BALMUNG 19-20年秋冬コレクション

Yoshiko Kurata

ファッションにおける付加価値とは?日本特異の美意識が潜む「バルムング」のクリエイション

Yoshiko Kurata

ファッションジャーナリスト/コーディネーター

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BALMUNG 19-20年秋冬コレクション

 ファッションにおける「価値」と「価格」の関係性について現在某媒体で執筆中だが、ファッション以外の分野に現実的にかかるコスト以上に、ファッション特有の「付加価値」がもたらす「価値」と「価格」の変容を説明すればするほど、ファッションが纏うその抽象に対して少しの懐疑とその曖昧さで時代の基準が決まることへの面白さを改めて感じている。

 80~90年代に狂乱する装飾の贅沢にアンチテーゼを訴えられ、2000年代に関しては物の過剰な豊かさに対してアンチテーゼがバックグラウンドの異なるデザイナーたちによって議論されている。こと、ヨーロッパを舞台にコレクション発表するブランドであれば彼らの社会的システムとファッションのヒエラルキーを掛け合わせた「階級」に纏わるテーマを併せ持ち、Demna Gvasalia、Virgil Abloh、Kiko Kostadinov、A COLD-WALLなどが多種多様に意見をぶつけ合う。彼らの考えているコンセプトをファンたちは分かって洋服を買っているのかは定かだが、ラグジュアリーからストリートまでを受け入れる許容は広がっていく一方だ。もはや、何を基準として人々は高額の服を買いたいがるのかが一言では言い表せないのではないだろうか。

 そのようにファッションは今やどのような表現でも受け止められることのできる時代であり、それを新しい理想郷としていることに対して「NEWTOPIA」と題したのが、BALMUNG 19A/Wだ。
自国のカルチャーと密接に関わり東京という都市に様々な見立てを提示してきたブランド。一般的にカルチャー(文化)というのは、遊牧民から定住民に変わってからその土壌に居ることで発展していった人間の暇を持て余す物の一つとされ、その呼吸する場とも密接に関わる。場が盛り上がれば、その土壌にあるカルチャーも一緒に発展していき、熱狂により焼け畑となればそのカルチャーも自然と限界を迎える。(「定住民」という言葉から現実的な場所として捉えてしまいそうだが、これはネットでの「場」でも言えることだ)現在ファッションのメインストリームに君臨する「ストリートファッション」もその妖しいベールとして「グラフィティ」「ヒップホップ」などと言ったカルチャーを纏っている。逆説的に言えば、土壌に根付いたカルチャーが発生するということは、そこに人々が集まり相互作用としてコミュニティの形成も必然的に起きているというわけだ。

BALMUNG 19-20年秋冬コレクション
BALMUNG 19-20年秋冬コレクション

 BALMUNGは、その服が媒体として様々なバックグラウンドのひとが介入し、そこに新たなコミュニティを生み出す ー まさにユートピアをもたらす。そしてなにかに対する強いアンチテーゼというよりも、場に現れ始めた現象を言葉遊びのように解釈するBALMUNGのクリエーションの矛先には、常に日本の特異的な美意識が潜んでいる。2014年に発表した「Tokyo Trash Utopia」は、東京の街にごちゃ混ぜに集積される混沌と安心、そしてそれらを人々が消費していく奇形のカルチャーについて描いた。18A/Wのシーズンからは一貫して「ぼろ」をテーマに服のテクスチャやパターンを質素なものに美しさを感じる日本独特の美意識を落とし込んでいる。シワ加工や洗いでブリーチされた質感に「風化」をうつしだし、デニム素材のビッグパーカーにその年月を経てバラバラになった記憶を寄せ集めたかのようなイメージを創造する。その姿は、まるで西洋や欧米だけをリファレンスする時代を終え、アメカジを日本流に輸入した「裏原」が時を経て西洋や欧米によって再解釈されるような国も歴史、時も超えて断片を集積(リフォレンス)し、創造するファッションの新時代の景色とも重ねられるように感じる。

 外来文化を妙なバランスで受け入れ、それら混沌とした継ぎ接ぎ全てを一つとしてパッケージしてしまうその東京の街並み。その奇形帯びたリミックスは、オリジナルもシミュラークルもすべてを断片的につなぎ合わせていくネット以降のいまファッションで映し出されている景色 ー 新しい理想郷 の景色 と似ているのではないだろうか。

【Yoshiko Kurataの東コレポスト】
ジェニーファックスとコトハヨコザワが魅せる、新しい女性像
社会批評の一つの切り口としてのファッションデザイン、「パーミニット」が表現するもの

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