Culture フォーカス

主演は菅田将暉 監督は"野崎くん" 12万回再生のフィルムはどうやって作られたのか

「Summer break」より
「Summer break」より

 俳優・菅田将暉がプライベートで出演したというショートフィルムがネット上で密かに公開され、再生数を伸ばし続けている。手掛けているクリエーターは若手が多いが実力派ぞろいで、演出は映画級だ。難解なストーリーも興味を引く約7分半のフィルム「Summer break」は、なぜ作られたのか。監督したのは「野崎くん」と呼ばれている人物で、プロの映像監督ではないという。

 

Summer break from D-zoo on Vimeo.

■有名な一般人?野崎くんとは

左から「TTT」デザイナーのTAMASHABU、監督を担当した野崎浩貴

 制作に深く関わったのは「ティー(TTT)」のデザイナーTAMASHABUこと玉田翔太と、謎多き「野崎くん」。TTTが衣装を担当したほか、主演は菅田将暉、撮影・編集は宇多田ヒカルやサチモスのミュージックビデオを手掛けるdutch_tokyoこと山田健人、音楽はロックバンド「OKAMOTO'S」のオカモトレイジが携わっている。元々はブランドのキャンペーンフィルムとしての企画だったというが、結果的には違った方向へ。その稀有な経緯を取材した。

 野崎は1988年生まれの29歳。動物園散策や映画鑑賞が趣味で、大学卒業後は権利処理の仕事で5年間働いた。本人が「堅い仕事」と表現する業界に身を置いていた一方で、甲本ヒロトとラジオ番組で共演し、きゃりーぱみゅぱみゅの友人としてテレビ番組に出演するなど、メディアにも度々出演。今春には「ウィゴー(WEGO)」のキャンペーンにオカモトレイジらと登場している。水曜日のカンパネラのアルバム「UMA」のアートワークやツアーグッズのデザインを手掛けるなどイラストの制作にも取り組んでいるが、映像作品を本格的に手掛けたことはなかった。

 フィルムの発案者は玉田。地元が同じで以前から親交があった菅田将暉と食事中に、TTTの2017年春夏キャンペーンフィルムのアイデアについて口にしたことをきっかけに、菅田の出演が決定。プロジェクトが動き始めた。その後も、知り合いだった山田健人や野崎にフィルムについて相談するなどして徐々にクリエーターが集まり、一つの作品づくりが始動。その時点ですでに、TTTのキャンペーンフィルムという枠組みを超えていたという。

 未経験だった野崎を監督に抜擢した理由について玉田は「俳優の菅田くんが出てくれることになったのでプロの監督も考えたが、それだと面白みがないのではないかと考えた」と振り返る。パンチのあるクリエーター同士の掛け算を狙ったが、当初に考えていた以上のプロジェクトに成長していった。

■夏の思い出が未完成の状態で出て来るようなシーンを作りたい

 当初は複数のロケ地での撮影が必要なストーリーを考案していた野崎だが、売れっ子俳優として多忙を極める菅田の少ないオフ日を利用するということもあり、撮影に与えられたのは1日だけ。場所はプールに決めた。「夏の思い出が未完成の状態で出て来るようなシーンを作りたい」という野崎の意向から、劇中にはスイカやクワガタといった夏を連想させる要素を注入。頭にタコがのっていたり口からクワガタが出てくるなど、菅田の身に次々と奇妙な出来事が起こるというストーリーだ。

 「菅田くんが綺麗な状態のシーンが1カットもない作品にしたいと思った。終始びしょ濡れだったり、口から虫が出てきたり。ちびっこが見たら見世物小屋にも見えるようにしたかったので、そういう視点で見てもらってもいいように、セリフもいれなかった」(野崎)。

 撮影は12月だったことから、スイカやクワガタを調達するのに苦労したという。

 劇中の衣装は全てTTTのアイテム。衣装と言えどデザイン性の高い服ではなく、Tシャツやシャツなど極めてシンプル。あえて「普通っぽさ」を意識したことからも、服が主役のフィルムではないことがわかる。予算に制約があったが、関わったクリエーターそれぞれが妥協なく力を注いだことで、映画と見紛う出来栄えに仕上がった。

 Vimeoで公開したフィルムは瞬く間にSNS上で拡散され、当初の予想を大きく超えて約3カ月で12万回再生を突破。「面白かった」「意味わかんなかった」といった賛否両論と共に、「テーマは中絶なんじゃないか?」といった推測コメントが寄せられるなど、さまざまな反響が「嬉しかった」(野崎)という。

■まずは作ろうよ、という行動力

 あくまでも「結果的にこのメンバーになった」という偶然性のアプローチが、「Summer break」がメジャーな作品とは一線を画す点だろう。「畑は違えどみんな好きなことに対する気持ちを持っている」と玉田。これに対し野崎は「まずは作ろうよ、といったみんなの行動力を尊敬している」と振り返り、次の制作にも意欲的だ。

最新の関連記事

おすすめ記事

Realtime

現在の人気記事

    Ranking Top 10

    アクセスランキング