ニューヨークにて2008年に大丸隆平が設立した「大丸製作所2(oomaru seisakusho 2)」が手掛けるオリジナルブランド。「ニューヨークを着る」をコンセプトに2015年にスタート。独自のパターンメイキングにより、サイズやジェンダーから解放された服を提案している。
OVERCOATのコレクション

1977年福岡県生まれ。2008年に「大丸製作所2(oomaru seisakusho2)」を設立。2015年に「オーバーコート(OVERCOAT)」を立ち上げ、パターン技術を駆使しながら性別、年齢、体型の違いといったあらゆる個性を包み込む服を提案している。
ADVERTISING
目次
- BRAND CONCEPT -
クリエイションの軸は、布と人間との間に生じる「ゆとり」のデザイン
大丸隆平が設立した大丸製作所2(oomaru seisakusho 2)が手掛けるユニセックスブランド「オーバーコート(OVERCOAT)」。ニューヨークファッションウィークでのコレクション発表を続けながら、2021年春夏コレクションで初めて東京で単独の展示会を開催した。
パタンナーとして経験を積んだ大丸は、布と人間との間に生じる「ゆとり」のデザインをクリエイションの軸として持っているという。その上で、自身の拠点である「ニューヨークを着る」という制限を自らのアウトプットに課した結果としてオーバーコートが生まれた。「ニューヨークの景観ということだけではなく、都市が持つ"ダイナミックさ"や"ダイバーシティ"を感じるニューヨークを表現したい」とデザイナーは語る。
- BRAND NAME -
「オーバーコート」の前身となる「The Greatest Overcoats Project」
ブランド名の「オーバーコート」は、ブランド立ち上げ前に大丸製作所2としてオリジナルウェアの新プロジェクト「The Greatest Overcoats Project」で最初にコートを制作したことがきっかけになっているという。
「The Greatest Overcoats Project」は2015年からスタートし、店舗の出入口のひさしに使われるオーニングと呼ばれる素材の面白さに惹かれ、架空のオーニングをデザインするところから始まった。これまで多くのNYデザイナーを虜にしてきたパターンメイキングの技術を活かし、どんな体型でも着られるよう工夫されたコートなど、服を通じた新しいコミュニケーションを創出している。











Image by OVERCOAT
- HIGH QUALITY -
ブランドを代表するアイテムは「トレンチコート」と「チェスターコート」
オーバーコートの代名詞となるコートの中でも、長年もっとも人気のあるアイテムのひとつがトレンチコートだ。トレンチが本来持つミリタリー的なディティールを敢えて削ぎ落とすことで、より現代的な解釈のコートとして提案している。
トレンチコートで見られるラグランスリーブは、ラグラン線上のタックにより肩幅や肩傾斜の度合いに関わらず体にフィットするよう設計されているという。「タックがダキ(アームホールの袖付けの下部分)のゆとりをデザインへと昇華させ、見た目の美しさを創り出し、着用時の快適性を共存させることを可能にしている」とデザイナーも太鼓判を押す。














Image by FASHIONSNAP
また、身頃と袖がひと続きになったドルマンスリーブのデザインが程よいモード感を演出しているチェスターコートも、ジェンダーレス&エイジレスで着られる一品として人気が高い。多様なサイズの肩幅に対応できるように、襟ぐりから肩先にかけて大きくとられたプリーツが伸縮するように設計されている。
中にスーツやインナーダウンを着用しても十分なゆとりがあり、腕の長さや好みのスタイルによって裄丈を自由に調整できるよう袖は長めに設計されている。着る人の気持ちに寄り添った細やかな気遣いが随所に感じられる逸品だ。














Image by FASHIONSNAP
- CHARACTERISTIC ITEM -
時代の変化で人気が高まった「T05セットアップ」
「抽象的でまだ名前のない存在を創りたい」という思いから生まれた「T05セットアップ」。家でも着用しやすいように、制服やユニフォームの生地として用いられる肌触りの良いライトサージを使用。新型コロナウイルスの影響でカジュアルとフォーマルの境界線が曖昧になったことで需要が高まり、多くの人から受け入れられるアイテムとなった。
シャツジャケットは、チェスターコートと同じく前身頃から袖、後ろ身頃までひと続きになったドルマンスリーブを採用。肩の縫い目をなくすことで肩の丸みによくフィットし、羽織るような軽い着心地が特徴。パンツは「生地の表情や着心地を存分に味わって欲しい」という思いから、通常のパンツにある脇と内股の縫い目を排除し、最小限のパターンで作られているという。リラックス感のあるワイドなシルエットの中にも上品さが感じられ、様々なシーンで着用できる優れものだ。























