東日本大震災から11年。いまだに原発事故の傷が癒えない福島県双葉町に明るい兆しが見え始めた。新たに産業を誘致する大型の復興プロジェクトが進み、繊維・アパレル業界からは浅野撚糸やフレックスジャパンが新工場を建設する計画だ。
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100人収容の「集いの場」併設
浅野撚糸
浅野撚糸は今秋、双葉町で新工場「フタバスーパーゼロミル」(仮称)を完工し、23年4月のグランドオープンを目指している。東京電力福島第一原発事故の影響で、全町民避難が継続する同町が産業復興の目玉とする工業団地に入る。
投資金額は30億円。2万7775平方メートルの敷地に平屋建て6285平方メートルの建物を建設する。雇用人数は正社員20人、アルバイト・パート10人の予定。
撚糸加工を中心とした工場と合わせ、直営ショップ「エアーかおるフタバマル」(仮称)が開店する。店舗は2399平方㍍。物販拠点として、当地を訪問する国内外からの人々に向けて同工場で作る「ダキシメテフタバ」などの産品を販売する。生産拠点での雇用創出の効果と合わせ、地域ブランドの発信によって地元の復興の一助とする考えだ。
100人を収容できる「双葉町民の集いの場」は同町民のくつろぎの場としてだけでなく、無料休憩所にもなる。中庭は様々な交流の場としてイベントも開く。
双葉町の復興には国や福島県、同町などがプラン策定を急いでいる。浅野雅己社長は「30年に双葉町の人口1万人、同年に交流人口300万人(いずれも年間)の実現を訴えている。この300万人は19年の岐阜県高山市の交流人口380万人に匹敵し、可能な数字であり、人の交流による地域経済の活性化が進む」と話す。
衣料品再生事業に取り組む
フレックスジャパン
シャツメーカーのフレックスジャパン(長野県千曲市)は今秋、双葉町に工場兼工房を新設する。双葉町中野地区復興産業拠点に作り、衣料品のリメイクのほか、デッドストックの再加工やオーダースーツを生産する計画だ。復興再生の象徴である双葉町の雇用を生み、町の復興に貢献しながら事業を拡大する。
いまだ全町民避難が続くなか、今夏にも帰還開始が予定されているが、帰還を諦めている町民も多いと見られる。少しでも人が戻るには、生活を支える雇用の創出が欠かせない。矢嶋隆生社長は双葉町での事業を通じて「(町民の)思い出の復興につなげたい」と考えている。
雇用創出は初年度10人、3年後30人を計画。約400平方メートルの平屋のプレハブ式からスタートし、事業拡大にあわせて増床を検討する。新工場稼働後3年で年間売上高5000万円の規模にする考えだ。新工場ではリメイクを主軸にした衣料品再生事業に取り組み、家庭から出されるアパレル廃棄を減らす。長年愛着を持って着用されてきたアイテムがもし破損しても、リメイクすることで新しい思い出を作って欲しいという願いを込める。
同社に賛同し、きもののやまと、長野県の服飾専門学校の岡学園トータルデザインアカデミー、刺繍を柱に二次加工を手掛ける昌藤が協働パートナーとして参画する。
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