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【インタビュー】「デザイナーを育てるショップ」5周年の伊勢丹TOKYO解放区の役割

寺澤真理
Image by: FASHIONSNAP

 セーラームーン×「ケイスケカンダ(keisuke kanda)」や「銭湯×ファッション」の提案など、従来の百貨店のイメージからは想像できないブランドやコラボレーションを発信してきた伊勢丹新宿店本館2階の「TOKYO解放区」。今年3月で5周年目を迎えた同ショップは若手のインキュベーションにも力を入れているが、敢えて買取にはこだわらず委託販売を積極的に行っているという。その理由・意味とは? バイヤー寺澤真理が考える、若手ブランドの成長に必要な百貨店の役割。

TOKYO解放区
伊勢丹新宿店の本館2階にあるプロモーションスペース「PARK」にあるコンセプトショップ。ファッション、アート、カルチャーやライフスタイルまで、さまざまな切り口でTOKYOの「今」の「旬」のモノやコトを紹介している。

過去のイベント
ファッション×漫画「東京タラレバ娘」伊勢丹新宿店でイベント開催
伊勢丹にスナック?「トリンカアンプリュアン」の限定ショップオープン
【動画】サンリオキャラもバグ表示?業界注目の技法「グリッチ」にフィーチャーした限定店

―TOKYO解放区が5周年目。今の率直な心境は?

 感謝の気持ちでいっぱいです。ファッションには流動的な面もあるため、価値観の変化に伴い時代の流れに合わなくなることも当然あって、伊勢丹新宿店でも無くなった売り場がある中でまだ存続させて頂けていることを有り難く思っています。

―続けてこれた要因は何だと思いますか?

 TOKYO解放区らしさとは? を常に意識し追求してきた結果、各企画やTOKYO解放区という"場"の意義などに共感して頂けているのかなと思っています。

―東京カルチャーを発信し続けてきましたが、その狙いは?

 立ち上げ当初から変わらず力を入れています。ただ「カルチャー」というとポップカルチャーばかりに目が行きがちですが、私たちは「カルチャー」というキーワードをムーブメントや世の中の事象として捉えていることが多いんです。服だけではない食やアート、音楽などいわゆる"ストリート"で流行っている出来事や温度感とかそういうものが洋服と一緒になることでファッションカルチャーが作られると思っているので、そういったものを発信できる売り場作りを心がけています。

―企画はどういった視点で考えていくんですか?

 1つは「東京タラレバ娘」の企画のような、女の人に「こういう生き方があるよね」と共感してもらうといった精神性や価値観、事象の部分から入る提案の仕方。二つ目は純粋にブランドやクリエーターを紹介したいという気持ちです。

―「銭湯×ファッション」などテーマを持ったポップアップショップ企画が多いですね。

 コンセプチュアルな売り場作りは、ブランドもイメージを大切にしていますから交渉が難航することが多く、1,2週間に一回新しい企画を立ち上げるのでとても大変です。本当に時間をかけて作り上げてきたのですが、ただ最近は、4年経ちお店に色が出てきたことで、自分たちが良いと思った物を並べるだけでもTOKYO解放区らしさが出るのではと考えることがあって。オープン当初は無理だったことが、現在はやれることも増えてきたと思っています。「TOKYO解放区が良いと言うなら間違いない」と言って頂けるようなお店でありたいですね。

―新人デザイナーファッション大賞の審査員を務めるなど、寺澤さん自身も多面で活躍されています。

 前に出たいとは思わないですけど、私が若い頃は顔が見える個性的なバイヤーさんが買い付けているからあのお店に行くということがあって。バイヤーの顔が見えない匿名のお店よりも、バイヤーが前に出てその人のセンスを打ち出していくことが、今後、重要になってくるのではないかと考えています。

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―いま力を入れていることは何ですか?

 デザイナーさんとミーティングや商談をしているときに、お互いに面白い発想がどんどん出てくるということが良くあるんです。店頭に商品を並べるということが私の仕事ですが、そこに至るまでには様々なプロセスがあって、そのプロセスの面白さを含め何とか発信できないかと考え、例えばトークイベントを開催してその人の考えに触れられる場を作るようにしています。

―ストーリーを伝える努力は販売スタッフも?

