Fashionインタビュー・対談

新鋭ブランド「Sheba」デザイナー柴崎博和が考える、リアリティのある服と日常から繋がるクリエイティブの形

柴崎博和 Image by FASHIONSNAP.COM
柴崎博和
Image by: FASHIONSNAP.COM

 「Ordinary Pleasure =日常的な喜び、心地よさ」をコンセプトに掲げ、2019-20年秋冬にデビューしたメンズブランド「シーバ(Sheba)」。デザイナーは「ディガウェル(DIGAWEL)」出身の柴崎博和で、自分自身や日々の生活とリンクした服作りを行っている。「日々の生活を落とし込んで、自分自身が納得できるものを作る」と語る、柴崎の考える"日常"と"服"の関係性とは?学生時代の思い出や、「ディガウェル」での経験、そして30歳で立ち上げた自身のブランドについて――柴崎の過去と現在から探る、次世代デザイナーが打ち出すこれからのファッションの形。

DCブームと過ごした中高生時代

― いつから服に興味を?

柴崎:中学生の頃からです。当時は「スマート(smart)」や「ストリートジャック(street JACK)」などの雑誌をよく読んでいました。付録の「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」や「ステューシー(STÜSSY)」などのステッカーを集めたりしていましたね。当時は無意識でしたが今思うと藤原ヒロシさんの存在は大きかったです。あと「ファッションと言えば原宿」というイメージもあって、地元は埼玉の秩父なんですけど友だちとよく行っていました。中学生時代初めて原宿行ったときのことは、今でも鮮明に覚えています。

― 当時の原宿はDCブランドが流行っていた頃ですね。

柴崎:DCブーム後半で、まだものすごい熱量があった時代ですね。ショップも繁忙期だと並んで、整理券をもらって店内に入れたら「何かしら買って出ないと!」みたいな感じで。初めて原宿に行ったときは、特に狙っていたわけではなかったんですが、「ア ベイシング エイプ®」のカモ柄の半袖シャツを友だちと遊びにきた記念みたいな感覚で購入しました。中学生の1万円、2万円って高い買い物だから、そのシャツは大切に着ていましたね。

― ファッションを勉強しようと思ったきっかけは?

柴崎:高校生になると、中学生の頃とはテイストが変わって「チョキチョキ(CHOKiCHOKi)」や「メンズノンノ(MEN'S NON-NO)」「チューン(TUNE)」などを読むようになって。そこから今度は「カンナビス(CANNABIS)」周りのデザイナーズブランドを見るようになりました。今思えばデザインも派手で(笑)。ストリートブランドとはまた違った服の面白さを感じていましたね。それで改めて「服好きだなぁ」と思ったんです。高校は普通科だったので周りは大学に行くっていう流れだったんですけど、親に進路の相談をしたら、やりたいことやったらいいんじゃないと言ってもらえて。当時興味があったファッションを勉強してみたいと思い、服飾の学校を探しました。数校見学し新宿とかに比べて街の雰囲気も落ち着いていたので目黒のドレスメーカー学院に入学しました。

「Sheba」2019-20年秋冬コレクション Image by: Sheba

「これは僕には作れない」評価されたことで再認識したデザインの面白さ

― ドレスメーカー学院では、どんな学生時代を過ごしましたか?

柴崎:デザイナー志望だったので、3年制ファッションデザイン科(以下FD科)に入学したんですが、FD科だけ別棟に分かれていたので、他の科の子とはあまり絡まず自然と同じ科の男子と一緒にいましたね。僕を含めて4人しか同期の男子がいなくて、同い年は1人、残りの2人は4〜5歳上で。彼らにファッションや音楽など色々教えてもらいました。当時は年上の人の考え方に魅力を感じていたので、一緒にいてとても楽しかったですね。FD科を卒業後4年目に進学したデザインアート科で出会った友人たちが、コンテストに作品を出す事に意欲的で。彼らの影響を受けて、僕もコンテストに出したりしてました。

― それまではコンテストを意識したことがなかった?

柴崎:授業の一環で応募したことはありましたけど、自分で進んでやるようになったのはその辺りからでした。それまで漠然としていた「デザイナーになりたい」という目標に対して、以前より意識的になったのもこの時期です。

― 実際に受賞できた?

柴崎:日本毛皮協会が主催する「JFAファーデザインコンテスト」で賞を頂きました。審査員にドン小西さんがいて、「これは僕には作れない」と言われたことを覚えています。他にも「ソマルタ(SOMARTA)」の廣川さん(「ソマルタ」デザイナー 廣川玉枝)にも批評を頂きました。その後も在学中に「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永さん(森永邦彦)やファッションジャーナリストの麥田さん(麥田俊一)にお会いする機会を経て、徐々にデザイナー職に対するイメージが湧いてきた様に思います。

「ディガウェル」で学んだデザイナーの仕事と、"コミュニケーション"の大切さ

― 卒業後は「ディガウェル」に就職。

柴崎:実際の現場を見たいなと思ったんです。「ディガウェル」に入る前は、学校の先生に勧められたアパレルのOEMの会社に入ったんですが、業務内容は生産管理がメインで、その当時は自分の中でデザイナーの仕事とは結びつかず…。それでファッションブランドという業態にこだわった方がいいと考え、辞めて「ディガウェル」に入りました。

― 「ディガウェル」を選んだ理由は?

柴崎:当時祐天寺に住んでいて、この場所自体にファッション性があるなと感じていたので、できればこのエリア付近で仕事を探したいと考えていました。そしたらちょうどそのタイミングで祐天寺の住宅街に「ディガウェル」の店舗兼アトリエができて、電話してみたら販売のアルバイトなら募集していると言われたので、面接を受けて採用してもらいました。4年目からはプレスも兼任して。バイト時代も含めて8年は働いていましたね。

在籍中、最も印象に残っていることは?

