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【2025年ベストバイ】ファッションエディター 大平かりんが今年買って良かったモノ

Video by: FASHIONSNAP

 今年のお買い物を振り返る「2025年ベストバイ」。8人目は、昨年に続き5度目のご出演となるファッションエディターの大平かりんさん。「365日同じコーディネートはしません」をモットーにインスタグラムに私服を投稿し、多くのファンを獲得しています。「後輩に背中を見せたい」という思いで例年以上に服を買ったという大平さんの、2025年に買ってよかったモノ8点は?

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tao スカーフトップス

taoのスカーフトップス

FASHIONSNAP(以下、F):1点目は「タオ(tao)」のスカーフトップスです。2025年秋冬コレクションでも特に印象的なアイテムの1つでした。

大平かりん(以下、大平):これは店頭で一目惚れしました。いつも立ち上がりのタイミングでドーバー(ドーバーストリートマーケットギンザ)に行くんですけど、その時に見つけてすごく気に入って。タオのアイテムを買うのはこれが初めてで、ドーバーの馴染みのスタッフさんにも驚かれました。9月でまだ暑かったのですが、「Tシャツに合わせて今から着ても可愛いな」と思って。「TOKYO FASHION AWARD」の司会をした時に初めて着たら、すごく褒めてもらえて良かったです。

F:司会をした際にはどんなスタイリングだったのですか?

大平:ブルーのシャツと黒のトラウザーズを合わせて、授賞式らしくクラシックにまとめました。ただ、一度着て脱いだら、元の形に戻せず布の塊になってしまって......。どこに頭を通すのか、手を通すのか分からなくなってしまい、その一度きりになってしまいました。今度、ドーバーに持って行って直してもらいます!(笑)。でも、マイケル・ライダー(Michael Rider)の「セリーヌ(CELINE)」なども含めて、スカーフはトレンドの兆しがあって気になっていますし、クラシックな柄で雰囲気を変えられるので買ってよかったです。

大平かりん

「TOKYO FASHION AWARD」の司会を務めた日のスタイリング

F:ちなみにおいくらだったんですか?

大平:覚えていないのですが、少し値段が張っても汎用性が高いのでコスパは良いと思っています。Tシャツからシャツ、タートルネックのセーターまで合わせられるので。

F:確かに、コンサバティブにもアバンギャルドにも振れる幅がありそうですね。

大平:そうですね。きちんとした服装にアクセサリー感覚で加えることもできるし、このトップス自体のインパクトに合わせて柄物のスカートとかを合わせて、奇抜なスタイルにするのも面白いと思います。着こなしの幅が楽しめるのが魅力です。今季はスカートなども含めてデニムアイテムのバリエーションが多く、デニム再注目のシーズンだと感じていて。このトップスは、次に紹介するジーンズと一緒に買ったのですが、デニムに合わせて楽しいものを狙った部分もありますね。

F:確かにインディゴデニムの色味に合いそうです。

大平:ちょっと野暮ったいぐらいのクラシックなデニムが合いそうですよね。フェードしたブルーにも合うと思うし、ブラックで締めても良い。そういうカジュアルなアイテムに合わせても、色気が出るので気に入っています。

Stefan Cooke「Brown Patch Vintage Blue Jeans」

Stefan Cookeのデニムパンツ

F:次は、「ステファン クック(Stefan Cooke)」の2025年秋冬コレクションのデニムパンツですね。パッチのディテールがユニークなデザインで、ルックでも多用されていました。

大平:これも実はルックは見ていなくて(笑)。ドーバーで偶然見つけて、この革のパッチが何ともキュートで買っちゃいました。ただ、6月にメンズのファッションウィークに行った際に、ステファン クックの展示会は既に見ていたんです。シグネチャーのニットやバッグ以外の商品を見る機会が国内だと少なかったのですが、いざ展示会で見たらメンズもウィメンズも本当に可愛かったんですよ。デザイナー2人のイギリス文化やもの作りを大切にする姿勢、ブレない挑戦的なクリエーション、人柄の良さから生まれる雰囲気なんかがすごく良くて。改めてステファン クックが気になっていた時に、ドーバーで出会ったという感じでした。

F:大平さんは、コレクションで気になったものを決め打ちで買いに行くよりも、店にふらっと入って買い物をすることが多いですよね。

大平:そうなんですよ。最近は時間がなくて買い物の機会が限られているので、「今日は買うぞ!」という気持ちで行きます。これは多分メンズなのですが、サイズもぴったりでした。ただ、レザーパッチの影響でクリーニングが難しいみたいで。レザーが色落ちしないかとか、いろいろなテストが必要みたいです。

Stefan Cookeのデニムパンツ
Stefan Cookeのデニムパンツ

F:その経年変化も楽しそうではありますけどね。

大平:そう、なので自分で手洗いしています。そもそもデニムって色落ちを楽しむものだと思うので、あまり気にせず。最初からエイジング加工もしてあって、それがまた可愛いんですよね。あと、今までジーンズはワイドシルエットばかり買っていたから、こういう細身のストレートも新鮮。自分の体型だとスタイルが悪く見える気がして、スリムフィットのものは穿いてこなかったんです。

F:確かにあまり穿いているイメージがないですね。

大平:今まではスカートかワイドなパンツが多かったです。私たちの世代は、スタイルをよく見せなきゃいけないと考えがちじゃないですか。脚が短く見えると嫌だから、半端な丈を避けたりとか。でも、最近の若い世代は、スタイルを良く見せなきゃというよりも、自分の体型を肯定的に捉えて自由に服を選ぶ人が多くて。若い人たちが完璧じゃない自分を受け入れて、それを活かしたおしゃれを楽しんでいる姿を見ていたら、そういう強迫観念みたいなものが薄れてきた気がします。

F:厚底の方が身長は盛れるのに、薄底のスニーカーがトレンドだったりしますもんね。

大平:そうですね。例えば、自分が高校生の頃ってルーズソックス全盛の時代で、あれって脚が長く見えたんです。でも、ある時からくるぶし丈ソックスとか、短い靴下を履くようになって。生脚の面積が増えるとスタイル悪く見えるから、当時は理解できなかったんですけど、その気持ちが最近分かってきました。そういう自然体で肩の力が抜けた感じが、チャーミングで今っぽいのだと思います。若い世代が持つ新しい美意識から教わることは多いですね。

大平かりん

F:ステファン クックは今季からウィメンズを本格展開していますが、メンズを選んだ理由は?

