PERMINUTE 2019-20秋冬コレクション

Yoshiko Kurata

社会批評の一つの切り口としてのファッションデザイン、「パーミニット」が表現するもの

Yoshiko Kurata

ファッションジャーナリスト/コーディネーター

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PERMINUTE 2019-20秋冬コレクション

 ファッションのトレンドは表面に見える氷山の一角にしか過ぎず、その水面下にはファッションデザイナーからいまの社会に対しての何か批評をデザインを通して投じていることも忘れてはならない。(といってコンセプチュアルに寄りすぎてもファッションブランドは成り立たない)

 VogueのSarah Mowerの言葉を借りれば「10年ごとの時代の姿と精神は期間の半ばに出来上がってくる」という。2010年から2020年にかけて中間地点に位置する2015年は、間違いなく近年のファッションシーンの節目に筆頭するだろう。GUCCIの新デザイナー/アレッサンドロ・ミケーレ、VETEMENTSデザイナー/デムナ・ヴァザリアの登場、彼らよりも2年程前にメンズウェアに衝撃をもたらしたJ.W.アンダーソンのLOEWEへのクリエイティブディレクター就任を筆頭にしたハイブランドが若手デザイナーを起用するニュースなど、めまぐるしい変化が一斉に巻き起こった。
今では当たり前となった「中性的」なファッションスタイルは、エディ・スリマンがかつて表現した中性的とは異なり、その2015年の節目に登場した若手デザイナーたちが生み出したものだった。そしてそのスタイルが一過性のものではなく、今でも形態を変容させながらも影響を与え続けているのは、社会的な背景が寄り添っているからだ。(2015年当時であれば、ジェンダー・ニュートラルなど性別に関する議論が盛んになっていた時代)

 冒頭で述べたSarah Mowerの予言を信じれば、来年には次の時代の姿と精神が出来上がっている。その一歩前まできている2019年、期間の半ばにうねりを起こしたデザイナーたちは、ニュートラルを超えた近未来の姿を創造しはじめている。
「アナログ VS デジタル」という二項対立も、デジタルによるファッションショーの死滅もすでに過去の恐怖となり、現代を生きる私たちが想像する近未来は、ネットやテクノロジーの進化とともに10年前に想像していたものとは遥かに異なる。例えば、GUCCI 18A/Wのショーでは、ダナ ハラウェイの「猿と女とサイボーグ」をインスピレーションに、「グッチサイボーグ」という呼び名で三つ目や自分の生首を片手にしたモデルなどとともにポストヒューマン時代に突入したことを謳った。今年初めに出版された「ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち」から半年後に発表されたVETEMENTS 2019A/Wでは、ダークウェブに生きる人々について着目した。さらにエンターテイメントに富んだプレゼンテーションを行ったXander Zhou 19A/W は、イエティから奇形の人間らしきものなど時空を跨いだ様々な生き物が登場した。それ以外にも色々と例を挙げるとキリがないが、2020年に向けて社会背景をもとに創造されるファッションは、「ポストヒューマン」「過去に創造した未来のその先」をあらわし始めている。

 いま挙げたように多種多様な切り口で、ファッションデザイナーがこの1つの社会的なトピックに対して表現を放り込む中、東京ファッションウィークではこの議論に紐づけられるブランドはいるだろうか、と週の半ばにして考えていた。そこに現れたのが、PERMINUTEだった。

PERMINUTE 2019-20秋冬コレクション

 デザイナーのルーツを探ると、地学教員の父親のもと育った幼少期の体験から自然や未知のものに対しての好奇心を理解することができる。そのルーツをもとに、19A/W コレクションでは、デザイナーが小学生の頃に夢中になったドゥーガル・ディクソン著作の書籍2冊 ー 複数の科学者による見解に基づいて予想する未来の地球を描いた「The Future is Wild」 と 5000万年後の地球の生態系を想像した「man after man」から着想得ている。
先ほど例を挙げた通り、私たち人間はまだネットも追いつかない見たことも触れたこともない世界に興奮を覚えるのは、ファッションに限らずアートでもサイエンスの場においても起きていることだ。2020年に近づくいま世界中で創造が膨らむそのお題に対して、デザイナーはショーの演出やビジュアルではなく、ユニークにも、インビテーションにあるフォント制作をコレクションのスタート地点とした。
現実世界において、祭りや歌、建物など様々なかたちから特定の土地についての研究が行われるのと同じで、その土地性を語る一つにある文字や記号にまだ見ぬ世界への土着性を想像した。日本古来の文学や歴史上の人物に、時空を超えて親しみを感じる感覚は、PERMINUTEのこれまでのショーでも感じた独特の懐かしさとも繋がっているように思う。

PERMINUTE 2019-20秋冬コレクション
PERMINUTE 2019-20秋冬コレクション

 「美しいものこそ善、醜いものは悪」というステレオタイプが打ち破られた2010年代において、ヨーロッパでは古来に排除された「変身譚」「醜いものへのネガティブ意識」のルーツをもとに、冒頭で述べたGUCCIやVETEMENTSなどのコレクションが発表されたように思う。その一方、PERMINUTEは、まだ遭遇したことがない世界を一辺倒にファンタジーの世界に昇華せず、身体的に掴む時代の流れに顕微鏡を覗くように拡大/縮小 と 共時的/通時的 を繰り返しながらも独自のストロークを描きはじめた。

【Yoshiko Kurataの東コレポスト】
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