Jenny Fax 2019-20年秋冬コレクション

Mariko Nishitani

Jenny Faxは不幸を抱えている日本の女の子たちの気持ちを訴えている? -違和感が新しい? vol.1-

西谷真理子

ファッションエディター

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Jenny Fax 2019-20年秋冬コレクション

 今月末発売の雑誌「装苑」で、20年ぶりに編集に参加する機会を得た。テーマは、アンバランス・ファッションの背景を探るというもので、2014,5年あたりからヴェトモン登場を機に起こった動きが世界に飛び火し、「アンバランスなファッション」として、ノームコア的ファストファッション的なミニマリズムに取って代わるのでは、という発想から装苑では特集を組み、私はその解説ページを担当した。

 アンバランスなファッションと言えば、日本の90年代は、まさにその宝庫で、コム・デ・ギャルソンを筆頭に、さまざまなアヴァンギャルドでエクセントリックなブランドが登場したし、街を歩く若者たちも自作自演よろしく、ヘアスタイルから足元までこれでもか、と独創的な服をまとっていたものだ。
しかし、今回のアンバランスの背後にあるのは、そんな自己顕示的な「変な/目立つ」格好とは少し違う。世の中のアンバランスへの怒りをファッションという手段で表現した、というと言い過ぎだろうか。ファッションの持つポテンシャルの高さを、取材を通して、私は改めて感じることができたのだが。
政治問題や社会問題がファッションに結びつくことが珍しくない欧米の現象も、日本に来るとデトックスされて単なるファッション=流行になってしまうことが少なくないが、日本のクリエーションの現場で何か動きはないか、ファッションウィークを通して探ってみようと思うのだ。

 1日目の3月18日(月)の圧巻はJenny Faxだろう。資料はなし。カードで届いたインビテーションには「I want to drink shochu in the park alone,」とだけ書かれている。「公園で一人で(自由気ままに)焼酎を飲みてえ」なのか「公園で一人っきりで(寂しく)焼酎を飲みたい」なのかはわからないが、そんな女子の気分が、多分テーマだ。

Jenny Fax 2019-20年秋冬コレクション

ショーに現れた少女たちは、みな異様に髪が長く、不幸な顔をしている。着ているものは、なんとも変だ。


Jenny Fax 2019-20年秋冬コレクション

ずり落ちて下のパンツが見えたスカート。たたんだ羽をまとったようなケープ。襟が拡大して一つの服になったアイテム。名づけられない服がいくつも登場する。

Jenny Fax 2019-20年秋冬コレクション
Jenny Fax 2019-20年秋冬コレクション

「かわいい」も「ダサい」もない、違和感をもたらすコレクションだが、ボーダーのタイツと斬新なサンダルが、全体を引き締め、モデルたちの表情も含めて、非常に強い印象を残した。最後は、ウェディングマーチが鳴り響く中のアンハッピーなフィナーレだった。

Jenny Fax 2019-20年秋冬コレクション

 日本にいると、経済格差や東京と地方との格差、男女差別、LGBT、外国人労働者問題、高齢者問題などたくさん社会問題はあるのに、それがファッションのテーマになることはほとんどなかった。そういう意味で、JennyFaxは、ハッピーに見えて実は不幸を抱えている日本の女の子たちの気持ちを訴えているのかもしれない。今回もスタイリングはヴェトモンでスタイリングを担当しているロッタ・ヴォルゴヴァだったことも、世界のアンバランスな状況とつながった要因かもしれない。

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西谷真理子

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