Hiroshi Ashida

【ゆるふわ東コレ日記3-4】──名前の重要性

蘆田裕史

京都精華大学ファッションコース講師 / 批評家

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 兵庫県西脇市(播州織の産地です)を拠点とするhatsutokiというブランドがあります。hatsutokiは産地で生地から生産できる強みを生かし、とりわけ薄手のコットンの生地を得意としています。このブランドがファッションウィークにあわせて展示会を行っていました。

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上のような説明をすると、「ああ、ファクトリーブランドね」と思われる方が多いかも知れませんが、厳密に言うとhatsutokiをファクトリーブランドを呼ぶことはできません。運営元の嶋田製織という会社は産元──生地の企画をし、染色工場や機屋さんに依頼して生産を行う──であり、自社工場を持っているわけではないからです。僕自身、このようなブランドを人に説明する時いつも困ってしまうのですが、それは一言で言い表す名前がないからです。

名前というものは本当に便利で、たった数文字しかないのに複雑な情報を説明することができます。逆に考えると、名前がついていないものの認識はとても難しいのです。イヌイットは雪の種類の名前を50以上も持っているとかいう話を聞いたことがある人も多いと思いますが(色々な説があるので、事実かどうかはここでは問いません)、日本語を母国語とする人は雪をそんなに分類することができません。あるいは、シャツやパンツ、スカートといった言葉がなく、「服」という言葉しか存在しなかったとしたら、それぞれのアイテムを説明するのがきわめて困難になることはたやすく想像できるでしょう。つまり、名前は認識に関わるものでもあり、コミュニケーションを容易にしてくれるショートカットでもあるのです。

hatsutokiの話に戻します。僕はこうした類のブランドがどんどん出てきてほしいと思っています。理由としては、地方でファッションに関わる仕事が増えること、良いものを安価で生産できることなど、いくつかあります。そのためにはこうしたブランドを一言で説明できるような名前を考えることが重要になってくるはずです。それをするのはブランド側だけでなく、文章を生業とする側の仕事でもあるのですが、僕にはそれがなかなかできないので誰かやってくれないかな、という話でした(他人任せですみません)。


【批評家蘆田裕史のゆるふわ東コレ日記】
【ゆるふわ東コレ日記3-1】──ファッションショーの時間性
【ゆるふわ東コレ日記3-2】──ファッションショーの時間性(その2)
【ゆるふわ東コレ日記3-3】──時間のデザイン

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