Hiroshi Ashida

【ゆるふわ東コレ日記5-1】──「らしさ」の表現

蘆田裕史

京都精華大学ファッションコース講師 / 批評家

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ファッションデザインって、さまざまなジャンルの作品と比較しても、難易度が高い部類に入りますよね。その理由は制約の多さです。たとえば絵画は矩形の支持体----紙、キャンバス、板など----を使う場合がほとんどですが、円形でも三角形でも構いませんし、グラフィティのようにその辺の壁に書くこともできます。パソコンのデザインでは、いまは横長の長方形が基本となっていますが、スマホのように縦長のパソコンというものもありえるでしょうし、技術的に可能であれば----それはそれで制約となりますが----、どんな形をしていても構いません。車なんかも同様に、人が乗って走れさえすれば成立します(もちろん、空気抵抗など考慮に入れなければならない要素は多分にありますが、乗り物として見た場合の四輪自動車とバイクの大きな違いは二つの異なる解決策だと言えるでしょう)。

ファッションデザインの場合、トップスであれば二本の腕、頭、体が通る4つの穴が必要ですし、パンツであれば二本の脚と体が通る3つの穴が必要です。さらに、歩く、走る、腕を上げる、肘を曲げるなどの日常生活に必要な----しかも関節という身体の構造的な要素に規制された----動作をこなせなければなりません。そのために、素材はやわらかく身体になめらかにフィットするものであることを求められます。

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そのようなファッションデザインにおいては、8割方は誰が作っても同じようなものになるでしょう(それゆえに素人でもある程度のものを作りやすいということでもあります)。それゆえ残りの2割でどのようにオリジナリティ、あるいはそのブランドらしさを出すことができるのかが重要になります。それは生地の場合もあるでしょうし、柄やフォルムの場合もあるでしょう。それを金具使いによって巧みにこなしているのが、今回が2シーズン目のコレクションとなる「「スエサダ(SUÉSADA)」」です。ジャケットやドレスにつけられた銅製のパーツは、それだけでアイコンとなるようなキャッチーさをもっていますし、ブルゾンやパンツにびっしりと並べられた銅製のホックも同様です(後者はまさにアメリカのファッションデザイナー、クレア・マッカーデルを想起させますが、マッカーデルもブランドらしさをわかりやすく提示していたデザイナーです)。もちろん、服自体のクオリティが高くなければ、パーツによって人目を引いたとしても一発屋で終わるでしょうし、土台がきちんと作られていてこそであることは言わずもがなです。蛇足ながら付け加えておくと、おそらく多くの人が----僕自身もそうだったのですが----写真を見ると「着にくそう」とか「痛そう」とかいった印象を持つように思われますが、実際に袖を通してみると銅製のパーツが着用時に気にならないように仕上がっていることもいい意味での驚きを与えてくれます。

ファッションデザインの世界では、世界中で行われている仮装大賞的なコンテストのせいか、若手のデザイナーが過剰性をもって「らしさ」を表現することが少なくありません。しかしながら、こうしたスマートな、そして品のある見せ方がもっと増えてほしいと個人的には思います。その方がブランドもデザイナーも長生きすることができるはずです。カレーでもピザでも「全部盛り」なんて一時のネタにしかならないのですから。

>>SUÉSADA2018年春夏コレクション

【ゆるふわ東コレ日記】
5-1──「らしさ」の表現
5-2──古着というデータベース
5-3──二つのターゲット

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