて、その魅力を知れたんだよね。私にとってファッションは、ずっと続けている旅のようなもの。心の変化とともに、自分自身のファッションも、作りたいものも変わっていくのを感じるから、私の作る服も、誰かの「好き」を見つける旅の手助けができたらいいなぁって。
──STUDIO R330は、シーズン毎のカプセルコレクションに加えて、立ち上げの頃から継続展開してるエッセンシャルラインがありますよね。
エッセンシャルラインは、コーディネートの基本となるようなベーシックなアイテムがエコだったら良いな、という思いをもとに作ったラインなの。好きなアイテムと組み合わせて着てほしいから、形が綺麗であることをすごく大事にしていて、色々なシルエットのジーンズや、オーガニックコットンを使ったアイテムを展開しているの。
ベーシックなアイテムだからこそ、エコな選択肢として手に取ってもらえるように続けているんだけど、デザインは少しずつ変えていきたいという思いもあって。今後は和の要素はもちろん、もう少し女性らしいセクシーな要素も入れていきたいというアイデアが出ているから、色々、旅しているところ。
サステナブルなものづくりへの葛藤
──そもそも、ローラさんがサステナブルなものづくりに目を向けるようになったきっかけは?
きっかけはね、色々あるの。海に浮かぶ大量のプラスチックを見たり、川が汚染されている様子を見たり。世界各地で環境問題が発生していることを知った時に、自分に責任があるってすごく思って。私自身、モデルとしてファッション業界でお仕事をしてきたからこそ、発言だけじゃなくて、実際にものづくりもやってみようと思ったんだ。

──発信するだけではなく、実際にブランドを立ち上げることでアクションを起こした。
環境問題について語ると同時に、ビジネスモデルを作ることができれば、他のブランドのお手本になれるかもしれないし、これからアパレルブランドを始めようと思ってる人たちの参考になったらいいなっていう気持ちもあって、同じような取り組みが広がってほしいなって思う。
──影響力のあるローラさんだからこそ、ブランドを通してメッセージを発信できるのが強みですね。
自分が持つ影響力について考えなくてはいけない立場だからこそ、大きな責任を背負っている自覚はあるし、地球にも自分にもやさしい生き方をずっと追求し続けたいなって。そんな私を見た誰かが「いいな」「自分もやってみよう」と思ってくれたら、それが私の喜びにもなる。なんだかんだ、私自身もまだ自分探しをしている途中でもあるんだけどね。このブランドを通して、改めて、自分の芯を強く作っていきたいと思っているの。
──消費構造と密接に関係しているファッション業界では、生産すること自体がエコとは相反するという矛盾した側面もあります。
それが、ブランドを始めたばかりの時に最初にぶつかった壁だった。一度ブランドを始めたら、服を作り続けるでしょ。それに抵抗があって、しばらく生産を止めてしまって、周りに迷惑をかけちゃったこともあった。工場に発注するときも、ミニマムの発注数が決まっているから、それに合わせて生産するわけだけど、もちろん100%売り切れないこともあって。余剰在庫はリメイクしたり、試行錯誤の連続だった。でも、最近は少ない数でも引き受けてもらえるようになったの。これまでの5年間があったから、工場との信頼関係が築けたんだなって。
──サステナブルな選択には、消費者側の意識も求められますが、STUDIO R330では、環境意識が低い層にもアプローチしたいという考えはありますか?
もちろん!環境について深く考えていなくても、「なんか可愛い」と手に取ってくれたら、それがたまたま環境に良かったということもあるし、自分が使っていたものが実はエコだったと知ると、なんだか優しい気持ちになったりするでしょ。世界に対して良いことをしたような気分になったり。だから、たまたまSTUDIO R330のお洋服を手に取ってもらうことで、みんなが一歩サステナブルな世界に近づけるような役割になれたらなって。

“100%”の未来に向けて
──改めて、ブランドを手掛ける上で大切にしている信念を教えてください。
エコからは絶対に離れないということ。使いたい生地のイメージがあっても、環境に優しいという条件にははまらなかったり、たくさんオーダーをしないといけなかったり。日々、色々な戦いがあるけど、反省を繰り返して、勉強しながら、エコな服作りを続けていきたい。今はまだ、100%納得したものづくりができていない部分もあるから。
──100%に近づくための、現状の課題は?
1人でブランドをやっているわけじゃないから、チームメンバーとの関係性とプランニングには課題を感じていて。たとえば、本当は自分の中で納得がいっていないことがあっても、周りの状況を考えてOKを出してしまって、後から後悔しちゃったり。これまでは直感で決めていることもあったけど、それで周りを振り回してしまったこともあった。チームで同じ方向に向かうためには、まず自分自身がしっかり芯を持っていないといけないということを、この5年で学んだと思う。
──最後に、6年目を迎えたブランドの今後の展望は?
エコという軸はそのままに、これからは日本の伝統にインスピレーションを受けたデザインにフォーカスしていきたい。デザイナーとコラボレーションもしたいな。さまざまな要素を組み合わせることで、またさらに成長していけると思うし、そのためにはチャレンジし続けることが大事だなって。

最終更新日:
■ローラ
1990年、東京都出身。雑誌「Popteen」「ViVi」のモデルとして活動後、2015年に活動拠点をアメリカ・ロサンゼルスに移す。2020年、「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」を立ち上げ。
公式インスタグラム/STUDIO R330 公式サイト
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