mercibeaucoup, 20年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP.COM

Mariko Nishitani

「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.3- mercibeaucoup,の新しい挑戦

西谷真理子

ファッションエディター

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宇津木えりのmercibeaucoup,が昨日(10/16)久しぶりにショーをしたのでその話を。と言いつつ、中心は宇津木えりの話にしたい。なにしろ、ショーといっても、今回のは「トランクショー」というスモールサイズのショーだったので、登場した服だけを頼りにコレクションレビューを書くのはさすがに難しい。コレクションのテーマは「山」だそうで、それは、プリントのモチーフに富士山を含む山が使われていることと、シルエットに山の形が多いということ、それから「新しく、挑戦していく、その気持ちをこめました」とプレス資料には書かれている。「新しい挑戦」とはなんのことだろう?

ファッションデザイナーたちは半年ごとに(ブランドによってはもっと頻繁に)、前作をリセットして新作に向かう。「新しい挑戦」は、彼らにとって年中行事みたいなもの、と言えなくもない。でも、メルシーボークーがここで強調する「新しい挑戦」とはきっと違う意味だろう。

メルシーボークーのサイトを見ると、philosophyとして、「清く、楽しく、美しく。」という標語のもと、「きちんとしているけど、ちょっと笑える。主張はあるけど、気取っていない。そんな、庶民的で、遊び感のある、ちょっときれいな服をつくりました。」と書かれている。サイトには、「メルスタ」(メルシースタンダード)、「ふわスカ」(独特のパターンのふわふわしたフォルムのスカート)始め、省略形のメルシー・ワードがあちこちに散りばめられている。

mercibeaucoup, 20年春夏コレクション

そして今回のコレクションを眺めると、これまでの自由自在のユニセックスでモコモコしたシルエットが大きくトラディショナルな方向に修正されているのが見えてくる。これが新しい挑戦なのだと思われる。笑えたり、庶民的だったりする方向は少し抑えて、きれいで主張のある作品集。そこで効き目を発揮しているのが、またもや存在感のあるスニーカーだと言いたい。MIZUNOとのコラボレーションも含めたオリジナルのスニーカーがスタイリングに今っぽさを加えている。

宇津木えりは、ファッション業界の中でも数少ない、ユーモアを忘れないデザイナーだと私は思う。チーフデザイナーとして最初に始めたブランド名が(今や誰も語らなくなったが)自身の名前をもじったFrapbois(frapper=打つ、bois=木というフランス語を組み合わせた造語)だったり、A-netに戻って、新規に始めたのがmercibeaucoup,(最後のカンマが重要)だが、特にスタート時のショーは毎回アイディアを凝らし、スケール感の大きい、印象深いものだった。笑えるショーも数多く、企業内デザイナーとして、こんなに伸び伸びと仕事をしてきた人がいる、ということは、忘れてはならないことだろう。今回の「新しい挑戦」が会社の意向なのか、宇津木自身の意思なのかはわからないが、どちらであるにせよ、ぜひ宇津木さんには、東京の女性のための新しいスタンダードを構築していただきたい。

メルシーのサイトをクスクス笑いながら見ていて、思い至ったことがある。「モテ服」というのも、ある意味ユーモラスな造語なのかも。「セクシー」としたいところを、編集長から横文字を使うなと言われた編集者が、苦肉の策で思いついた言葉なのかも。そう思うと、長年の怒りも少し鎮まった。いや、今後も私は決して使わないが。そしてメルシーボークーも決して使わないと思うヨ。

>>mercibeaucoup, 20年春夏コレクション
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【ファッションエディター西谷真理子の東コレポスト】
「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.1-
「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.2- マメとマラミュート
「モテ服」からの脱却――東京ウーマンが見えてきた。-vol.4- モテ服から遠く。東京の実験精神。

西谷真理子

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