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「プラダ モード 東京」に東京都が協力、ラグジュアリーイベントが都立美術館にもたらすもの

 「プラダ(PRADA)」が主催する現代文化をテーマにした日本初開催のプロジェクト「プラダ モード(Prada Mode)」が、5月12日の今日、東京都庭園美術館(以下、庭園美術館)で開幕した。今回の「プラダ モード 東京」は東京都と庭園美術館の協力のもと実現し、あす5月13日までの2日間限定で開催。庭園美術館が週末の土曜日に一部エリアを貸切営業するのは初の試みとなる。プラダ モードで目指したのは「『美術館』として機能」だと語るのは、東京都庭園美術館館長の妹島和世。プロジェクトを通じてプラダは同美術館をどう変化させたのか。

 プラダ モードは、世界の主要都市の「文化」を体験することを目的に2018年から始動。第1弾をマイアミで行い、これまでに香港、ロンドン、パリ、上海、モスクワ、ロサンゼルス、ドバイで開催しており、今回が第9弾となる。開催に際してメディアセッションが行われ、庭園美術館館長の妹島和世と副館長の牟田行幸、プラダ ジャパンの代表取締役アレッサンドラ・マルシコラ(Alessandra Marsicola)、東京都生活文化スポーツ局文化振興部長の蜂谷典子の4人が登壇。東京初開催の経緯と、東京都が協力した背景について明かした。

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エクスクルーシブとパブリックスペースが融合した「新しい公共の場」

 会場は、入り口、西洋庭園、日本庭園、本館、ギャラリーの大きく5エリアに分かれており、一般客が楽しめるのは本館で開催されている企画展「邸宅の記憶」と、入り口付近に設置された本館と庭園の関係を連想させる作品を展示するゲストハウスギャラリーのみ。このほか、杉本博司が手掛けた茶碗と坂本龍一が自筆した「戦場のメリークリスマス」の楽譜軸装が飾られている茶室でのお茶会や、プラダのデッドストックの布を用いたワークショップなどを行う予定で、一般公募で選ばれた人のみが参加できる(※公募の申込は終了)。また西洋庭園の中には、西沢立衛が手掛けた仮設パビリオンを設置。パビリオン内では、杉本博司と千宗屋、長谷川裕子と妹島和代、渋谷慶一郎と朝吹麻里子らによるトークセッションが、完全招待制でそれぞれ行われる。

 今回キュレーションを手掛けた妹島は、美術館というパブリックなスペースでありながら、一部エクスクルーシブな体験になったことについて「将来的に、全ての人に開かれた催しができれば」とコメント。キュレーションをする際に「オープンスペースと、エクスクルーシブスペースを融合させつつ、どのように全体を回遊させるかを念頭に置いた」と話し「『両スペースを融合しつつ、美術館の回遊性を高めることが可能なのか』を検証するのもこのプロジェクトの意義」と話した。

 一方で妹島は、招待者以外にも同プロジェクトを楽しんでもらう施策として、ゲストハウスギャラリーや、ワークショップのほか「会場内音楽に力を入れた」と音声メディアの特徴に触れながら説明した。

「会場では常に、音楽が流れています。音は領域を跨ぐ特性があり、どこにいても『聞く』ことができます。オープンスペースとエクスクルーシブスペースが同居するプラダ モード東京で『新しい公共の場』を模索する時に、両者が交わる方法として音楽がいいのでは、と提案しました。幸い、プラダ モードも音楽をキーワードに挙げていたこともあり、うまくコラボレーションすることができました」(妹島)。

 また、妹島は「様々な形のアートに触れるというのが、プラダ モードの考えにあるのでは」と分析。プラダがこの催事を、「イベント」ではなく「ジャーニー」と呼称していることに着目し、会場となっている庭園美術館の一体が重要文化財であることに触れながら「美術館自体が重要な“建物”であると同時に、展覧会を催す美術館としての機能も持っている。この場所で過ごすということで、各々が自由に自分の感性を研ぎ澄まし、それぞれがその感覚をもとに経験を組み立てていくはずで、それは感性の『ジャーニー』と言える」と話した。

プラダ モード東京が映す「本来の庭園美術館」の姿

 プラダ モード 東京が庭園美術館で開催された経緯について、妹島は「もう少し、この美術館を広く楽しんで欲しいと考えている最中に、タイミングよくプラダから提案があった」と明かした。

「例えば、企画展を開催していない時は、鑑賞者は敷地内で観るものがなく、そのまま帰宅する人も多くいました。庭園美術館は重要文化財なのに、それはとてももったいないことだな、と。そこで、もう少し敷地内全体を『美術館』として機能させ、新しいタイプの美術スペースを目指すことはできないか、と今年度から本格的に動き始めるところでした」(妹島)。

 現に、庭園美術館本館の半分がまだ有効活用できていないと明かし、将来的には現在使用されていないスペースなどをライブラリー等に昇華することで「訪れたら何かがある場所」を目指したい、と今後の展望について語った。

 妹島のコメントを受けて、東京都生活文化スポーツ局文化振興部長の蜂谷典子は「庭園美術館は、公的な施設を一般的に貸し出す『ユニークベニュー』の対象である」とした上で「庭園内に日影がないこと、美術館の閉館後しか貸し出しができないことなど、使い勝手が悪いところがあった」と続け、「ユニークベニューを実験的に活用する場」を求めて今回東京都が協力したことを明かした。
※ユニークベニュー:東京都が定義する歴史や伝統、芸術文化に触れられる建物、施設の総称。

「通常は閉館後の貸し出しだった庭園美術館を、今回は日中に貸し出したり、貸出禁止だった場所を解放したりと、初の試みがいくつかあります。実際に貸出時間を早めることで、一般のお客さんにどのような影響や、反響があるのか、貸出禁止だったエリアはどこまで解放の余地があるのかなど、今回の検証結果を見て、今後の貸し出し時間や場所、方法を新たに模索したいと考えています」(東京都生活文化スポーツ局文化振興部長の蜂谷典子)。

 続けて妹島は「今まではできなかったことを、なんとかやってみたことが大きな一歩」と強調。「一般客との交流は短くなってしまったが、重要文化財であるが故に、管理の観点から今まで一般開放していなかった場所も、エクスクルーシブではあるが用いることができた」と振り返り、「今後、一般客に向けて解放する足がかりになるはず。美術館自体も自分たちでユニークベニューとしての貸し出し方を模索しなければならず、どうやってこの形態を続けられるかが重要」と今後の活用に意欲を示した。東京都庭園美術館だけではなく、国や都が所有する美術館が今後、どのようにラグジュアリーブランドと共生していくのか注目が集まる。

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