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「日本はテキスタイルとファッションが乖離している」 綿の産地が作る新ブランド「ジセツ」がデビュー

Image by: FASHIONSNAP

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「日本はテキスタイルとファッションが乖離している」 綿の産地が作る新ブランド「ジセツ」がデビュー

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 兵庫県の播州先染め織物工場 東播染工(とうばんせんこう)が手掛けるアパレルブランド「ジセツ(jisetsu)」が2025年春夏シーズンにデビューした。ファーストコレクションの発売は2025年2月ごろを予定しており、各取り扱い店のほか、同時期にオープンする同社のオンラインセレクトショップで取り扱う。

 東播染工は、日本有数の織物の産地である兵庫県西脇市で日本で唯一、企画や染色から織布、加工までを一貫して行う大型の繊維企業。播州織・先染め織物に特化している。同社は元々他社の下請け業がメインだったが、得意先からの受注数量が減少していることから、事業の新たな柱を増やすことに加えて、会社の知名度向上を目指し、自社ブランドをスタートした。

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 ブランド名は、「時節(時代の流れを汲み取ったデザイン)」「自説(着る人の魅力を引き出す、自分自身を説明できるような服)」「地説(産地の魅力を発信する)」に由来。「nowhere ones」をキーワードに、着る人の暮らしに馴染み、型にはまらない“ポジティブな無所属さ”を持つ服を提案する。

生地のカラーサンプル

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 デザイナーは、約14年間ファイブフォックスでパタンナーを務め、2019年に東播染工に参画した足立直人。服飾専門学校を卒業後、自身のブランドを立ち上げるために必要な生地を探して様々な国内のテキスタイル産地を巡っていたという足立は、偶然出会った国内のとあるテキスタイル工場が「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「エルメス(HERMÈS)」、「サンローラン(SAINT LAURENT)」といった名だたる高級ブランドにも生地を卸していることを知った。「服飾を学んでおきながら、そういった国内の産地について無知だったことを恥じた」という同氏は、「テキスタイル産業とファッション産業が乖離している」と感じ、業界の実情を知るために上京。そうした違和感を自分の言葉で発信できるようになるために、東京の大手アパレルメーカーでキャリアを積む傍ら、産地巡りを続けてきたという。

製品タグは工場で出た端切れ

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 ファーストコレクションは、同社が長年得意としており「ブルックス ブラザーズ(Brooks Brothers)」にも提供しているというシャツ生地をベースにコレクションを製作。5種類のオリジナルのシャツ生地を使用し、生活の中の4シーン「就寝」「家の中」「外出」「仕事」をイメージした、パジャマ、シャツ、ワンピース、ジャケット、パンツなど計14型を仕立てた。価格は、シャツ・トップスが1万9800〜3万6300円、ボトムスが2万8600〜3万9600円、パジャマセットアップが3万3000〜3万6300円、ワンピースが2万2000〜2万6400円、テーラードジャケットが3万5200〜4万1800円、ファーマージャケットが4万6200〜4万9500円(全て税込)。

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 シャツなどは定番アイテムとして今後も展開していく予定で、着る人の暮らしにフィットする服作りのため、毎日着ても飽きないベーシックなデザイン、イージーケアな素材、着心地の良さ、着やすいシルエットを追求した。シャツやジャケットの袖口にはボタンホールをあしらっており、好みの絞り加減にアレンジして着ることができる。

 シャツ生地には、コットンリネンの他、ジャケットの裏地や「ユニクロ(UNIQLO)」の「エアリズム」にも用いられているキュプラなど、イージーケアで日本の夏を快適に過ごすための必要な吸湿速乾性のある素材を採用。生活の4シーンに着想した各アイテムは、「暮らしに寄り添う服」を体現するため、パジャマから順に重ねて着ていくことをイメージしてデザインしており、襦袢に着物を重ねてレイヤードを楽しむ和服のように、薄くて軽いシャツ生地を活かしたレイヤードスタイルを提案している。

 足立はジセツを「ファクトリーブランドにはしたくない」と話す。産地や工場のテキスタイルありきで、自らの生地を発信するために服を作る「ファクトリーブランド」というあり方では、自社の生産物の内容次第でクリエイションに制限がかかってしまい、今作るべきものを作る「ファッションブランド」としての視点が欠けてしまうという考えだ。

 ファーストコレクションは全て社内で生産したが、今後は綿織物を専門とする東播染工が作れないデニムやニット、カットソーといったアイテムは、同社と親交のある別の産地の工場とコラボレーションして生産していくという。このほか、同社が来年2月に立ち上げる予定のオンラインセレクトショップでは、同社が手掛けるブランド以外にも、ジセツが共感する他の産地やブランドのアイテムもセレクトして展開していくことで、日本国内の様々な産地や縫製工場の魅力発信を狙う。

シャツにテーラードジャケット、ワイドパンツを組み合わせた足立

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 現在は、ブランドがテキスタイルの生産までを自社で行うケースはあまり見られなくなったが、足立と社内のテキスタイルデザイナーが企画し、社内で生産をすることで、他社を挟むことなくワンストップで服を作り上げることができるのがジセツの特徴。「他の誰にもできないことをしよう」という想いも、「nowhere ones」というブランドのテーマに込められている。

 今後は、産地やアパレルブランドに限らす、ミュージシャンやフォトグラファーなど様々なクリエイターともコラボするなど「グルーブ感」のあるブランドを目指すとし、「地場のワイナリーや林業など様々な職人たちの暮らしに根差した服を作っていきたい」と足立。「私はラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドで働いた経験はありませんが、こういった取り組みを実現することができました。私やジセツを知って、『自分にも出来そう、産地で働いてみたい』と思ってくれる人がいたら嬉しいです」とコメントした。

◾️ジセツ:公式インスタグラム

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