Image by FASHIONSNAP
- SHOP -
オススメの店舗は各地で開催しているポップアップショップ
ブランドが各地で定期的に開催しているポップアップショップは、実際のアイテムを試着できるだけではなく、直接デザイナーや制作チームから素材やパターンについての説明を受けることができる貴重な機会だ。また、ニューヨークを象徴する自由の女神をパタンナーが独自の解釈で製作したインスタレーション「セブン スパイクス(SEVEN SPIKES)」を展示するなど、オーバーコートの世界観を体感できる内容となっている。2021年は、12月5日まで日本各地でポップアップショップを開催予定。

2021年秋開催予定のポップアップショップ日程
- PERSON -
ブランドと関係が深い人物はNY在住クリエイターのピーター・マイルズ
オーバーコートのブランドロゴ製作者であるNY在住クリエイターのピーター・マイルズ(Peter Miles)。デザイナーとは、クリエイター同士で共鳴する部分があり交遊が始まったという。2021年春夏コレクションからは、ピーター・マイルズがデザインするファブリックを使用したコレクションラインも展開している。

ピーター・マイルズがデザインしたファブリックを使用したシャツ&パンツ
Image by OVERCOAT

Image by OVERCOAT
- COLLABORATION -
印象深いコラボレーションは東京デザインスタジオニューバランス
2020年に「東京デザインスタジオ ニューバランス(TOKYO DESIGN STUDIO New Balance)」との初めてのコラボレーションとなるカプセルコレクションを発表。クラシックなアイテムをベースに、機能性素材やパターンメイキングなどでアクセントを加えたスニーカー1型とウェア2型を製作し、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)や、ティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)、「ニューバランス(New Balance)」の公式オンラインストアなどで販売された。
コラボレーションについて「コラボレーションを通じて自分なりの視点で靴のパターンを考察し、NBのチームとともに靴の構造からデザインできたことが印象深かった」とデザイナーは振り返る。














オーバーコート × 東京デザインスタジオ ニューバランス カプセルコレクション
- 2022AW COLLECTION -
ウィンタースポーツウェアから着想を得た、2022年秋冬コレクション
「Winter Air」をテーマに制作された2022年秋冬コレクション。オーバーコートがこれまで続けてきた新たなテーラード構造の探求を作品の中で表現する姿勢はそのままに、ウィンタースポーツウェアから着想を得たコレクションとなっている。

Image by OVERCOAT

Image by OVERCOAT
- FAVORITE LOOK -
フォトグラファーの菅井健也とNYの街を歩いて撮影を行った2022年秋冬ルック
東京をベースに活動するフォトグラファーの菅井健也氏と一緒にダウンタウン・マンハッタンを歩き回り撮影した2022年秋冬のルック。ニューヨークの街にある背景や物体にオーバーコートのルックを掛け合わせながら独特の視点で切り取っている。
カフェの横に偶然かけられていた布切れと、NYの街中に無数に存在する工事現場の足場を背景に撮影されたルック。「ピーター・マイルズのプリントをあしらったベルベット地のパッファージャケットのルックが織りなす全体の構図が気に入っています」とデザイナーはコメントしている。

Image by OVERCOAT
- FAVORITE ITME -
2022年秋冬のお気に入りアイテムは、フード付きの新型シャツ
ブランドの代名詞ともなっているウール素材のシャツをベースにしたフード付きの新型シャツ。コーディネートのアクセントにもなる鮮やかなカラーで提案されており、今シーズンの中でも特に目を惹くアイテムだ。クラシックなテーラーメイドのシャツの外観にスポーティーなフードを付けたユニークさを持ちつつ、様々な着こなしが可能。シンプルなフードは、あごの下までボタンを留めることで、ドローコードを絞ったかのような外観に。デザイナーはアイテムのポイントについて「オーバーコートの定番ウールシャツよりも少し大きなサイズ感で作られているため、ウールシャツとのレイヤードスタイルも楽しめます」と話している。

Image by OVERCOAT
次のページは>>
主要年表
【2021年】
選挙運動期間中の民主党大会で初の女性副大統領となったカマラ・ハリス氏(Kamala Devi Harris)のスーツをオーバーコートのデザイナー大丸隆平が手掛ける。
【2020年】
「東京デザインスタジオ ニューバランス(TOKYO DESIGN STUDIO New Balance)」と初めてコラボレーションしたカプセルコレクションを発表。
【2018年】
2018年春夏コレクションでブランド初のシャツを発売。
【2017年】
神宮前の「グラフペーパー(Graphpaper)」にポップアップストアを出店。特別に企画・制作したオブジェクトを含むアート作品の展示も。
【2016年】
「大丸製作所2」が、日本の服作りと人材育成の新拠点として東京に「大丸製作所3」を開設。
また、2016年秋コレクションのポップアップストアを丸井今井札幌本店と伊勢丹新宿店、岩田屋本店に出店。
【2015年】
「大丸製作所2」が、オリジナルウェアの新プロジェクト「The Greatest Overcoats Project」を立ち上げる。また、伊勢丹新宿店で初のポップアップストアを伊勢丹新宿店にオープン。特殊な素材とテーラーリング技術を反映したオーバーコートを中心に販売した。