日本上陸20周年を迎えるベルギー発のチョコレートブランド「ピエールマルコリーニ」が、今年の10月に日本法人を設立した。株式会社Pierre Marcolini Japanとなり、これまで以上に日本市場での期待が高まる同社の代表取締役を務めるのは、数々のラグジュアリーブランドで経験を積んでこられた蒲田考一氏だ。今回は、蒲田氏と同じ静岡県浜松市出身であり、ファッション業界在籍時から親交のあるエーバルーンコンサルティングのヴァイスプレジデント北川加奈氏が、これまでのキャリアで得た学びについて、そしてPierre Marcolini Japanのこれからについてお話を伺った。
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蒲田 考一さん/株式会社Pierre Marcolini Japan代表取締役
静岡県浜松市出身。幼少期をベルギー・ブリュッセルで過ごす。1991年に新卒でルイ・ヴィトンジャパンに入社。販売、ストアマネージャー、営業、ECマネージャーなどを経験。その後、ドルチェ&ガッバーナ、マックスマーラにて営業ディレクターを努め、2016年にゴディバ ジャパン入社。ラグジュアリーブランドでの経験を活かしブランドの拡大に貢献する。2020年にピエール マルコリーニに入社し、2021年1月に日本法人のPierre Marcolini Japan株式会社を立ち上げ、同社の代表取締役を務める。※2021年10月に株式会社Pierre Marcolini Japanへ商号変更
北川 加奈さん/エーバルーンコンサルティング株式会社 ヴァイスプレジデント
静岡県浜松市出身。大学卒業後イギリスへ留学。帰国後は地元の静岡にて塾講師として勤務。2008年にウォールストリートアソシエイツ(現エンワールド)入社のため上京。2017年にAllegis Group Japanに入社、ASTON CARTER プリンシパルコンサルタントとして勤務。2021年1月にエーバルーンコンサルティング入社。
Pierre Marcolini Japanを立ち上げるまで
―日本上陸20周年を迎えた「ピエール マルコリーニ」にさらなる可能性を感じて、今年、日本法人を立ち上げた蒲田さん。どんなところに可能性を感じていますか?
バレンタインやクリスマスはもちろん、あらゆるセレブレートの機会におすすめできる商品を“通年”そろえているブランドというのは意外と少ないです。また、我々のようなコンセプチュアルブランドというのは、ブランドを象徴するクリエイターがきちんといるということが非常に大事だと思っていて。「ピエール マルコリーニ」にピエール・マルコリーニ氏がいることは、ブランドにとって大きな強みです。これまでの20年間、代理店が丁寧にブランドを広げてきてくれてきたことにとても感謝しています。だからこそ、これからの成長の可能性を大きく感じています。例えばまだ店舗が少ないですから、店舗を増やすなどのチャレンジもできますし、色んなことがこれから変えられる点に可能性が詰まっています。具体的なチャレンジができる環境に今、とてもわくわくしています。
―今回日本法人をつくった理由はそこにあるのですか?
代理店の独占販売権が最終年度を迎えるタイミングであったことが大きな理由の一つです。あとは日本のマーケットというのはグローバルで見ても非常に高いので、そこを広げていくためにも日本法人をつくるべきだという結論に至りました。最初、私は本国オフィスに席を置き、そこで一から日本法人をつくる準備をしました。
ジャパンをどのような組織形態にするかを考えて、そこからいざ採用をはじめようと、北川さんのいるエーバルーン コンサルティング(以下、エーバルーン)にご相談したんですよね。実際に代表の池松さんにお話を聞いていただき「そういうことでしたら、エーバルーンがPierre Marcolini Japanの組織をすべてつくる想いでサポートします!」というありがたい声をいただけた。実際にPierre Marcolini Japanの人材はすべてエーバルーンさん経由で採用させていただきました。
―代表の池松も私も、蒲田さんご自身を「応援したい!」という気持ちが大きかったんです。蒲田さんとは各ブランド時代にそれぞれ接点がありましたし、「あの蒲田さんが社長に?!」と、純粋にサポートしたいという想いからでした。
サポートいただき本当に助かりました。日本法人を立ち上げるという、あらゆるプロセスがはじめてのことでしたので、エーバルーンさんが集めてくれた人材のおかげで、かなりスムーズに実現まで持ってくることができました。特にファイナンス分野では、外部コンサルタントとしてGG Japan金沢さんをご紹介していただき、大変感謝しております。
―ようやく日本法人ができたタイミングかと思いますが、今後の組織構築や採用戦略はどのように考えていますか?
