後発セブン-イレブンがアパレル本格参入 88店の実験で分かった「売れる商品、売れない商品」

「セブン-イレブン」での販売をスタートした、アンドエスティHDとの協働商品
Image by: セブン-イレブン・ジャパン

「セブン-イレブン」での販売をスタートした、アンドエスティHDとの協働商品
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「セブン-イレブン」での販売をスタートした、アンドエスティHDとの協働商品
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コンビニのセブン-イレブン・ジャパンが、今秋アンドエスティHDと組んで、「ニコアンド(niko and ...)」や「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」のアパレルや服飾雑貨の全国販売をスタートしたことは、大きなニュースになった。実は本格展開に先駆け、2025年6月から埼玉県内の88店で、1年間にわたるテスト販売を行っていたのだという。テスト期間に試した商品は100SKU以上。試着もできず、商品をパッケージから出して自由に手に取ることも難しいコンビニで、何をどのように売れば客に響くのか。セブン-イレブンは国内コンビニ最大手ながら、アパレル領域では後発。1年の検証から見えた法則をもとに、独自の勝ち筋を探っている。
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「現在の中心客層は50代、若い女性を呼び込みたい」
コンビニでアパレルや生活雑貨を強化する動きは、競合が先行している。ファミリーマートでは、2021年に立ち上げたオリジナルブランドの「コンビニエンスウェア」が、2025年度に売上高200億円を突破。落合宏理をクリエイティブディレクターに据え、単なる緊急需要向け衣料ではないブランドへ育てている。ローソンも2022年から、「無印良品」を全国の店舗に本格導入。両社とも、コンビニの強みである食品以外で来店動機を作ってきた。他方、国内店舗数・チェーン全店売り上げともに業界首位のセブン-イレブンは、足元では客数の前年割れが目立つ。2026年3〜8月の既存店客数は、6ヶ月間のうち5ヶ月が前年同月を下回った。その分、客単価の上昇で売り上げを維持する構図が続いている。新たな客層をどう店に呼び込むか、その一手として打ち出したのが、アンドエスティHDとの取り組みだ。
「現在の当社のメイン客層は50代以上で、これまでセブン-イレブンと一緒に育ってきたお客さまが中心」と説明するのは、セブン-イレブン・ジャパン 商品本部グロサリー商品開発部で、アパレル分野を担当する湯浅愛理マーチャンダイザー(MD)。日本の人口動態を考えれば50代が中心なことに違和感はないが、「今後も継続的に成長していくためには、若いお客さま、特に女性にしっかりセブン-イレブンを好きになっていただく必要がある」と続ける。「SNSでの発信を含め、若年層のライフスタイルとつながっていくためにアパレルや服飾雑貨を強化する。この取り組みを、新しいお客さまに来ていただくきっかけにしたい」。アパレルだけでなく、化粧品や玩具なども含め、“わくわく感”のある売り場を作っていく考えだ。




