サミュエル・ロス
Image by: FASHIONSNAP.COM

Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】元ヴァージルの右腕、「A-COLD-WALL*」サミュエル・ロスが考えるストリートブームの先

サミュエル・ロス
Image by: FASHIONSNAP.COM

 ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)のクリエイティブ・アシスタントを務めたことでも知られ、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の黎明期を支えたイギリス人デザイナー サミュエル・ロス(Samuel Ross)。ストリートを代表するデザイナーがラグジュアリーブランドのクリエイティブを務めるなど変わりゆくシーンのなかで、自身のブランド「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL*)」はマーケットの動きを反映し進化させているという。サミュエル・ロスが考えるストリートウェアのその先は?オフ-ホワイトで学んだことや、ア コールド ウォールのデザインフィロソフィーから紐解いていく。

— ADの後に記事が続きます —

ーまずブランド名「A-COLD-WALL*」の由来を教えてください。

 もともと僕のクリエイションは、様々な階級やカルチャーを研究して、分析や比較した結果を自分なりに解釈してビジュアルに落とし込んでいます。研究の中で、労働者階級と資本家階級、2人の異なる階級の子どもに着目しました。労働者階級の子どもにとって"冷たい壁(COLD WALL)"は、硬くてコンクリートのようなものをイメージしますが、資本家階級の子どもにとっては大理石の壁だったり高級感があるものを思い浮かべる。共通する感覚はあれど、階級によって認識が異なることの興味深さから命名しました。

ー「A-COLD-WALL*」と、冠詞「A」が付いています。その意図は?

 物ではなく、テーマとして捉えて欲しいからです。

ー15歳のころからグラフィックなどデザインを学んでいたそうですね。

 育った環境は労働者階級なので、裕福ではなかったんです。父はセントラル・セント・マーチンズでファインアートを専攻し首席で卒業して、今はステンドグラスを補修する仕事をしています。母は心理学や文理学、カルチャーについて教えていて。2人にあまり共通点はないんですがアーティストのようなバックグラウンドがあって、ホームスクールで2人に色々と教えてもらいました。それで自然と、グラフィックデザインに興味を持つようになったんです。

ーグラフィックから、なぜファッションの道に?

 グラフィックだけではなく、彫刻やインテリアなども制作していました。中でも1番しっくりときたのがファッションだったんですよね。例えば、グラフィックは発注する側の人がいて要望に合わせないといけないというか、世界が狭くなってしまうように感じて。常に変化とスピード感のあるファッションの世界で、もっと自由に表現したいと思ったんです。

ー過去の「オークリー」とのコラボレーションでは、オークリーのロゴの上にパッチをデザインするなど、自由な表現をしていますね。暗黙のルールのようなものを破っているようにも見えます。

 確かに、ルールを破ることは意識していますね。特にコラボレーションの場合、相手ブランドの色がある中で自分をどう表現するか、ということを常に考えています。例えばロゴの上にパッチを貼れば、誰がデザインしたものかわかりやすくなる。そうすることで、双方で違う客層にアプローチができると考えています。それが、コラボだからこその魅力なので。

ーインラインでは、ダメージ加工やラスティな質感のテキスタイルをよく目にします。

 ダメージやラスティな表現は、プロセスを語ることができるから。ダメージやサビとか、その過程や背景まで連想させるようなアイテムを作りたい、という思いで使っている手法ですね。

ーヴァージルのもとを離れてどのくらい経ちますか?

 2015年の1月初旬に「ア コールド ウォール」をスタートさせましたが、完全に「オフ-ホワイト」を離れたのはそれから少し後で、同年の8月くらい。なのであと少しで4年ですね。

ー4年間ほど共に働いていたとのことですが、何を学びましたか?

 本当に色々とあるんですが、何かに対して反抗することや、仕事に没頭して時間を割くことがいかに大事かを学びましたね。あとは体力的にも精神的にも、自分の限界を知ることができたり。

ークリエイションの面では?

 オフ-ホワイトがスタートしてから大きくなるまでを経験したので、どちらかというとビジネス面で影響を受けました。ただのデザイナーであってはいけない、どうやって成功するか、どういう形で物を売るか。クリエイションやデザイナーという枠を超えて、計画や戦略といったことも含めて考えるようになりました。

ー日本の市場はどのように見ていますか?

 日本はストリートカルチャーの歴史が長く、パイオニア的な存在。そういった背景があるからか、日本は他国よりも年齢層の高い顧客が多いと思います。

ーストリートシーンの変化は感じますか?

 日本だけでなくグローバルの傾向として、ストリートウェアを楽しむ人々が、自身のキャリアや年齢と共に、より洗練されたスタイルを好むようになってきています。「ア コールド ウォール」はマーケットの動きをプロダクトデザインに反映させているので、僕のコレクションを見てもらえれば、その変化がわかるはず。例えば、最近だとグラフィックやプリントアイテムを減らし、僕が今着ているようなナイロンスーツとかフォーマルに着られるアイテムも展開しています。顧客とともに進化しているんです。

ー次のコレクションに向けて、どのようなことを考えていますか?

 フットウェアを広げようと思っています。もともと1型しかなかったんですが、8型くらい新しいモデルを出していこうかと。あと、最近はファッションショーをやらないブランドも増えてきていて、これからどうなっていくのか。僕自身もどういう形でショーと関わっていくのかは考えていますね。

ーファッション以外に熱中していることはありますか?

 とにかく本を読んでいます。それと、年を重ねるにつれて自分の体に対する意識が変わってきて、どうやって向き合っていくか、どう関係性を保っていくかを考えているんです。走ったり、ハイキングをしたり、体のメンテナンスを心がけています。

ー現在28歳ですが、30歳までに成し遂げたいことは?

 "透明な服"を作りたいですね。

ー透明な服とは?

 詳細はまだ言えないんですが、他のショップにはないようなリテール体験です。"パフォーマティブ・リテール"というアイデアで、単に実店舗で商品を購入するのではなく、体の動きと密接に関わるような唯一無二の購入体験をイメージしています。このアイデアには、最近のアウトドアの趣味も影響していると思う。フィジカルな体験が、購入や買い物のプロセスにも組み込まれたらというアイデアは、僕にとっても興味深いトピックなんです。リテールを革新させたい。そのために必要な人材を集めるなど会社をパワーアップさせて、チャレンジしていきたいと思っています。

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング