
(左から)松井智則氏(ワンオー代表取締役社長)、杉山央氏(新領域 代表)、物延信氏(Anyhow 代表取締役)

(左から)松井智則氏(ワンオー代表取締役社長)、杉山央氏(新領域 代表)、物延信氏(Anyhow 代表取締役)
国内最大級のクリエイティブの祭典「東京クリエイティブサロン(以下、TCS)」は、2020年の発足以来、東京を舞台にファッションやアート、デザインのイベントを展開してきた。そのTCSが、新たなボードメンバーを迎え、次なるステージへと進化を遂げようとしている。
ファッション統括ディレクターを務める松井智則氏(ワンオー代表取締役社長)に加え、新たに統括ディレクターに就任した杉山央氏(新領域 代表)、クリエイティブディレクターに就任した物延信氏(Anyhow 代表取締役)を迎えた鼎談を実施。2026年の次回開催に向け、さまざまな議論が水面下で繰り広げられている真っ只中、新体制で目指すTCSの姿、彼らの目に映る「東京」、そしてクリエイティブの力について、ミライを見つめて語ってもらった。
変わり続けることが肯定される街、今の東京が持つパワー
⎯⎯TCSは次回で7回目を迎えます。まずは皆さんそれぞれの視点から、舞台となる“現在の東京”について、都市が持つパワーについてお聞かせいただけますか。
杉山央氏(以下、杉山):コロナを経て、東京は“物理的な中心”から“感情の中心”へと変わりつつあると感じています。以前は「人が集まる場所」としての価値が大きかったですが、今や人の想いや創造のエネルギーが集まる都市になっている。東京は矛盾と多様性を内包する街であり、静けさと喧騒、伝統と未来、アナログとデジタルといった対極が共存しています。この“混沌の中の創造性”こそ、東京の本当のパワーであり、次の時代の原動力になると考えています。
物延信氏(以下、物延):“エネルギー”は東京を形容するひとつですよね。僕は、東京のプレゼンテーションの仕方が変わってきたと思っています。かつては「何でもある」「朝まで飲める」といった物量と時間軸の網羅性がアピールポイントでした。ただコロナを経て、人々のライフスタイルが変わり、それだけではない「東京にしかないもの」が求められるようになってきた。そこで、東京ならではだと感じるのは、“速さ”です。僕が仕事で拠点を置いていたロンドンや、現在住んでいる京都は真逆とも言える歴史的遺産が街の強み。一方で東京は、次々と新しいものを生み出していく“速さ”を街が包み込んで先に進むという独自性があると思います。
杉山:まさに、そういう在り方は東京ならではですよね。完成された街ではなく、昔のものを引き継ぎながら、常に壊され、作られ、変わり続けることを肯定する。そうした矛盾や多様性を内包しているからこそ生まれるエネルギーが、クリエイティビティの源泉になっているのではないでしょうか。
物延:速さへの対応力、エネルギーをエンジンにしていく力は圧倒的ですね。
松井智則氏(以下、松井):お二人の言葉が示唆に富んでいましたから、僕は実体験を語りたいと思います。僕はすごく“都会”が好きで世界中の都市に行きましたが、なんだかんだで一番だと思うのが東京。一つの都市でありながら、まるで世界の縮小版を見ているような、小さな世界が完成していると感じます。例えば、世界で生産国が中国から東南アジア、南アフリカへと移行してきたように、都内でも若者の流れが原宿、下北沢、新大久保と移り変わり、レトロブームを受けて下町も盛り上がりを見せてくる、というようなことが起こっている。住んで、仕事をしていて、これほど面白い街はないんじゃないかと思うことが増えました。

⎯⎯流動性やサイクルの速さは、東京らしさの欠かせない要素ですね。ファッションの観点からはいかがでしょうか。
松井:ブランドやデザイナーはさることながら、こと“東京”のファッションで見ても、歴史的に面白いポイントはたくさんあります。1990年代のゴスロリや女子高生ファッションのように、東京から生まれたカルチャーは世界的に見てもユニーク。グローバルで一躍トレンドになった「Y2K」だって、当時の東京のスタイルが盛り込まれていて、リアルタイムを生きていた人は懐かしみながら流行のサイクルを体感したのではないでしょうか。
物延:消費者のパワーもすごい。好奇心旺盛で、新しいものを“試してみる”という土壌がある。そのエネルギーがあるからこそ、私たち仕掛ける側もさまざまなサービスを試し、オーディエンスを広げていくことができるのだと思います。
杉山:ファッションにしろ、クリエイティブにしろ、昨今は「デザインは出尽くした」と言われ、新しいものは生まれないのではないかという風潮もあります。ただ、コロナを経てライフスタイルが変わり、東京も刻一刻と変容してくる中で、「東京が生み出すパワーはまだまだある」というのは3人の意見が一致しているところです。
TCSが目指す、新たなステージへの萌芽
⎯⎯TCSでは徐々に開催エリアを拡張し、巻き込む地域と人を拡大してきました。絶賛、議論の最中だと思いますが、新たな体制で見据える方向性は?
杉山:昨年まで、開催地は10のエリア(丸の内、日本橋、銀座、有楽町、赤坂、六本木、渋谷、原宿、新宿、羽田)にまたがり、それぞれが個性的なイベントを開催してきました。数分移動しただけでも地域の個性が変わるのも東京の面白さですから、各エリアで個性的な催しが揃うことは素晴らしい取り組みでした。一方で、全体としてどうあるべきか、改めて洗練させていくフェーズなのではないかと。
そこで次回は、各エリアの個性を大事にしながらも、全体で発信するメッセージを明確にし、TCSが主催するイベントを打つことで軸を作り、そこから各エリアへとエネルギーを波及できるような構造を目指したいと思っています。
⎯⎯次回のテーマは?
杉山:全体で掲げるテーマは「FUTURE VINTAGE」です。これは、東京が築き上げてきた都市の記憶や文化を大切にしながら、そこから新しいものを生み出し、未来に残るもの、つまり「将来ヴィンテージになるもの」を発信していくんだ、という思いを込めています。このテーマのもとで、さまざまな企画が繰り広げられていきます。
松井:本当に現在進行形で議論を積み重ねているところなんですよ(笑)。現段階でお伝えできることとして、TCSのオリジナルコンテンツを3つ立ち上げます。1つ目はTCSのコアをお伝えするための「TCS Opening Ceremony」。2つ目は一般参加が可能な「Focus Exhibition Tokyo Trace」というイベント。最後に「Tokyo Vintage Fashion Week」の開催です。
杉山:Opening Ceremonyはどちらかと言うと業界や関係者のtoB向けの施策。改めて一緒に盛り上げていきましょうよ、と音頭をとって、TCSの熱量を高めていきたいと話し合いました。Tokyo Traceは物延さんが素晴らしい視点でアイデアを出してくださいました。
物延:そんなに仰々しいものじゃないですよ(笑)。クリエイターやデザイナーのような本業の人たちが来たいと思うコンテンツをもっと届けていきたいじゃないですか?日本ひいては東京からは、めちゃくちゃかっこいいクリエイターの人たちがわんさか羽ばたいている。そういう人たちにとって、それぞれの東京像、抱える思いがあるはずなんですよね。それで、「東京トレース」では、一人のファッションデザイナーにフォーカスを当てて、その人が東京とどう関わり、どんな影響を受けてきたのか、アーカイヴ的に見せていく予定です。

⎯⎯ちなみに、主役となるデザイナーはもう決まってるのでしょうか?
物延:ここはもう決まっているので、初公開ですが「ノーマリズム テキスタイル(NOMARHYTHM TEXTILE)」のお二人(デザイナーの野口真彩子氏と佐々木拓真氏)にお願いしています。写真家の川内倫子さんや、藤原ヒロシさんとコラボレーションするなど、東京を拠点にしながらグローバルにも活動を広げています。ストリートに通じるパワーを持ちながら、所謂パリコレのモードとは違う感覚で東京を見ている。そこに僕が感じる東京らしさも潜んでいる気がして、とても楽しみにしています。
⎯⎯そして、最後のオリジナルコンテンツがTokyo Vintage Fashion Weekですね。松井さんはこれまでも街全体を巻き込んだファッションのお祭り「渋谷原宿ファッションフェスティバル」を開催したり、TCSでも原宿エリアのプロデュースや代々木第一体育館でランウェイを実施したり、ファッションコンテンツを担ってきました。
松井:ファッションも東京と同じく“ナマモノ”で、移ろい続けていますよね。“ヴィンテージ”は最早、今の東京のファッションの大きな資産。グローバルでヴィンテージブームが起こっていますが、元を辿れば東京がその発端でもあった。各国と比べてもレベルが高く、世界中から愛好者やバイヤーが集っているんです。こうした流れを汲み取って、“ヴィンテージだけ”のファッションウィークを開催します。
⎯⎯所謂ランウェイやファッションショーも行うイメージでしょうか。
松井:そのつもりです。まずはメイン会場で集中的に開催しますが、将来的にはさまざまなエリアの会場にも横展開していきたい。まだ企画中ですが、某有名ブランドに新作と過去のアーカイヴを織り交ぜたショーをやってもらえないかと交渉もしています。