大きく写真をプリントしたパッケージで、中身の商品を分かりやすく
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セブン-イレブンとアンドエスティHDの出合いは、当時セブン-イレブンと同じグループにあったイトーヨーカ堂がアンドエスティHDと組んで立ち上げたアパレル売り場「ファウンドグッド」がきっかけだった。ファウンドグッドは当初目指したファミリー層の獲得が進まず、立ち上げから約2年で終了となったが、実はファウンドグッドの商品を「SIPストア」と呼ぶイトーヨーカ堂とセブン-イレブンを融合した実験店舗で販売する取り組みも当時行っていたのだという。今回はファウンドグッドのように新規のブランド・売り場に客を呼び込むかではなく、ニコアンドやローリーズファームという既に多くのファンのいるブランドと組み、その客をセブン-イレブンに呼び込むことで勝ち筋を描く。
50前後のブランドがアンドエスティHDにある中で、セブン-イレブンが取り組み先としてニコアンドとローリーズファームを選んだのは、「アンドエスティHDの中で最も知名度があり、若年女性のファンも多かったから」と湯浅MD。今後、例えばよりベーシックなものを作るべきとなったら、ベーシックに強い「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」と組むといった可能性もある。新規でコンビニアパレルブランドを育てるのではなく、アンドエスティHDのブランド群を、セブン-イレブンの売り場やニーズに合わせて編集していける点が、今回の取り組みの利点だという。
全国に約2万2000店を持つセブン-イレブンにとっては、大規模生産の仕組みやネットワークがあるアパレルメーカーでないと、そもそも取り組むことができないという点もアンドエスティHDとの提携に至った理由。「2万2000店への供給を前提としたビジネスになる。その数量を作っていただけるメーカーはかなり限られる」と、商品本部グロサリー商品開発部の笹川徹チーフマーチャンダイザーは話す。
文字だけのパッケージでは「コンビニでは売れない」
セブン-イレブンとアンドエスティHDの協働が始まったのは2024年。同年11月に10店弱で小規模なテストを開始し、2025年6月から埼玉県内の88店へと拡大した。セブン-イレブンではアパレルに限らず、どんな商品でも「まずミニマムで売れるかどうか、エリア特性があるかどうか、規模を上げても売れるかどうか」を確認するという。通常、10〜50店での小規模なテスト販売を行い、次は100店前後、さらに1000店前後と店舗数を拡大しテストを重ねていく。今回は88店での検証で手応えを得て、全国展開が決まった。
テスト販売期間中に最初にぶつかった壁が、商品の見せ方だった。当初は文字を中心としたシンプルな商品パッケージを採用していたが、コンビニでは、アパレル専門店のように商品を自由に広げたり、試着したりすることができないため、「中身が分かりづらい」といった声が現場から上がった。そこで、着用写真を大きく見せる現在のパッケージに変更。「実際に商品を手に取れず、パッケージが開けられないという課題がある中で、着用しているイメージが分かるようにした」(湯浅MD)。商品そのものを見せる代わりに、パッケージで着用時の姿を伝える手法は、売り場としての見栄え向上にもつながった。

セブン-イレブン・ジャパン 商品本部グロサリー商品開発部で、アパレル分野を担当する湯浅愛理マーチャンダイザー(左)と、笹川徹チーフマーチャンダイザー
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選ばれる商品にも、コンビニならではの傾向が見えたという。例えばヘアゴムでは、大きな飾りが付いた1個入りの商品よりも、同程度の価格で複数個入った商品の方が売れた。「コンビニのお客さまからすると、複数個入っている方がコストパフォーマンスがいいと映ったようだ」と湯浅MDは振り返る。一方、試す中で思ったほど売り上げが伸びず、全国展開を見送った商品もあった。その一つが小型のポーチ。サイズ選びや試着を必要としないため、コンビニと好相性に思えるが、「実際に開けてみたり、触ってみたりすることが購入には必要だった」と分析する。
検証に使ったのはPOSデータだけではない。担当者が実際に店舗へ足を運び、店長や従業員からの客の反応の聞き取りも行った。地域密着型の店舗では、従業員が常連客を把握していることも多い。「どんなお客さまが商品を手に取ったのか」「なぜ購入しなかったのか」といった現場の声を本部に集めた。その中で、狙った客層を取り込めているという手応えを深めていったという。「テスト販売の商品を購入したお客さまは、約7割を女性が占めた。『大学生とみられる2人組がふらりと来店し、一緒にソックスを買っていった』といった、狙い通りの報告が店舗から上がってきた」。
商品バリエーションの拡大や単価向上が売り上げを押し上げ、テスト販売店舗では衣料品カテゴリーの単月売り上げが前年同月の2倍に達したケースもあったという。この結果は、全国展開へ踏み切る大きな材料になった。
緊急需要ではなくオシャレ需要を創り出す
セブン-イレブンは9月25日に、アパレル・服飾雑貨の17アイテムを全国の店舗で発売。うち、3アイテムがシーズン商品と位置付けるマフラー、ミトン、スウェットで、残り14アイテムがレギュラー商品。シーズン商品は春夏、秋冬の年2回投入し、レギュラー商品は反応を見て年1回程度改廃していく。加えて、10月23日にはサンリオの「ハローキティ」と組んだコラボレーション商品6アイテムも発売する。
注目はその価格。ハローキティコラボのスエットフーディは5390円。セブン-イレブン全店平均の客単価は750円前後であり、そのおおよそ7倍だ。強気に見えるが、「今のお客さまはECやSNSで比較検討して購入する。それを考えれば、決して高すぎる金額ではない」と湯浅MD。キャラクターIPとのコラボは、今後も年3〜4回投入していく。