 新しい企画が立ち上がる際はデザイナーさんにいらして頂き勉強会を開いています。タイミングが合わなければ設営の時にストーリーを聞くようにしていて、2015年8月に実施した「キャンディストリッパー(Candy Stripper)」と二階堂ふみさんの企画の時は、二階堂さん自ら説明にいらっしゃって下さり、そこで商品が誕生したストーリーやデザインに込めた思いなどを販売スタッフと共に共有させて頂きました。普段も私はもちろんですが、販売スタッフも積極的にブランドの展示会に行くようにしています。

「ピンクハウス(PINK HOUSE)」のリブランディングなどディレクションも手掛けています。

 ブランドをリボーンと銘打って「シアタープロダクツ(THEATRE PRODUCTS)」や「ビューティフル ピープル(beautiful people)」など今の東京のファッションと掛け合わせるという仕掛けをしました。あとTOKYO解放区ができる以前より山縣さん(山縣良和)に洋服を作って欲しいとずっと言い続けていたんです。私の要望に応えるかたちで「リトゥン バイ(written by)」が立ち上がったわけではないですが、結果としてのデビュー企画を開催することもできました。

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written by by 売展」で販売された商品

―他の売り場に置かれているブランドは取り扱えないんですよね?

 お客様の混乱を避けるという理由から展開ブランドのすみわけは行っています。ただ、自分たちで発掘したクリエーターの方々とは、MDの組み立てや売上の取り方、ブランディングに至るまで時間をかけて関係性を築いてきましたから。人気が出てきたところで他の売り場に持っていかれるのは、嬉しい反面、正直寂しいですね(笑)。

―若手にフィーチャーした企画も多いですが、若いデザイナーに対して思うことはありますか?

 欲を言えばもっと危なっかしいことをしてほしいなという思いがあります。もちろん企業なのでコンプライアンスの問題もあって取りまとめるのは大変なんですが、危なっかしいといえば、それこそ2015年12月の企画「ISETAN 宇宙支店」を作った中里周子さんのような奇想天外な発想がもっとあってもいいと思っています。

―そもそもなぜ若手に注目するんですか?

 ショップコンセプトだからというのもありますが、単純に新しいものを発信するとなったら発想が新しいか、そのもの自体が新しいかの2つだと思うんです。そのもの自体が新しいとなると、他のショップが扱っていない若手ブランドになりますからね。

―若手のインキュベーションを目的とした売り場が増えていますが、他社とどう差別化していますか?

 やはり伊勢丹新宿店でというところは大きいと思っています。「TOKYO解放区のようなショップ・取り組みは他の百貨店にはない」と言われ嬉しい気持ちもありながら、百貨店という狭い視野だけではなく、もっと広げていかないと駄目だとも思っているんです。それこそ「デスペラード(DESPERADO)」さんのようにきちんと独自の芯をもってセレクトしているショップは沢山あって、TOKYO解放区ではできないことやっているショップは多いと思います。百貨店だからということで限界を決めず、新しいファッションを発信できるよう挑戦し続けることが大事だと考えています。

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「TOKYO解放区」Jenny Fax Farm

―委託の比率を増やしている理由は何ですか?

 若いデザイナーさんと話し合ってあえて委託にさせて頂いている部分があります。TOKYO解放区の使命の1つとして一番は若いブランドを育てたいという思いからです。買取にすると安心感が出てしまいそこで思考を止めてしまう人もいて、しっかり危機感を持って「どうしたら売れるか」ということをきちんと考えないとブランドの成長には繋がらないと思うんです。若いデザイナーさんはクリエーションに関してはとことん熟考を重ねる傾向がありますが、店頭に並べる機会もあまりないためお客様の声を聞いたことない人たちも多いんです。そういった声を踏まえながら、MDの作り方などを1からアドバイスして少しでもブランドの成長に繋げて貰えればと考えています。

―今後の目標について教えてください。

 新しい価値、文化を作り、常に世界へ発信し続けている場所としてファッションの楽しさを伝え続けていきたいです。そしてTOKYO解放区で発掘したブランドがファッションの中心で活躍するようになれば嬉しいですね。

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