ANREALAGE 2019年春夏コレクション
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Hiroshi Ashida

【ゆるふわ東コレ日記6-3】──ファッションショーの再演性

蘆田裕史

京都精華大学ファッションコース講師 / 批評家

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 昨日の日記では、演劇作家の藤田貴大さんに触れたので、そこから話を始めましょう。

 彼が主宰する劇団「マームとジプシー」の作品では、しばしばファッションデザイナー/ブランドが衣装を手がけます。現在行われている演目『書を捨てよ町へ出よう』では、ミナペルホネンが衣装を担当しています。この作品のなかでファッションショー的なシーンがあるのですが、俳優たちが身に纏っている服がミナペルホネンのものなので、さながらミナペルホネンのファッションショーであるかのようにも見えます。ほぼ毎日公演があり──ときには1日2回──、計16回の公演があります。ということは、このファッションショー(のシーン)も当然16回行われます。会期中に2回以上の公演を鑑賞する人もいるでしょうし、さらに言えば同じ演目が2015年にも行われていたので、ファッションショーを複数回見る(見た)人はそれなりの数になるでしょう。

 さて、このまわりくどい言い方で言わんとしているのはこういうことです。『書を捨てよ町へ出よう』という作品のなかでのファッションショーは複数回の鑑賞にたえうるもの──ひとまずこれを再演性と呼んでおきます──である、と。このことはこのショーが演劇という分野の作品であることに起因していますが、映画、音楽、美術、文学などあらゆる分野の作品が再演性を持っています。好きな曲は毎日のように聴いても飽きませんし、お気に入りの映画を繰り返し見る人も少なくないでしょう。服も同じです。私たちは一着の服を幾度となく着ます。そして、着るたびに気持ちが和らいだり、テンションが上がったり、気合いが入ったりすることがあるはずです。

 それでは、ファッションショーはどうでしょうか。たとえば、あるブランドのファンがいたとして、彼/彼女が同じファッションショーを何度も見たいと思うものになっているでしょうか。そのことを意識しているデザイナーはどれくらいいるのでしょうか。今回のアンリアレイジのショーは、これまでのコレクションの集大成的なものであり、パリで発表した際に行われた演出が(そのままではないにせよ)使われていました。その意味では、アンリアレイジはファッションショーを再演性を持つものだと考えているのだと思います。

ANREALAGE 2019年春夏コレクション

 東京コレクションで発表されているファッションショーのなかで、再演性を持つファッションショーがどれだけあるか、僕には判断ができません(言葉を濁しているのではなく、同じファッションショーを2回見たことがないために判断ができないという単純な理由です)。せっかくショーをやるのであれば、どうせなら何度も見たくなるようなショーを作り上げてほしい。これはただの個人的な希望かもしれません。ですが、それくらい魅力のあるものでなければ、ファッションショーという形式のプレゼンテーションは、どんどん意味を失っていくように思われてなりません。

【批評家蘆田裕史のゆるふわ東コレ日記】
【ゆるふわ東コレ日記6-1】──ルールと価値
【ゆるふわ東コレ日記6-2】──価値の話(その2)

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