HYKE 20年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP.COM(Koji Hirano)

Mariko Nishitani

「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.1-

西谷真理子

ファッションエディター

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HYKE 20年春夏コレクション
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私は決してことさらにフェミニズムを唱えるものではないが、少女時代から男女差別にはとても敏感だった。長い間ファッション雑誌の編集に携わったが、在籍した文化出版局で何が良かったかというと、女性の職員が多く、編集作業上、男女差別や男尊女卑という事態に遭遇せずに伸び伸びと働けたことだ。90年代末の「装苑」では、97年に改正された男女雇用機会均等法をきっかけにボーダレスファッションの特集を組んだりした。そんなわけだから、2000年前後に、「モテ服」というコピーが女性ファッション誌に現れたときには、その無神経ぶりに唖然とした。しかもこの安易なキャッチコピーは感染力が強く、あれよあれよという間に、日本中に広まった。まさに悪貨は良貨を駆逐すると言わんばかりに。

21世紀に入っても事態は変わらず。そんな時に、来日した欧米のファッションデザイナーたち(男性が多かった)が、インタビューの際に、「東京のファッションはメンズはとてもいいけど、ウイメンズはイマイチだね。スタイルが見えない」とコメントする場に何度も遭遇し、「やっぱりね!」と内心思ったものだった。トラッドを掘り下げて、東京らしいスタイルを追求するメンズファッションに比べて、ウィメンズ(レディースと呼びたくないのです)は、トレンドに振り回され、しかもモテることが目的のファッションからは自立した個性など生まれようもなく、迷走しているように見えたものだ。せっかくデザイナーたちが強い女性や大人の女性のためのファッションを発表しても、購入する女性たちの意識がそのメッセージをうまく受け取れない、という不幸な状態が長らくファッションの世界を支配していた気がする。

それが昨日(10月15日)は、1日気分が良かった。

まず取り上げるのは、パルコが支援する3つのブランドNON TOKYO、BODYSONG.、BALMUNG。3つとも(NON TOKYOは、Banal Chic Bizarre(バナルシックビザール)時代から)以前から活動は見てきたが、久しぶりにショーを見て、特にBODYSONG.とBALMUNGはかつてのエクセントリックで着る人を限定する作風が、広くファッション好きに届くだろうと思われた。そして強調したいのは、かつて彼らの服を愛好するのは圧倒的に男性だったと思うのだが、今回は女性が着ることで新しい段階に上がったことだ。これはモデルの選び方やスタイリング、ヘアメークにもよるのかもしれないが、3ブランドとも、女の子たちが凛々しく、頼もしかった。

NON TOKYO 20年春夏コレクション
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bodysong. 20年春夏コレクション
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BALMUNG 20年春夏コレクション
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この3ブランドに共通することだが、色彩がグレー系の地味な色調だったことと、スニーカーの存在感だ。特にスニーカーがファッションの大きな部分を占めることで、女の子たちは堂々と、大股で歩くことができる。これは今シーズン、続けて観察していきたい。

それから、最後になってしまったが、忘れられないのは冒頭に写真を載せたHYKEだ。言うまでもなく、東京を代表するブランドの一つであるが、HYKEは、基本がアーミーや制服などのメンズスタイル。それを女性の服装にすることに深くリサーチし、本気で注力してきたブランドである。今回は黒縁メガネを多くのモデルが着用したが、スタイルは全体にフェミニンになっている。greenからHYKEに名前を改めて最初のコレクションで、ストイックなほど女性性を消していたが、今回は、ドレッシーな雰囲気が出てきた。これは、最初の3ブランドのストリートを感じさせるものとはまた違う、毅然とした女性たちのファッションである。

そんなわけで、昨日は気分がとても良かったのである。

■HYKE:2020年春夏コレクション全ルック
■ファッションウィークの最新情報:特設サイト

【ファッションエディター西谷真理子の東コレポスト】
「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.2-
「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.3- mercibeaucoup,の新しい挑戦
「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.4- モテ服から遠く。東京の実験精神。

西谷真理子

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