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医療用ガウンを10万着生産 クリエイター発掘も手掛けるベンチャー企業「ヴァレイ」が描くモノ作りの未来とは?

医療用ガウンを10万着生産 クリエイター発掘も手掛けるベンチャー企業「ヴァレイ」が描くモノ作りの未来とは?

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奈良県に日本のモノ作りについて本気で考える企業がある。創立7年のベンチャー企業・株式会社ヴァレイは、国内での洋服生産の縮小に伴って活躍の場が減ってしまった全国の縫製職人と、製品生産を希望する企業をマッチング&製作の全行程をサポートする「マイホームアトリエ」を展開している。コロナ禍で不足した医療用ガウンを大量生産したことで、人気ドキュメンタリー番組にも出演。最近では、新進気鋭のデザイナー発掘を目的とした新ビジネスも展開するなど、モノ作りから奈良、日本の活性化を図っている。そんな同社がこのたび、協業企業を募集。同社代表の谷英希氏を直撃し、モノ作り大国の未来を担うと言っても過言ではないベンチャー企業が描く未来を探っていく。

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谷 英希さん/株式会社ヴァレイ CEO
幼少期から母親が経営する縫製工場でミシンの音に触れながら育つ。高校3年生のころに俳優を志し中退して専門学校へ入学後、ドラマ撮影の現場に立ち会い刺激を受け演出家の道へ。ドラマの演出助手や監督補佐、短編ドラマやCM撮影、舞台の脚本・演出などを手がけ同時に自身も俳優としてドラマ出演を果たすなど精力的に活動。しかし芸能界を24歳という若さで引退し、オーストラリアへ渡る。帰国後、25歳で地元に戻り母が経営する縫製工場の衰退する姿に衝撃を受け、日本の縫製業の復興を目指し、2016年にアパレル企画会社「合同会社ヴァレイ」を設立。現在は「マイホームアトリエ」や「新-ARATASHI-」などの職人やクリエイターをサポートする事業を中心に展開。「ものづくり」を行うための「こと作り」担当。

日本中の職人が自宅にいながらスキルを発揮!モノ作りを絶やさないためのプラットホームビジネス・マイホームアトリエ

― マイホームアトリエについて詳しくお聞かせください

縫製職人さんたちのご自宅を「小さな縫製工場」つまり「MY HOME ATELIER」として活用していただき、ご自宅で服作りをしていただいています。日本の服作りに関わる工場の数は、この30年ほどで約5分の1にまで減少していると言われています。工場がなくなったことで職を失って技術が発揮されずに眠ってしまっている職人さんは日本全体で90万人ほど。そこで、弊社では自宅で職人として働けるようサポートしているんです。

現在登録いただいている職人さんは約260名ほどなのですが、登録希望の応募総数はその約10倍。技術をはじめとした登録基準を設けていて、実際にエントリーいただいた方の中から選定させていただいています。北は東北・宮城県、南は九州・鹿児島まで登録がありますね。沖縄などの離島からもお問い合わせをいただくのですが、物流の都合で奈良県から1日以内で届く範囲で設定しているんです。これ以上離れてしまうと、お直しが発生した場合に到着から修正までに4日ほどかかってしまう。スピード感が失われてしまうこともあって、工場から1日で届く範囲で限定しています。

― 主な顧客はどのような方々なのでしょうか?

マイホームアトリエはプラットホーム事業なのでお客様は大きく2つの軸があります。一方は縫製職人さん、そしてもう一方は極小ロットでの生産を希望するアパレルメーカーさんやデザイナーさん、クリエーターさんたち。その両者をマッチングさせ、製作工程のサポートをすることがビジネスの要となっています。

具体的なロット数でいうと平均13着という極めて小ロット生産を請け負っています。中には13着の内、2色3サイズ展開のものもある。大抵20着前後になるのですが、平均13~20着が多いですね。2016年に創業して本格的にマイホームアトリエ事業を始めたのが2017年なので、現在6年目になります。

プラットホームの総力を結集して医療用ガウンを10万着生産!!

― コロナ禍で医療用ガウンを大量生産したことが注目されましたが、その経緯は?

コロナ禍で医療用ガウンが不足した際、弊社で10万着請け負わせていただきました。2019年近畿経済産業局が選定する「羽ばたく中小企業300」に、奈良県としては2社のうち1社として選んでいただいたんです。そこから経済産業省内のイベントや公演、取材をしていただく機会があり、その繋がりで経産省の担当者から医療用ガウンの発注をいただいた経緯があります。

ANA Blue Base(研修施設)にてANA社員によるガウン生産の様子

― 人気番組「ガイアの夜明け」にも取り上げられていましたが、裏話などはありますか?

お話をいただいたときは本当に驚きました。でもお声がけいただいたその日のうちに「やりましょう」と即答させていただきましたね。その1週間後くらいに、当時の安倍晋三元総理がマスクや消毒用アルコールなどの生産をサポートする企業を激励する会があったんです。多くの企業がその会に出席していると思ったのですが、実際には弊社の他にはANAさんや日産さんという名だたる大企業しか居なくて。縫製会社としてはもちろん弊社だけでした。

― 急を要したガウンの生産はかなりのスピード感だったと聞きます

生産を受注させていただいた当時、不織布がマスク生産で大量に使われていたことで不足しており…。不織布の99パーセントは中国製で日本製は少なかったので資材調達から困難だったのですが、さまざまな方のサポートを得ながら4月に受注をいただいてから8月までには10万着すべてを納品しました。

