中国国内で100以上の店舗を運営し、Z世代を中心に20〜50代の幅広い層の支持を集め、全チャネルの売上高は100億円を突破するなど、勢いに乗っているファッションブランド「ウーヤー(UOOYAA)」。日本では今年5月に短期間のイベントを行い、プレスやバイヤー、インフルエンサーなどからのフィードバックを経て、この度本格上陸した。日本市場への期待と今後について、同ブランドの会長兼最高経営責任者兼クリエイティブ統括のイン・ケンキョウ(Yin Jianxia)氏に聞いた。
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ファウンダーは中国のアパレル業界に精通
ウーヤーを立ち上げたイン氏は、中国服飾系大学のトップのひとつである北京服飾学院出身。中国の大手アパレルブランド「メーターズボンウェ(Metersbonwe)」でデザインディレクター兼取締役副社長を10年以上務めた後に独立し、自身のブランドとして2014年にウーヤーを立ち上げた。中国におけるアパレル業界のノウハウとコネクションを持つ同氏は、「ウーヤーを始めた当時の中国には、大人が楽しめるファッションが少なかった。日常的に着用でき、個性や遊び心、ちょっとした“ハズし”を感じられる、ユニークで自由な服を届けたいと考えた」と立ち上げの経緯を語る。
ブランドコンセプトは、「現代女性の内なる自己認識」と「外に向けた表現」の二項対立の衝突。同氏は「私たちのデザインのDNAには『青春』と『力強さ』がある。今を生きる女性たちに、年齢や時間に捉われない、想像力と喜びに満ちたライフスタイルを、ファッションで提案していきたい」と説明する。
上海・新天地の旗艦店を皮切りに右肩上がりで成長を続け、2021年時点で直営およびフランチャイズを含め100店舗を突破し、中国国内80以上の都市で展開。コロナ以降はECにも注力し、自社サイトのほかTmall(天猫)など主要プラットフォームでも販売している。2024年にはTmallでの売上高がデザイナーズブランドカテゴリーで1位を獲得するほどに成長し、売上のEC比率は全体の40%に及ぶ。

(中央)「ウーヤー」会長兼最高経営責任者兼クリエイティブ統括 イン・ケンキョウ氏
Image by: FASHIONSNAP
デザイン性とクラフト感の両立、多彩なラインナップで幅広い客層から支持
本国でのシグネチャーは、プレイフルなグラフィックを配したワンピースや、落書き風のイラストをプリントしたトップス、ロマンティックなレースドレスなどウェアラブルなシルエットに個性的なディテールを落とし込んだアイテムなど。中心の価格帯は、トップスが2万円台〜4万円台、ワンピースが4万円台〜8万円台、ジャケットが6万円台〜10万円台。主な客層は30〜40代だが、20代、50代の顧客も抱え、中心の客単価は5万円台〜7万円台だという。
グラフィックやシルエットのアクセントが効いた「一着でもスタイリングが決まるアイテム」が売れ筋で、同氏の長年の業界コレクションを活かしたハンドメイドの刺繍をはじめとした高品質なクラフト感が、中国で支持される理由の一つ。また、企画から生産まで社内で行うことから、およそ2週間のサイクルで20〜30点の新作が販売できるスピーディさも“飽きさせない”運営で人気の維持に貢献している。









