アンドレアス・ワイガンド(Andreas Weigend)氏
Image by: FASHIONSNAP.COM

Business インタビュー・対談

ファッションはデータとの相性が最もいい?
ZOZOのデータサイエンスアドバイザーに聞くデータ活用の鍵

アンドレアス・ワイガンド(Andreas Weigend)氏
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 Amazon.com社でチーフサイエンティストを務めたアンドレアス・ワイガンド(Andreas Weigend)氏が9月、データサイエンスアドバイザーとしてZOZOグループのZOZOテクノロジーズに加わった。同社のデータサイエンティストの育成とデータドリブンな企業風土の醸成を行うべく、データ活用や分析、ポジティブな心構えを広めていくという。ビッグデータの活用が呼びかけられる昨今、ファッション業界におけるデータの重要性とは?ワイガンド氏に話を聞いた。

— ADの後に記事が続きます —

ーZOZOテクノロジーズはデータドリブンな企業風土の醸成を目指しているとのことですが、データドリブンな企業とは?

 データによって"ドライブされる"(動かされる)のではなく、データを"ドライブする"(動かす)側にいることが重要だと考えています。議論の余地がある問いに対して仮説をたて、データを用いて主体的に実験を行うことが"データドリブン"だと捉えています。

ーデータドリブンな企業となるには今後ZOZOグループはどういったことに取り組むべきですか?

 「どうすれば顧客の信頼を得ることができ、その信頼を保つことができるか」ということを考えてほしいと思っています。ECサイトで言えば重要なのはフォントなのか、文字や画像のサイズなのか、すぐには分かりません。私がアマゾンに在籍していた時のいい例として、日本のコンバージョン率が急激に上がった日がありました。調べたところ、日本に新たな画像サーバーを置いたことにより画像の読み込み速度が改善したことが要因でしたが、これまで読み込みに0.3秒かかっていたのが0.15秒になることによりユーザーの行動がそのように変化するとは誰も予測していませんでした。このようにどういったことを顧客が喜ぶのかを、ZOZOはより機械的に調べていくことが必要です。

 私は「Data for the People(邦題:アマゾノミクス データ・サイエンティストはこう考える)」という本を執筆しておりますが、そのタイトルの通りデータは大衆や個人、市民、顧客の利益にならなければいけません。ではそのために企業は何をするべきか?意義のあるテーマについて疑問を持ち、仮説を立て、その結果を測る方法を考えること、それがデータサイエンスの本質だと私は捉えています。

 ではもしもZOZOが完璧な技術を手に入れ、ユーザーがほしいと感じるものを全て買わせることができたら?最高だと思うか、逆に操られている、気味が悪いと感じてしまうのか?あなたはどう思いますか?

ー少し気味が悪いと感じるかもしれません。

 このように完璧なテクノロジーがあった場合についても考えるべきです。ユーザーもそれを完璧だと捉えるのか、怖いと捉えるのか。ZOZOで行ったワークショップで議論した「ほしい商品が揃っているとして、なぜユーザーはその商品を見つけることができないのか」という議題にもつながります。障害となっているのはデータなのか、パソコンなのか、在庫なのか。こういった課題に対して、データをどのように活用することができるかを考えてほしいのです。

 またあるファッションがどのように世に広がっていくのかもおもしろい議題です。足首が隠れない短い丈のパンツを若者が履いているのをよく見ます。このようなパンツをZOZOTOWNで最初に買ったのは誰か?インスタグラムで最初に投稿したのは誰か?これらは10年前は答えることのできなかった問いですが、今の時代はデータを元に調べることが可能です。これまでの実店舗では顧客が何を見て、何が売れ、どこに置くべきかなどは店舗責任者の判断に依拠していましたが、今は仮説を立て、データを元に正解を導き出すことができるようになりました。究極的にはどのようなファッションが流行り、廃れるかが分かるようになるといいですよね。

ーファッションはデータとして残しやすいのでしょうか?

 ファッションはデータとの相性が最もいいのではないでしょうか?着ているものは日々SNSの投稿などを通じて記録されています。100年前のファッションについてどれほど知っていますか?インスタグラムなどで人々がファッションを現代ほど記録に残す時代は過去になかったはずです。

ーデータの活用と聞くと企業側のメリットを想像しがちですが、ユーザー側へのメリットは?

 どのようにすれば企業もユーザーもwin-winの関係になるかを考えなければいけません。ファッションは誰かが勝てば誰かが負ける「パイの奪い合い」ではないと思っています。私は一生分の服をすでに持っていますがそれでも新しい服を買いますし、1つの場所で買ったからといって別の場所で買わなくなる訳ではありません。つまりはデータの活用とは企業のためかユーザーのためか、というどちらか一方のためではなく、どちらにとっても有益となる方法を見つけ出すことがポイントで、それが可能だと思っています。

ーZOZOの強みは何だと思いますか?

 ZOZOスーツのアイデアはすばらしいと思います。たくさんの人が喜んで自分の身体にまつわるデータを提供するZOZOスーツの仕組みは、世界で見ても先進的です。

ー多くのファッション企業がビッグデータの収集を始めていますが、その活用方法はまだ漠然としているように感じます。データ活用の際に持つべき視点は?

 データではなく、どういった決断を下す必要があるのか、というところから始めなければいけません。例えば、どの商品を、どのサイズで、どの店舗で展開するか、といった決断はこれまではバイヤーが主体となって行ってきました。企業側の決断だけでなく、顧客側の決断もあります。例えばこのシャツをフランクフルトの空港で見た時私はあまり好みじゃありませんでしたが、「買えば絶対にお気に入りになります」という店員の言葉で購入を決めたように、他人のおすすめは自分の判断に勝ることもあります。こういった決断のため、どうデータを活用できるかを考えるべきです。

ー将来的にはAIがデータサイエンティストの代わりとなると思いますか?

 データサイエンティストのつまらない仕事はAIに任せられればいいと思いますが、AIをプログラミングするのにデータサイエンティストやコンピューターサイエンティストが必要ですし、代わりにはならないと思います。いいデータサイエンティストは今も見つけるのが難しく、そういった才能のある人たちはAIに仕事を取られることはないでしょう。

ーいいデータサイエンティストの資質は?

 いい質問ですね。どの課題について調べるかの勘のよさ、でしょうか。多くの人が的外れの問題に取り組みがちです。その問題について分析した後に、結果をつなぎ合わせていかにいいストーリーを編み出すかも重要です。的確なストーリーを編み出すということは、重要な事柄とそうでない事柄の判断ができる、ということことにもつながりますからね。

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