Nobuyuki Hayashi

デザインとアートのはなし ― 羽田空港で68個のホーンが"日本語の音"を奏でる「Crowd Cloud」

林信行

ジャーナリスト/コンサルタント

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 羽田空港第2ターミナルの、まだ一度もオープンしていない国際線搭乗エリアに68個のホーンが置かれている。そこで奏でられているのは、海外からの訪問者の耳に聞こえる意味をなさない日本語の音。

Paola Antonelli curated art exhibition started in Haneda airport (+Narita airport); it showcases diverse visions of Japanese culture through the work of eight uprising Japanese artists. The “Crowd Cloud” by Yuri Suzuki and Miyu Hosoi materializes the sound of how the Japanese airports into 68 horns would sound to first time visitor of the country.

Vision Gate at Terminal 2 Haneda Airport (HND)
羽田空港第2ターミナル
9月まで

 アートキュレーターとして世界的に有名なパオラ・アントネッリ。彼女のキュレーションによるアート展示が3月から羽田と成田の2つの空港で始まった。日本文化に通底する過去から未来へと続く「VISION」を示した「Vision Gate」という展示で、8組の日本のクリエイターが選ばれている。

 展示場所の1つは、昨年完成したものの、実はまだ一度も使われていない羽田空港第2ターミナルの国際線搭乗ゲート。現在はシャッターが降りているその場所に、スズキユウリと細井美裕による「Crowd Cloud」と言う作品が飾られている。

 細井が日本語の50音に「ぎゃ、ぎゅ、ぎょ」など日本語を構成する音を自ら2オクターブ分発声、それを合計約7000個の音声ファイルにして、独自アルゴリズムで再生する音の作品。そこにスズキユウリが68個のホーンという美しい形を与えた(スズキユウリは、世界最大のインディペンデントデザインコンサルタンシーPentagramの共同経営者で多数のパブリックアートを手がけている)。海外の空港を訪れると、どこの国でも、その国ならではの音の風景(サウンドスケープ)がある。その国の言葉によって奏でられる音だ。「Crowd Cloud」は、まさに日本を訪れた訪日外国人の耳に聞こえる日本語の音の再現を目指したという。単語を発しているわけではなく意味を成していないので、日本人が聞いても外国人の耳に聞こえる日本語の音を楽しめる。

 アントネッリが選んだ、そのほか6組のアーティストと作品は、acky bright/作品名 「テーマパーク東京」、井上純/一勝負、児玉幸子/重力の庭、PARTY/TSUGI、茂木モニカ/満月の日、そして日本の創世神話にまつわる『古事記』の場面を題材にした森万里子/Kojiki – Amenomanai。これら6作品は、羽田空港内のコンコース、動く歩道から楽しめるように短い映像作品としてまとめられ、成田空港のデジタルサイネージでも時折、表示される予定だ。

羽田空港コンコース photo by Kyosyu
羽田空港コンコース photo by Kyosyu

 ちなみに「Vision Gate」は、日本全国の7つの空港に東京国際クルーズターミナルを合わせた計8拠点で展開中の文化庁による新たな文化発信プロジェクト「CULTURE GATE to JAPAN」の一部となっている。「東京国際クルーズターミナル」は、昨年9月に中央区晴海にオープンした東京の海の玄関口で、ライゾマティクスの斉藤清一をディレクターに6組のアーティストが作品を展示。関西空港は、少し遅れてのスタートで参加アーティストなどの情報は、まだ発表されていない。

 その他、4空港での参加アーティストとモチーフは以下の通り:
・新千歳空港/NAKED, INC.(ネイキッド):アイヌ文化がモチーフ
・中部国際空港/重田佑介・ユーフラテス:忍者がモチーフ
・福岡空港/水江未来 ・村山誠:有田焼や薩摩焼、博多織などの「文様」がモチーフ
・那覇空港/ぬQ・比嘉了:琉球王国の記憶がモチーフ

 コロナ禍は続いているが、安全に配慮した形での空の旅は徐々に増えつつある。今後、参加空港を訪れる際には、日本を代表するクリエイターたちが手掛けた、その土地の文化に触れる作品も探して見て欲しい。CULTURE GATE to JAPANの展示は、いずれの拠点でも今年9月頃まで行われている予定だ。

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