
トム フォード 2026年秋冬コレクション
Image by: TOM FORD
ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)がクリエイティブディレクターに就任して3シーズン目の「トム フォード(TOM FORD)」。これまでダークでストイックなムードのショーを開いてきたが、今回はガラリとイメージを変えた。舞台は夜から昼へ。光に包まれたランウェイで発表された2026年秋冬コレクションが、今シーズンのパリファッションウィークのハイライトのひとつとなった。
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ストーリーが溶け合う空間
場所はヴァンドーム広場の一角。ラグジュアリーブランドとしては小さな会場で、オートクチュールのサロンショーのように、限られた観客が近くで見ることができるよう設計されている。ドレス、スーツ、そして着物に身を包んだセレブリティや顧客らが、純白のショー会場に集った。
ショーの始まりとともにランウェイが暗転し、ノイズが鳴り響く。ライトが点滅し徐々に明るくなると、2つの入り口それそれぞれに、バズカットの淑女と2人の紳士が立っていた。彼らは一本道を進むのではなく、周囲に視線を流しながら、ランウェイのあらゆる方向に向かって歩いていく。歩き方もそれぞれで、ふとした仕草や視線から、映画のワンシーンを見ているかのようだった。
誘惑とは、対話である。
対極にあるものが惹かれ合い、出会い、それぞれのストーリーが溶け合っていく。
——コレクションノートより
日常を拡張するデイリークローズ
今シーズン、ハイダーがフォーカスしたのは、極めてシンプルでありながら捻りが効いている、上質なデイリークローズだ。それは日常を拡張し、官能性を宿すワードローブ。「ここでの私の言語は、誘惑だ」と、ハイダーはコレクションノートに記している。
序盤は、男女ともにモノトーンをベースとしたミニマルな装い。ウィメンズは、乳白色のしなやかなレザーで仕立てたセットアップにはじまり、メンズはクレリックシャツとダブルのスーツからスタートした。コットンのシャツやTシャツを、しなやかなレザーで仕立てる提案も。




緊張感をはらみながらも自由で、男女共有のデザインも見つけることができる。ローウエストのパンツには内側にもベルトループが付き、斜めに巻いた細ベルトが露出した腰を飾った。




PVC、レザー、日本製デニム
今シーズンの特徴であるレイヤードを、最も象徴しているのがPVC素材だ。レザーのパイピングを施し、トムフォードならではのシャープなテーラリングを反映した。ジャケットに重ねたり、タイトスカートからシャツやフレンチレースを透けて見せたりと、スタイリングの技が効いている。また、ボンバージャケットを光沢のあるシルクで仕立て、シャツとジャケットに重ねたノーパンツスタイルはコケティッシュな魅力を感じさせる。






中盤はクロコダイルをはじめレザーのバリエーションを広げ、レッドのセットアップや、脇にレザーのドローコードをデザインしたパンツが印象的だ。



注目は、ショーで初めて登場したジャパニーズデニム。職人技を感じさせるユーズド加工の美しいヒゲと色落ちは、日本製ならでは。



ツイードにスパングルを散りばめたセットアップや、総ビーズのカクテルドレスといった華やかなピースも健在だが、あくまでもリアリティに落とし込んでいる。終盤のイヴニングは、ジレの上にボウをたすき掛けしたり、シャツのフロントを開けて着崩し、パーティーの翌朝のような余韻を感じさせた。




アティチュードがスタイルに
個性豊かなモデルたちは、バッグに新聞や花を忍ばせ、紳士淑女の嗜みを匂わせる。片手だけにはめたレザーグローブの所作、交差する視線と仕草——アティチュードそのものをスタイルへと変える。服が人に着せられるのではなく、人が服をまとい、生きる。その純粋な営みの中に、ハイダー・アッカーマンが描くトム・フォードの官能性とエレガンスが立ち現れていた。
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