Hiroshi Ashida

【ゆるふわ東コレ日記2-3】─ファッションのアーカイブ

蘆田裕史

京都精華大学ファッションコース講師 / 批評家

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「Future Beauty:日本ファッションの未来性」展(東京都現代美術館)会場風景

おそらく誰も気づいていないとは思うのですが、1日目の日記のタイトルが記事がアップされた時と変わっています。当初は「ゆるふわ東コレ日記1日目」だったのですが、わがままを言って「ゆるふわ東コレ日記2-1」にしてもらいました。そのことに気づいた人がいたとしても、「なぜそんなところにこだわるのか」と不思議に思われたかもしれません。

研究者や学者と呼ばれる人たちが論文を書くときには、まず同じテーマを扱った先行研究を調査してそれを参考にします。そして自分が書いた文章がこの先に誰かに参照される可能性を常に考えています。つまり、テクストというものは現在においてのみ成立するものではなく、過去と未来と双方向への広がりを持つべきものなのです。

そうしたことを考えたとき、先シーズンの日記とタイトルが同じになってしまうと参照しにくくなってしまうのです。これは言い換えれば、アーカイブとしての機能が弱くなってしまうということです。

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「Future Beauty:日本ファッションの未来性」展(東京都現代美術館)会場風景

このアーカイブというものは、もちろんファッションにおいても重要です。ファインアートであれば作品の売買をするギャラリーとは別に美術館という施設があり、そこで「良い作品」と判断されたものが収集・保存されていきます。そして過去の名作を現代の私たちが容易に鑑賞することができるような環境が作られます。

翻ってファッションの場合はどうでしょうか。ファッションのアーカイブを行っている機関は神戸ファッション美術館<http://www.fashionmuseum.or.jp/>、京都服飾文化研究財団<http://www.kci.or.jp/>、島根県立石見美術館<http://www.grandtoit.jp/museum/>など国内にごくわずかしかありません。
ちなみに、神戸ファッション美術館以外の二館はあまり知名度がないかもしれませんが、東京都現代美術館(2012年)や京都国立近代美術館(2014年)で開催された「Future Beauty」展──Fashionsnap.comの読者のなかにはこの展覧会をご覧になった方も多いと思います──に出展された作品の大部分は京都服飾文化研究財団の収蔵品です。

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「Future Beauty:日本ファッションの未来性」展(東京都現代美術館)会場風景

おそらく現代のファッションデザイナーで過去のデザイナーの作品にまったく興味がないという人は稀でしょう。そして、ファッションを単なる消費財としてではなく、文化として考えるのであれば、自分の作品を「いまここ」だけでなく未来に残すこともちょっとだけ考えてもらえたら、と思います。そうした歴史の積み重ねが文化を成熟させていくはずです。

とはいえ、個々のブランドがアーカイブを行うことは資金やスペースのことを考えてもなかなか難しいのが現状でしょう。もしJFW推進機構がファッションを文化として捉えているのであれば、若手支援としてファッションショーの費用を支援するのではなく、ブランドに代わって何かしらのアーカイブを構築することを考えてもよいように思います。アーカイブというものは過去を振り返るためだけのものではなく未来へも向けられるものですから、これからの日本のファッションにとってきっと有益なものになるはずです。

【ゆるふわ東コレ日記2-1】─枠組み
【ゆるふわ東コレ日記2-2】─スタイリッシュであるということ


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