柴崎:ひとつの出来事ではないですが接客やプレス業務を通じて人と関わっていくことの大切さを経験させて貰えたのは本当に今の自分にとっての財産になっています。

"服を着ること"から繋がるクリエイティブ

― ブランドコンセプトを「Ordinary Pleasure」にした理由は?

柴崎:トロ・イ・モア(Toro Y Moi)の「Outer Peace」というアルバムの中に収録された「Ordinary Pleasure」っていう曲が元ネタです。"服を作る理由"については「ディガウェル」時代からずっと考えていて…。自分自身にとってリアリティのないアイテムに説得力を持たせることの難しさも感じていました。その時「Ordinary Pleasure」という日常的な喜びや心地よさを連想させるワードと出会って、自分自身や日々の生活とリンクした服を作る方が自然だなと考えブランドコンセプトにしました。

― 普段はどういう服を着ているんですか?

柴崎:古着が多いですね。不思議なデザインだなと思っても、着てみると「こういう役割があるのか」と気付きがあったりして楽しいです。デザインを考える際に参考にもなりますし。

最近着用して印象に残ったアイテムはありますか?

柴崎:イタリアの古着ですね。特に意識はしてませんでしたが所有している服だとアメリカ古着の方が多くてヨーロッパのものってそんなに持っていなくて。ことイタリア古着のデザインには一見機能的なのかと思うディテールがただの装飾だったりして、デザインとしてしっかり成立しているのが面白いなと思いました。こういったアイテムと出会うとファッションの本質は、ただ着心地が良いとか機能性が優れているだけではないと感じますね。もちろん着心地も重要です。そこは補填しつつディテールやパターンや縫製など、ぱっと見て分かりにくい部分ではありますが、そういうところにデザインを落とし込んで服に雰囲気を出せたらいいなと…。まだ模索中ですけどね。

― デザインする上で心がけていることは?

柴崎:自分が結局着なくなってしまうだろうなと思うようなものは避けるようにしています。服を着るという行為自体が僕のクリエイションの全てなので。あとは1点1点、自分なりに作る理由を持たせるようにしています。当然と言えばそうなのですが形骸化したモノづくりにならないようにしたい。自分自身や日々の生活にしっかり落とし込んだ、個人だからこそできるクリエイションをしていく、それこそが「シーバ」のやるべきことだと考えています。

― デビューしてから3シーズン、現状を率直にどうみていますか?

柴崎:ブランドをやっていく楽しさと難しさのどちらも感じています。卸先は前シーズンは10店舗で、まだまだ伸ばしたい気持ちはありますが、今シーズンはコロナの影響で展示会でのコミュニケーションが難しいのが正直なところ。今は焦らずこんな状況だからこそ、買っていただいていたセレクトショップの皆様との関係を濃くして行けたらいいなと思います。また出来るだけコロナを言い訳にしないようにしています。

― 考え方の変化はありましたか?

柴崎:2シーズン目から、ブランドコンセプトとは別にシーズンのテーマを設けるようになりました。デザインしてく中で自身の今の気分も表現した方が精神衛生上よくて。

― シーズンテーマはどのようなところから着想を得ているんですか?

柴崎:本や映画、音楽やインターネットで印象に残ったものをスマホのメモや写真に残しておいて、後で見返した時に自分の中で「いいな、強いな」と思ったものを拾い上げています。日々を過ごす中で出会ったものの中からピックしていくという感覚ですね。例えば2020-21年秋冬コレクションは京都市京セラ美術館からインスピレーションを受けていて、階段の縁取りをパイピングに見立てたり、建築物の装飾を服に置き換えデザインとして落とし込みました。

「Sheba」2020-21年秋冬コレクション Image by: Sheba

これからのファッションができること

― 今後の目標を教えて下さい。

柴崎:先ずはビジネスとして成立させることが、モノづくりの自由度を上げていくことに繋がるので、売上はしっかりと伸ばしていきたいです。あとは極論にはなってしまうんですが、僕は"めちゃくちゃ良いもの"というのは、泣けるほど感動すると思っているんです。なのでゆくゆくはブランドの活動を通して感動させられるようになりたいです。

― 今の日本のファッション業界について、率直にどう思いますか?

柴崎:あまりよいことではないかもしれませんがファッション業界に興味がなくて(笑)。コレクションブランドになることが目標とかでもないですし。ただ完全に主観ですがファッションに携わってる人っていい意味で変な人が多いと思うんですよ。そういう人たちと面白いことをやっていきたいとは思っています。

― 新型コロナウイルスの影響もあり厳しい状況が続いていますが、これからファッションはどうなっていくと思いますか?

柴崎:難しいですね(笑)。今って、ファッション業界でもサスティナビリティが囁かれているじゃないですか。でもファッションにはもともと嗜好性があるというか、有用性を突き詰めるとリサイクル素材で動きやすい服とか、究極は"必要以上に作らない"ことになってしまう。僕はファッションの魅力は、不要なものに意義を見出せるところにあると思っていて。でもそれって人が生きていく上ですごく大切なことで…うーん。…まだ"服を作る理由"分からないですね(笑)。

柴崎博和
1988年生まれ。ドレスメーカー学院デザインアート科を卒業後、「ディガウェル」に勤務し、2019年に自身のメンズブランド「シーバ」を立ち上げ。「Ordinary Pleasure」をコンセプトに素材やシルエットにこだわったアイテムを展開している。

(聞き手:渡部笑美香)

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