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【ゆるふわ東コレ日記5-3】── 二つのターゲット

蘆田裕史

京都精華大学ファッションコース講師 / 批評家

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 ファッションデザインがデザインの一分野であるのなら、必ず目的とターゲットの設定が必要ですが、さまざまなコレクションを見ていると、「お客さんは一体誰なんだろうか」、あるいは「お客さんはどのくらい見込めるのだろうか」と思ってしまうブランドが少なからずあります。もちろん、その設定ができているブランドもありますが、ブランドの規模を大きくしていきたいのであれば、もうひとつ考えるべきターゲットがあります。それがお店(あるいは販売員)です。

 着用者の視点に立ったとき、お客さんが「使いやすい」服の条件は着心地だったりポケットなどの実用性だったりしますが、お店にとって「使いやすい」服というのは、端的に言えば売りやすい服です。売りやすい服の条件としては、(他のブランドのアイテムとともに)ラックを容易に構成できること、商品の魅力を説明しやすいこと、たたみやすいことなどなど色々な要素が考えられます。

 おそらくほとんどのデザイナーは、自分の商品を置いてもらいたいお店をリストアップしていると思いますが、そのお店でのラックの構成のしやすさまで考えている人はどれくらいいるでしょうか。もちろん、自分の商品が他と違うものでなければ買い付けてもらうことができないので、そのブランドらしさは必要です。とはいえ、あまりに他と違いすぎても、今度はお店で浮いた存在になってしまいかねないので、そのバランスをとらなければなりません。

 また、商品を売る販売員もやはり人間なので、売りやすい服はお客さんに薦めやすくもなるでしょう。今シーズンの「ザ サカキ(the SaKaKi)」の展示会で、まさにそういった販売のことまで考えられたサンプルを見ることがあり、いたく感心してしまいました。このブランドはセミオーダーのスーツも手がけているのですが、そのパンツのサンプルのウェスト部分にアジャスター、裾裏にマジックテープがつけられていたのです(写真がなくてすみません)。デザイナーに話を聞いてみると、販売員がお客さんのサイズを見るときに、手軽に寸法を測れるようにするために、サンプルのみにアジャスターとマジックテープをつけているとのこと。たしかにそれがなくても困ることはないかもしれませんが、あると格段に売り手の作業が楽になるにちがいありません。こうしたユーザーへの気配りこそが、デザインにとって大切なことではないでしょうか。自分を主張するだけでなく相手への配慮をもつこと、それができる人がデザイナーという肩書きにふさわしいのです。

【ゆるふわ東コレ日記】
5-1──「らしさ」の表現
5-2──古着というデータベース
5-3──二つのターゲット

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