今はちょうどPMI(M&Aの統合プロセス※12月現在)の過程中で、組織をいい形にすることと、ビジネスをより高い軌道に乗せるための準備をしている段階です。そこで出た過不足を、これからの新しい採用で補っていくつもりです。軸としては、スタートアップなのでそのスタートアップにフィットする人柄というのが一番で、学歴やキャリアよりもカルチャーフィットする人を求めています。
―ピエール マルコリーニ ジャパンのカルチャーとは?
例えば「私の領域はここからここまでです」と割り切ってしまう人ではなく、自分の仕事の範囲を越えてサポートしあう気持ちがあったり、行動に移せたりする人。機動力があって、協調性があって、小さなことにへこたれない。極度なタフネスは必要ないですが、なにより“前向き”に働いてくれる人が必要です。これからさらに必要なポジションが明確になってくるので、また良い人材に巡り会えることを期待しています。
ジャパン社長が見る「ピエール マルコリーニ」の可能性
―目下の目標とは?
まずはバレンタインを成功させる。それに150%注力する。そこを越えたら、次に控える様々なアクティビティに着手したいと考えています。実際に日本のお客様に「変わった」と感じていただくまでにはもう少し時間はかかりますが、これからの新しい取り組みを楽しみにしていただきたいです。プロモーションやパッケージ、キャンペーンを含め、さまざまな変化を各メディアで感じていただけるようになると思うので、それがお客様にとって新鮮なメッセージになればうれしいです。
―実は私、銀座本店が20年前にオープンした時に地元浜松から買いに来たんですよ。お店の前もすごい行列で、憧れのブランドだったので待つことは気にならなかったですけどね。そんなブランドに蒲田さんが入られたのは、なんだかすごくうれしいです。
それはうれしいですね。ある意味、この20年という節目に日本法人化できたのは、タイミングとしてすごくよかったと思っています。顕著なのが、コロナを経験してさまざまなマーケットの価値観が変わりつつあるなか、我々としては変化に富んだマーケットへの意識をもった動きをこの日本でできるということが大きなチャレンジでもあります。例えば、日本独自の習慣であるお中元は、近年は少なくはなっているけれどまだやっている方も多くいらっしゃいます。「ピエール マルコリーニ」にもお中元用の焼き菓子があるのですが、すべて焼き菓子でできているんですよね。これを例えばチョコレートを加えたものをつくるなど、当たり前にニーズがあるところに対応するということを、今までは日本だけやることができませんでした。けれど今後はこういった対応ができたり、販売チャネルに応じた変化を出せたり、あらゆる方面でチャレンジできるのは日本法人になったからこそで、今まさにたくさんの準備をしているところです。
―次のバレンタインも楽しみです。
バレンタインもコロナに関わらずその意義が大きく様変わりしていて、自分用など多様性がテーマになっています。さらに、チョコレートという選択肢が昔ほど少なくなってきている事実もあります。チョコレートだけが売れるバレンタインの時代は終わり。もっと言えば、バレンタインだけに頼っていてしまっては終わってしまいます。大事なのはその後にどんなものをお客様に提供できるのかということ。これまでとは違うアプローチを考えていかなければならないことは、どのチョコレートブランドの方も思っていることだと思いますし、すでにさまざまな対応をされていると思いますが、我々は我々の考えをしっかり持って取り組んでいかなければならないと思っています。
―今の時代の流れに合わせて変えていく、そのなかで「ピエール マルコリーニ」らしさをどう表現するかというのを模索されているのですね。
26年間で培ってきた確かなブランディングがしっかりあるので、そこは絶対に変えてはならないと思っています。変えるのではなく、もっと洗練するための感覚やちょっとしたアイデアが良い結果を生む。我々は消費者じゃなく、顧客に対してどれだけのバリューをご提供できるかというのを重要視しているので、そこがブレないように追求していきます。
「営業という仕事がなくなる」──今の時代に活躍できる人材とは?
