bodysong. 20年春夏コレクション
Image by: Image by: FASHIONSNAP.COM(Ippei Saito)

Yoshiko Kurata

古着文化の再考、ボディソングとバルムングがみせた"新たなかたち"

Yoshiko Kurata

ファッションジャーナリスト/コーディネーター

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bodysong. 20年春夏コレクション
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まだ「古着を着る」という文化が浸透していない中国で、上海のファッションキッズたちが集まるクラブ・ALLで珍しく初めて古着を着ている男の子に遭遇した。彼がオーナーを務める古着屋の名前は「DigitalUtopia」。以前、中国人デザイナーに古着に対する考えを聞いたところ、まだ親の世代には"見知らぬ人からの洋服 = 気持ち悪いもの"として受け取られると言っていたことを思い出しながらも、若い彼が古着屋の名前として「DigitalUtopia」を付けたことは、2015年代以降の価値観として相応しいように感じた。

そもそも日本人の私たちが古着をファッションとして取り入れるようになったのは、江戸時代から続く1枚の着物を穴があいてもお直しを重ね、つぎはぎにしても大事に1着を着続け、さらに使い物にならない形になったとて捨てずに座布団や子供服にリメイクを行う習慣に由来している。(これは今ファッション業界が虜になっている「サステナブル」とも言えるかもしれないが、その考え方は"手法"までで止まり、クリエイションの深層にまで取り込むデザイナーはまだ少ない。)このような日本古来/現代の古着文化への概念にも通ずるかのように、異なるものや"古い"とされいるものをスクラップして新しいかたちとしてつくりあげていたのは、bodysong.、BALMUNGである。

bodysong. 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSNAP.COM(Ippei Saito)
bodysong. 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSNAP.COM(Ippei Saito)

ランウェイから見え隠れするバンド「ずっと真夜中でいいのに。」の姿と日常にあるものの音- 紙の破ける音、電子レンジを叩く音や声 - 全てを共存させる彼らの音楽は、まるで匿名性を保つbodysong.のデザイナーの姿と隠しきれないデザイナーの手癖である"即興性"を表すかのようだった。デザイナーからの言葉の代わりに、と渡された写真集はbodysong.のシグニチャーでもある「B」がフランスの街を点々と旅する姿を写し出し、それぞれの瞬間をリフレクションしている。その写真集を一通り見終えて、ふと19S/Sのルックでも東京の街並みをスクラップした背景を用いていたことを思い出したが、"東京"や"フランス"、"街並み"など特定の言葉に引っ張られデザイナーの思想を紐解き始めるのは的外れだとすぐに我に返る。今回もはっきりした正体をあらわにしないものの、こちらの感情を動かすテコになっているのは、まさに鏡でできた「B」が周りで変化する空気や動きに囲まれ、消え去るわけでもなく何かそこに輪郭とノイズを残していく姿であるように感じた。それはこれまで「bodysong.」というブランドのかたちをスタイリストやアートディレクターたちと一緒に描いてきたデザイナーの姿にも投影でき、たとえば「B」の代わりにbodysong.の服を纏った人が街に立っていても同じ感覚を感じ取るだろうとランウェイを歩くモデルを見ながら想像していた。デニム、ニット、シャツ、「Yes. I'm very tired now」のグラフィックなど様々な異なるノイズをレイヤー上に積み重ね、勢いを増す音楽とともに間髪入れずに飛び出す「B」は、身体と様々な景色の間に服としての音を鳴らすbodysong.の象徴として最後ショー会場全体をリフレクトしながら過ぎ去っていった。

BALMUNG 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSNAP.COM
BALMUNG 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSNAP.COM

会場に入って目に飛び込んできたスーパーファミコン、履き潰したコンバース、PIKO、塾バックなどのピースたち。どこか野暮ったいそれらのピースは、コンクリートに固められ、ひ弱な植物とボロボロになった襖が整然と立ち並び、下に敷いてあった写真はおそらくBALMUNGのデザイナー・八の故郷なのだろうという勘はすぐに働いた。デザイナー自身の生まれ年である「1985」をコレクションテーマに掲げ、会場ではデザイナーが故郷の地を踏みしめながら昔の記憶の断片を想いおこすさまを可視化していた。デザイナー自身そして誰しもが昔持っていたジャージ、ボストンバッグやタンクトップスタイルなどを連想させる服を纏ったモデルがその風化してしまっている静 - 記憶 - に動 - 蠢き- を与えていく。BALMUNG初期のアイコンであった"灰色"や"ビッグシルエット"という印象は、良い意味で前面に出ることなく、「HOMETOWN」と「POLYESTER IS FUTURE」というグラフィックが何度も目の前を通り過ぎると同時に、これまでのブランドのシグニチャーであるビッグパーカーに使われてきたポリエステル - ジャージやスウェット素材 - を思い返していた。それらは普段学校の体操着やコンビニに行くまでの日常着として用いられる素材であり、本来は懐かしさ/田舎ぽさを感じるものだと気付かされる。シルエットに残されたそのBALMUNGと素材への懐かしさは、最後に登場したビッグシルエットという輪郭とともに脆くキラキラと輝く残像によって近未来へと接続される。(たとえば西洋ファッションの取り入れ方に置き換えてみると、近年のアイコニックなデザイナーたちによって打ち出されたダッドシューズや日常の中のユニフォームの感覚に近いものだろう。)

トレンドサイクルが早まる中、オリジナリティとは次第に90年代も20年代も現代もすべてスクラップしたバグのようなものになるのかもしれない。"古いもの"や日常の記憶の連続性を新しいものへ昇華する行為と、2000年代初頭に古着文化を身体的に感じてきた彼らのファッションへの意識が無意識的にここでつながったように感じた。

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【Yoshiko Kurataの東コレポスト】
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