Image by: UOOYAA
自主制作ZINEやKOLコラボの世界観訴求で独自のポジションを確立
ブランドの成長の背景には、前述のスピーディで安定した運営体制に加え、デジタルとリアルの双方での世界観訴求がある。2018年からヴィジュアルカルチャーマガジンとして「UOOYAA ZINE」を年2回制作し、店頭などで配布。多彩なジャンルのクリエイターとコラボレーションしながら、“UOOYAA girls”の「自由さ」「リアルさ」「冒険心」といったブランドストーリーを継続的に発信することで、他社と差別化を図っている。
また、コラボライン「ウーヤー・ラボ(UOOYAA Lab)」では、「クリスチャン ラクロワ(Christian Lacroix)」や「ディズニー(Disney)」、「新世紀エヴァンゲリオン」、ポンピドゥーセンター、セントラル・セント・マーチンズの卒業生といったコラボレーターを迎えた企画を実施。幅広いジャンルでコラボすることで、認知の拡大と独自のブランドポジションの確立へと繋がったという。
デジタル施策はKOLとのコラボ企画を継続的に展開。一般的な広告出稿ではなく、リアルな着用感が分かるKOL施策やライブコマースに予算をかけたことが奏功した。
イン氏は売上100億円突破の要因として、こうしたブランディングの成果を挙げる。「中国の市場は大きく、ブランドの数も膨大。SNSも盛んで情報スピードが速いが、そうした状況の中で安定的な成長を遂げられたのは、自主ZINEやコラボなど独自のクリエイティブを継続的に発信したことが好調に繋がったのではないか」と分析した。
アジアのファッションシーンを担う東京進出 5年で10店舗体制目指す
自国内での基盤構築を経て、今年から海外進出に力を入れている。その足がかりとしているのが日本市場だ。本格上陸に先駆けて今年5月に原宿で行ったイベントは、2日間の限られた日程だったが、約200人が来場。来場者アンケートで“リアルな市場調査”を行ったところ、ウーヤーが提案する「ファッションを通じた青春や、力強い女性像」に確かな手応えを得たことから、本格的な展開を決めたという。また、イン氏は「アジアのファッションシーンを牽引する東京でのチャレンジは、市場拡大の布石にもなる」と考え、まずは東京での“地固め”を狙う。
今月からラフォーレ原宿でスタートした長期ポップアップでは、中国での人気アイテムに加え、市場リサーチを経て日本の消費者に“ハマりそう”なアイテムをセレクト。また、店舗限定アイテムとして「セーラーカラーリボンスウェット」(8万円)や「リボン付きセーラーカーディガン」(6万5000円)、「クラシックリボン切替ワンピ」(6万5000円)の3型を販売している。VMDではファッション誌「装苑」とのコラボ企画も実施。誌面と連動した、“日本的なファッションカルチャー”を取り入れたスタイリングを提案している。
オープンから3日経ち、プレミアムアイテムとして入荷したハンドメイドのニット(36万円)が売れ、国内客だけでなくインバウンド客も多く訪れるなど滑り出しは好調だという。







Image by: FASHIONSNAP
日本事業では、まずは世界観の訴求と定着を進めていく方針。運営面では中国ブランドの日本進出に関してコンサルティングを行う益運豊とタッグを組む。新たに開設した日本版インスタグラムを活用し、本国同様にKOLとのコラボを通じて発信を強化していく。並行して販路の拡大に着手し、直営の路面店やセレクトショップなどでの卸先を含め、3年で5店舗、5年で10店舗の出店を計画している。
そのほかの海外事業も慎重に進める考え。パリやアメリカといった市場リサーチに加え、東京の反響を精査しながらアジア地域の開拓も視野に入れる。
近年、ウーヤーだけではなくクリエイティブ背景を持つ中国ファッションブランドの上陸がじわりと増えている。主な代表例として、エスモード(ESMOD)・パリ校出身のデザイナーデュオが手掛ける「トリニートストゥディオ(TRINITESTUDIO)」や、セントラル・セント・マーチンズでウィメンズウェアを学んだチュウ・ハオ(邱昊)によるラグジュアリーブランド「チュウハオ(QIUHAO)」がポップアップや卸を通じて日本展開を開始。アーバンアスレチックがテーマの「モードコミューター(MODE COMMUTER)」は、LVMHグループの投資ファンド Lキャタルトン(L Catterton)からの出資を受けており、来年1月までルミネエスト新宿で長期ポップアップを開催中だ。
最終更新日:
■UOOYAA ポップアップ
期間:2025年10月4日(土)〜2026年1月31日(土)
会場:ラフォーレ原宿 1階
営業時間:11:00~20:00
日本公式インスタグラム
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