ハローキティコラボのスウェットフーディ(5390円)
レギュラー商品の1つとして販売しているのが、ローリーズファームのソックス(880円)。これまでセブン-イレブンで販売してきたソックスは、緊急需要に対応する黒のベーシックが中心で価格は500円弱だった。今回はスタイリングのアクセントになる商品を目指し、ラメ入りのデザインを採用。ここで生きたのが、アンドエスティHDがアパレル事業で蓄積してきた販売データやトレンド情報だという。ラメソックスならどんな丈が売れているのか、パーカーなら黒とグレーのどちらが支持されているのか。限られたコンビニの棚に何を置くかを決める中で、アンドエスティHDの知見を生かした。
セブン-イレブンとしては、全国の2万2000店が発注できる体制を整えて、アパレルや服飾雑貨の販売をスタートした。ただし、商品を店頭で販売するかどうかを最終的に決めるのは、各店舗のフランチャイズオーナーだ。本部は、実際に今秋何店舗が発注したかというデータは公表していない。「店舗によって売り場面積も異なる。レギュラー商品、シーズン商品、コラボ商品とカセットを分けることで、店舗側が売り場の規模に合わせて導入しやすいようにしている。今秋の販売状況を見て、導入する店舗は増えていくと見ている」と笹川チーフMD。
本部では店舗の入口付近での5段ゴンドラ什器での陳列を推奨しているが、実際の売り場作りやレイアウトも各店舗に委ねられている。シーズン商品の期末の値引き判断についても、各店が決める。シーズン商品はアンドエスティHDのデータをもとに、売り切れるよう在庫を比較的薄く設定。その一方で、Tシャツやソックスなどのレギュラー商品は一定量を確保し、売り場を継続的に維持する考えだという。
「鮮度が命のコンビニで、服を売る最適解を割り出した」
アンドエスティHDの子会社アンドエスティで、今回のセブン-イレブンとの取り組みをはじめとしたプラットフォーム事業を管轄する小林千晃取締役最高ブランド責任者に、アンドエスティ側から見たセブン-イレブンとの取り組みの狙いを聞いた。

小林千晃/アンドエスティ取締役 最高ブランド責任者
──セブン-イレブンとの提携の狙いは何か?
小林千晃アンドエスティ取締役(以下、小林):コンビニという生活圏内での販売により、当社のブランドに対する新たな認知を獲得し、顧客接点を広げたい。同時に、アンドエスティのBtoB・プロデュース事業を、セブン-イレブンという強固なパートナーとともに大きくスケールアップさせていきたい。
──2025年6月から1年間かけて行った、88店でのテスト販売中に修正したポイントは?
小林:店舗ごとに客層や売り場スペースの条件が大きく異なることに気づき、どの店舗でも最適な棚作りができるよう、定番品の「レギュラーアイテム」、季節ごとの「シーズンアイテム」、アイキャッチとなる「コラボアイテム」という単位で柔軟に陳列を組み合わせられるカセットメニュー型MDを導入した。来店頻度が高いコンビニでは、売り場の鮮度が命。定番品をベースにしつつ、年2回シーズン商品を投入し、年間複数回のコラボを行っていくサイクルが、飽きがこず最適と割り出した。
──2026年2月に終了したイトーヨーカ堂との組り組み「ファウンドグッド」から、今回の取り組みに生かした学びは何か?
小林:ファウンドグッドを通して、自社店舗以外の流通チャネルにおいて求められるオペレーションや品質管理、コスト構造といった、実践的なBtoB事業の基盤や知見を構築することができた。ヨーカ堂のようなGMS(総合小売業)とコンビニでは、滞在時間、来店頻度、購買のきっかけが全く異なるが、GMSでの経験があったからこそ、コンビニの狭小スペースと短い滞在時間にジャストフィットするコンセプトを導き出せた。
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