Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】辺見芳弘 HBS出身の企業再建請負人が変えたヨウジヤマモト

■いい会社=高利益 だけではない

―全体の売上は当初の2倍強となる約90億円、利益は10億を超える水準まで成長しました。

 投資前は1億でも利益が出るようになればという状況でしたが、私は年間10億は利益を出せるようになると見込んでいたんです。ただ「いい会社=高利益」というだけではなく、「ブランドとは何なのか」を社員が理解しているとか、ビジネス基盤がしっかりしているとか、定義は様々です。やはり一流の方々がいる会社だったので、民事再生を経てもブランドとして超一流であるべきだとは感じていました。

―再生のフェーズを経て、今はどういったフェーズになりますか?

 事業にどんどん投資するという発展のフェーズですね。ある一定まで稼げるようにならなければ投資ができないし社員に還元できない。そしていい会社づくりができません。危機感の元に切磋琢磨して最低限の環境が整ったので、3年ほど前にギアシフトしました。

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―長期的な見通しは?

 業態開発をしてカテゴリの多角化をしたら、次は本格的なグローバル化です。ワイズも含めて世界で展開できるようにとは考えています。それが達成できるかどうか、結局は人なんですよね。ブランドがどうなっていくかというイメージが社員で共有されたら、そこに向かっていけるというステージになってきていますから。ターゲットが大きい分、強引に引っ張るのではなく、スタッフのクオリティーも上げていかなければいけないと思っています。

―数字では長期的にどこまでいけると考えますか?

 遠い将来としては、売上ベースで300億円規模。ただ、ヨウジヤマモト社の場合は売上ばかりではなく、世界的なプレゼンスがあるかどうか、ということが重要になってきます。

―民事再生とインテグラルによる再建を発表した2009年の会見で、山本氏が語った「裸の王様だった」という言葉が印象に残っています。この約7年でそういった状況も変わったのでしょうか。

 耀司さんをよく知る方ならわかると思いますが、本当はクリエーションもビジネスも本質をわかっている方です。我々とも理解し合いながらここまで来ましたし、これからも関係性が続きます。ピラミッドに例えれば、ここにきて一番上のコアがより強くなっているとも思いますね。民事再生を経験したこともあって、デザイナーとして火がついてると言えるかもしれない。会社としてもファンダメンタルを守りつつ、新しいことを取り入れるバランスが取れてきている。何が変わったのかを一言でいえば、「いい会社になった」ということでしょう。

■ファッションと投資の関係

イトキンがインテグラル傘下で再建するという発表から約1年。展開ブランドを縮小するなど、施策が進んでいます。

 イトキンの場合は民事再生ではなく経営悪化からの再建でしたが、企業の構造を見直す部分と、漢方療法的に内部から直す部分、両方がありました。ある意味で会社としてきちんとし過ぎていて、社員がそれぞれ細かく分かれた職種の蛸壺に入って仕事をしているような状態。全体の連携がとても弱かったんですが、そういう企業は少なくないと思いますね。蛸壺を壊すことは構造改革では難しいので、漢方療法のようにじっくりと変革を進めています。

【2016年2月10日のニュース】イトキン再建へ ヨウジ支援したファンドの傘下入りを発表

―どういった企業の形を目指しているのでしょうか。

 20程度のブランドを運営していますが、それぞれの規模が小さいからこその強みがあると思います。ITのプラットフォームとか、新しいインフラを作りやすい。伝統的なアパレルは皆ある程度の体力があるので、それぞれの事業が俊敏性を持ちながら横串を通して、グループのメリットを活かせる会社になればと考えています。

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―ファッション分野の企業は他の業種と企業色や構造などは異なりますか? アパレル会社に投資することの難しさなどはあるのでしょうか。

 ブランドビジネスの観点では同じですが、人依存が強いという特徴はあるかもしれません。故に当事者の人がどう変わるか、ということが重要になってきますね。アパレルは売上に限らず利益を出せますから、それぞれの規模で出し方を考え、連携をして、場合によっては外部を使って課題に向き合っていくことで、変わることができるでしょう。

―古い商慣習が残っていることもあり、ファッション業界は今、過渡期と言われています。

 結局はどの業種も、その時代における競争で勝てるか勝てないかでしょう。プロモーションの側面で見ても、昔ながらに芸能人を起用して大きくテレビCMを打っている大企業より、デジタルを活用したり新しいことに目を向けている中小企業の方が収益性が高いということはありますから。やり方次第ですよ。

―若手デザイナーや中小規模のブランドの投資や支援については、どのように考えますか。

 例えばある程度の規模のアパレル企業が若手に対してインフラを提供したり、有望なデザイナーがいて独立するという時に支援をしたり、インキュベーションの機能は必要とされていますね。ファンドとしては投資規模の条件がありますが、小規模の投資の拡張性も感じてはいます。

―日本国内ではまだ、投資会社とアパレルの成功事例は少ないかと思います。

 沈みそうな船でも一緒に乗りながら、双方の機能や頭脳を合わせることで共に成長することができます。長期的に考えて、船が安定すれば次は利益のリターンを配分し、更に投資することができますから。世の中で投資家が"銭ゲバ"のように思われることもありますが、そうではないと知って欲しいですね(笑)。

聞き手:小湊千恵美

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