クリエイティブが都市と人々に与える力
⎯⎯皆さんは、ファッションやデザインというものが、都市やそこに住む人々にどのような力を与えるとお考えですか。
杉山:これまで都市を舞台にしたイベントやデザインをフィーチャーした催しに多く携わらせていただきました。僕が思うのは、都市が生き物だとしたら、ファッションやデザインは「エネルギー」や「呼吸」のようなものではないかと。それがあるから都市は成長し、魅力を発信できる。ビルディングのような物理的なものではなく、都市に生命を吹き込む、目に見えないけれど不可欠な存在だと思います。
物延:エネルギー、確かに都市においてはそうやって前に進んでいっている部分は大きいですよね。僕は「規律」のようなものだと捉えています。ロゴやシンボルが、それを見た人にどう受け取られるかを考えるのがデザイン。企業のロゴが社員のモチベーションをデザインするように、あるいはテーラーのジャケットに袖を通した時に背筋が伸びるように、ファッションやデザインは人の意識や行動の規律を作る力を持っていると思います。それは必ずしも秩序のようなものではなくて、心持ちとかそう言う意味も含みます。

松井:それぞれ違っていて面白いですね。こんな目線がうまく混ざり合えば、いい企画がさらに立てられる気がします。僕はTCSに加わってから、この話題についてより考えるようになりました。そこでいつも思うのが、その役割を突き詰めていくと「平和」なんじゃないかなと。おしゃれをしたい、美しくありたいという気持ちは、人間の美意識を高めます。そうなると、自分のことだけでなく、他人の命や気候変動といったことにも自然と興味が向くようになる。平和でなければ、ファッションもデザインも楽しめませんから。
⎯⎯次回開催に向け、さまざまな議論が進む中での取材となりましたが、最後にこれからの東京クリエイティブサロンへの期待感を一言ずついただけますか?
杉山:変動し、エネルギーを生み出し続ける今の東京に生きるクリエイターや我々だから見つけられた“らしさ”の議論は個人的にも刺激的で面白いんです。TCSの新たなステージに向けた萌芽を、ぜひお見逃しなく。
物延:自分が関わるコンテンツを宣伝させてください(笑)。東京トレースはクリエイターと東京の関係性を深く掘り下げる、ユニークな試みになると思います。そこからまた、各々が考える東京ってなんだ、とか。言葉が生まれたり、クリエイティブの種になるよう準備を進めていきます。
松井:長く携わってきましたが、毎回改善点と同時に「次はさらにいい企画ができるな」と期待値は上がっていくんですよね。特に次回は、ファッションと関連するイベントも強くなりますから一層気持ちも入っています。東京ヴィンテージファションウィークはおそらく世界初の試みになるはず。僕らにとってTCSは、東京の地場産業であるクリエイティブの“祭り”だと思っています。今まできたことがない方も、経験のある方も、是非この祭りに参加してみて欲しいですね。

杉山央:新領域 CEO / Art+Tech Producer。2000年に森ビルに入社。2018年「森ビルデジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」企画運営室長、2023年虎ノ門ヒルズ「TOKYO NODE」の施設責任者を経て、2024年に森ビルを退職。新領域を設立し、2025年大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちのあかし」計画統括ディレクター、2026年「東京クリエイティブサロン」統括ディレクター、2027年「GREEN×EXPO 2027」テーマ館 展示ディレクター等を務め、アートとテクノロジーを横断しながら新たな体験と空間の創造に取り組んでいる。
物延信:国内メーカーでインハウスデザイナーとしてキャリアを積んだ後、2010年に渡英。ロンドンのクリエイティブファーム「Winkreative」でブランディングのノウハウを学び、2016年に英国法人 Anyhow Ltd. を創業(2021年に日本法人を設立)。ブランド戦略構築から、プロジェクト企画、コミュニケーション戦略、各種デザインに至るまで、トータルで一貫性のあるブランディングビジネスを行う。自社プロジェクト「A Piece of Gold」展や、スニーカーブランド「クレメンス(Clemens)」を運営している。
松井智則:1977年生まれ。2000年にアッシュ・ペー・フランスに入社し、社内小売店やPR部門を経て、2006年にPR01.を立上げエグゼクティブディレクターに就任。「SHIBUYA FASHION FESTIVAL」や「PR01.TRADESHOW」といったファッションイベントの立ち上げに尽力。2017年にワンオーを設立し、代表取締役に就任。ファッションをはじめ、商業施設や異業種のブランディングおよびプロモーション監修に携わる。
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