―26年間ラグジュアリービジネスに携わってこられていて、時代とともに求められる人材は変わってきています。今の時代、どんな人材が活躍できると思いますか?
近い将来、私は営業という仕事がなくなると思っています。その一方で、マーケティングの領域がさらに広がっていくと思っていて。AIの発展にともない、どんな職種がAIに代替えされるかと考えていくと、究極はマーケティングとファイナンスしか残らないと思っています。マーケティングの重要性はますます高くなっていきますが、とりわけそのなかでも“プロダクトマーケティング”が肝だと思っています。マーケティングを得意とする人はたくさんいますが、我々のような口に入れるものや美しいもの、洗練されたイメージを絶えず意識していかないといけないとなると、専門的なマーケティングが必要になります。プロダクトにおけるマーケティング視点でマーケットを正しく認識できるエキスパートに、今後ニーズが高まっていくのではないでしょうか。
―私もよくその話をします。究極論ですが「営業がなくなりマーケティングが増えるのでは?」という話はありますよね。あと、以前は人間性よりもスキルが求められていましたが、今はさまざまな情勢のなかで、もちろん即戦力としてスキルは大事ですが、それ以上に人間性や柔軟性を求められているんじゃないかと最近感じています。
考え方は変わってきていますよね。コロナというものは、“ものを買う”という行為にとってはプラスには働いていません。やはり買う方法が変わったり、買わなくなる人がいたり、総じて購買意欲というのは増えていません。緊急事態宣言が明けてどこも賑わりつつありますが、きっとこれは一時的なもので、そのなかで来店されるお客様に対して、なにを提供できるかが必要です。コロナ以前よりももっとその必要性を感じなければならないと感じています。お客様のニーズをもっと感度高く、ビジネスに反映していかなければならない。我々は顧客ファーストのブランドですから、お客様に寄り添うコンサルティングセールスの枠をさらに越えた“いい相談役”にならないと、と思っています。
―来店数は増えていても購買につながらないという声もあります。蒲田さんがおっしゃっているように、アプローチの仕方がちょっと違うだけで購買に促すことができる可能性は絶対にありますよね。だからこそ、アプローチの仕方など現場の販売の方にかかっています。
私がお客様のことをよく知っているかといったら、現場の店長、はたまたアルバイトスタッフのほうが知っているかもしれない。そこにはものすごいヒントが転がっているのに、どうして拾わないのか、なぜそれをすぐに対応できないのか。これはゴディバ時代にとても苦労していたことです。今の規模感であればそれができるので、すぐにアクションに結びつけていきたいと考えています。
行動に移すということが、自分の価値観を変える
―受け身ではなく、自分から発信しないといけないという時代。誰もが会社のリーダーであり、発信者である。年齢も関係なく、そういう意識を持てる人材が求められていますよね。蒲田さんもそこを重要視されて採用されていますよね。
自ら行動にうつさないと誰もやらない。これを、日本法人を立ち上げるこの1年間で改めて学びました。行動にうつすと“風向きが変わる”んですよね。ものすごく逆風が吹いている状況で、「仕方ない。5mmくらいだけ先に進んでみるか」と行動にうつしてみると、突然ものすごく状況が変わる。それがもっともっと前に進んでみると、ドーンとものすごく世界が変わるんです。そういったことの繰り返しで最後に思ったのは、やはり行動にうつすということが自分の価値観を変えるということでした。
―蒲田さん、これからのチャレンジについてもお聞かせいただけますか?
目下のチャレンジはピエール マルコリーニ ジャパンという会社をより安定したフェーズに移行したいということ。長期的にはお店をもっと増やしたいですし、ブランドバリューを上げていきたい。これは、売上を上げるということではなく、本来もっているブランドのポテンシャルを存分に発揮させたいということです。それにはいろいろなイニシアチブが含まれていて、それを一つずつ形にしていくのが私の仕事です。
―その組織づくりにこれからもエーバルーンは協力させていただきます。本日はありがとうございました。
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