― マイホームアトリエのプラットホームに登録している方々などの助けがあったと。

プラットホームに登録している約70名の職人さんと5つの法人工場を繋げて、さらにANAさんの研修施設を出荷センターとして贅沢に使わせていただき、なんとか実現することができました。 この「10万着」という生産数は、いち工場としてでは絶対に達成できない数。弊社の強みとして全国の職人さんたちをディレクションする能力がある中で、全国の法人工場と連携しながら、どんなリソースが足りないのかバランスをとりながら進めていきました。イメージとしては日本全体をひとつの工場として見立てたんです。「やります!」と請け負った後に「生地ないやん」ということもありましたが(笑)。経産省の方々にもサポートしていただいて達成できました。

10万着のガウンを無事納品。ANA社員とともに(2020年7月)

新時代のデザイナー発掘を目指す新事業「新-ARATASHI-」重要視するのはその人ならではの“熱狂度”

― マイホームアトリエに加えて新事業「新-ARATASHI-」というサービスも開始されましたね。これはどのようなサービスなのでしょうか?

私たちの事業のミッションの核として、職人さんに仕事を継続的に渡し続けなければなりません。「僕らのところに登録してくれたら仕事を渡します」と約束している以上、これは絶対です。しかし、コロナ禍で仕事がなくなってしまい、案件を出せない時期がありました。医療用ガウンの受注があったのでかろうじて途切れはしなかったものの、「これ終わったら仕事渡せへん」と痛感し、自分たちでもっと案件を作っていかなければいけないと。ファクトリーブランドが一部で流行っていたことに加えて、工場はモノづくりの専門家であってカッコいいファッションは作れない。だったらデザイナーさんたちのサポートをすることで、職人さんたちと繋げられるのではないかと事業を始めました。

― 服飾専門学校でデザインやパタンナーとしての知識を学んでいる方々にフォーカスしているのでしょうか?

才能ある人たちの「才能」というのは、誰かにサポートしてもらってこそ芽が出ると思っています。プロ野球選手もプロ選手としての育成がなければ結果を出せない。アーティストや職人さんは「お金」や「マーケット」に関しては疎いことが多いので、そこを我々がサポートすることで、より輝いてほしいと思っています。モノ作りに集中してもらうために他をサポートしていくイメージです。

― デザイナーを発掘する際に重要視していることはありますか?

基本的にはオーディションを開催しています。応募を50人ほどいただいていたとしたら、その中から1人か2人くらいの割合。オーディションでは、大きく3つのことを重視しています。まずは人柄、人間性。良い人間性が根底にあって、ご本人のエッジの効いたセンス、そして直近の市場環境を見てマッチングする方を採用させていただいています。

― どういったデザイナーの方々がいるのでしょうか?

さまざまな方がいるのですが、アイドルグループ・STU48のメンバーもいることは面白いと思っています。同グループの中から2名のメンバーが参加しているのですが、そのうちの1人がアイドルオタクなんです。AKB48やモーニング娘。など、いろんなアイドルオーディションを受けながらも結果的にSTUになった。アイドルの格好が好きで、そのアイドル衣装をアイドルである自分が一般向けに作りたいと。将来アイドルを目指す子たちの夢や希望になるんじゃないかと思っています。

他にもライブ配信サービス・SHOWROOMさんと協業して、ライバー(配信者)さんたちからデザイナーを発掘したりもしています。アイドルやライバーさんたちにはファンが付いているので、ちゃんと売れるんです。

― さまざまな企業との取り組みも活発に実現しそうですね

単価は高くはなりますが小ロットから作れる強みと価値があることで、今までは掴みきれなかった小さい声や価値に対応できる。企業さんとのコラボは熱いと感じています。

ゆくゆくは企業のモノ作り全般をサポート「日本のモノ作りを未来につなぐ」

― 他企業と、どのような取り組みをしたいかという構想はありますか?

ハンドメイドの作家さんや職人さんたちがより羽ばたくサポートをすることで、売上増加を描いています。また、ネットショップと組んで、モノ作りを欲している方を開拓していくことも決まっています。

他にも企業が洋服を作りたいといった声や、ECをサポートしている企業やコンサルタントさんとも相性が良く、企業のモノ作り全般をサポートする事業も構想しています。

そしてアーティストやクリエイター、IPを抱えている企業とも相性は良いと感じていて、アニメ領域でいうとコスプレ関連でも何か仕掛けられないかと模索しています。

― このサービスで実現したいことはありますか?

ちょうど今、弊社のビジョンを見直して新しいビジョンで動き出そうとしています。服作りだけでなくより広くデザイナーやクリエイター、職人などが夢でつながれる状態をつくること。立場や収入、自由な場所で働ける、リモートワークできるといった、まだまだ改善されるべき作り手たちの待遇を変えていきたいです。少なくとも、自尊心や生きている意味などが報われる社会を作りたい。

働く場所という点では、今までは職人は工場に出社しなければならない縛りがあった。まずはそこを改革して自宅にいながらモノ作りができる環境を全国的に整備していきたいです。

ミシンだけで世界トップクラスのモノを作っているところは人口が減っていき産業も衰退していくのですが、職人の地位を守らなければモノ作りの国は発展しないので、そこをサポートできる会社にしたい。これからも継続して奈良から発信していきたいですね。

― 最後に何かメッセージはありますか?

弊社はさまざまな人やモノを募集しています。人においてはファッションが好きで奈良県に来たい・働きたい方を募集しています。お客様に関しては、「こんなもの自分では作れない」「工場に頼んでも無理」というモノがありましたら是非弊社で作らせてください。

そして技術をお持ちの職人さんは技術を諦めないでほしい、職がないと諦めないでほしい。私たちが自分らしく生きられるサポートします。デザイナーのみなさんは、自分の才能を信じてご応募いただけたらうれしいです。

撮影:WACOH

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