大平:単純に、ウィメンズがまだ国内には全然入ってきていないんです。あと、展示会で見た時にたくさん試着したのですが、自分の年齢を考えると可愛すぎてしまうアイテムが多くて。そのピュアネスが眩しすぎてその時は見送ったのですが、ウィメンズも凝ったデザインで素敵だったので、日本でも気軽に見られるようになればいいなと思いますね。

I'm Sorry by Petra Collins「Blythe Doll Print Bag」

I'm Sorry by Petra Collinsのバッグ

F:3点目は、モデルでフォトグラファーのペトラ・コリンズ(Petra Collins)が手掛けるブランド「アイムソーリー バイ ペトラ コリンズ(I'm Sorry by Petra Collins)」のバッグです。本当に可愛いですね。

大平:韓国に遊びに行った時に「032c Gallery Seoul」でポップアップをやっていて、そこで見つけて買いました。もともとこのブランド自体が「エッセンス(SSENSE)」と組んだ企画なんですけど、今回は「ジェニーファックス(JennyFax)」も加わったコラボコレクションだったみたいです。「ブライス(Blythe)」という有名な人形をモチーフにしています。

I'm Sorry by Petra Collinsのバッグ
I'm Sorry by Petra Collinsのバッグ

F:チャームは「ワタル トミナガ(WATARU TOMINAGA)」ですか?

大平:そうです。「ヴィジットフォー(VISITFOR)」のオーナーが手掛けている新宿の「ディケイ(Dekay)」で、リニューアルオープンの記念アイテムとして発売されたもの。たまにふにふにと触ったりしています(笑)。バッグ自体も含めて自分では派手だとは思わないのですが、結構インパクトがあるみたいで驚かれます。意外と実用的なんですよ、マチもしっかりあるし。本当にほぼ毎日使っていて、もう1個買いたいくらい気に入ってます。私、気に入ったバッグは何個も買っちゃうんですよ。「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME des GARÇONS SHIRT)」とFutura(フューチュラ)のコラボバッグも家に2、3個あります。

F:2022年に紹介していただいた「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」のコラボジャケットに合いそうですね。

大平:確かに!グラフィックもの同士を合わせても良いし、今日みたいな黒ベースのシックな服装のアクセントにしても良い。これは間違いなくベストバイですね。ジェニー ファックスは最近中野ブロードウェイに店舗をオープンしましたが、彼女独自の美意識が詰まった唯一無ニな空間で、わざわざ足を運びたくなるお店だと感じました。

大平かりん

F:ちなみに今年は何着くらい服を買いましたか?

大平:30着いかないくらいですかね。今年は結構買っているし、直球なデザイナーズブランドが多いと思います。

F:例年スポーツや音楽関係のアイテムがベストバイに登場していましたが、今年はないんですね。

大平:今年もライブやスポーツ観戦には積極的に足を運び、アーティストグッズやユニフォームも色々集めましたが、改めて私は今ファッションに夢中なんです。有名ブランドが次々とデザイナーを交代するという歴史的な過渡期にあり、新しい世代のクリエイターたちが美しさの規範やラグジュアリーの定義をどんどんアップデートしているのを見て、とてもワクワクしています。こうした時代の変化は、実際に服を買って着て、街を歩いたり人と話したりすることで、よりリアルに実感できるものだと思うんです。

 また、街を歩いているとSNSで「今日かりんさんを街で見かけました!花柄のコートが素敵で、見ているこちらまで元気をもらいました」といったメッセージをいただくこともあって。やっぱりすごく嬉しいですし、「服を通じてハッピーを届けたい」という使命感も湧いてきます。自分のファッションを若い世代にも楽しんでもらえている実感があるからこそ、買い物へのモチベーションが高まっていますね。

BALENCIAGA アーカイヴのコート

BALENCIAGAのコート

F:次は「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のアーカイヴのコートですね。

大平:これも先ほど話した韓国旅行の際に買ったものです。後輩たちを連れて行ったのですが、そのうちの1人に教えてもらった「スチール ナイス(STILL NICE)」という韓国の古着屋で見つけました。K-POPのアイドルやミュージシャンを担当しているスタイリストたちが、衣装に使ったものを売りに来たりするらしくて、ハイブランドのアイテムも多いんです。これはデムナ(Demna)が手掛けた初期の物だと思います。

 韓国はまだ古着市場が成長途中で、日本と比べると価格もそこまで加熱していないんです。このコートも15万円前後と定価と比べれば手頃な価格で、とても良い買い物だったと思います。いかにも衣装らしい派手なアイテムもあったりして、宝探しのようで楽しいお店でした。服好きの若い後輩たちにファッションラバーとしての背中を見せなきゃという思いもあり、この旅行ではとにかく買い物をたくさんしました(笑)。

F:ちなみにこのコートはどのあたりが気に入りましたか?

大平:そもそもデムナのバレンシアガが好きだったのですが、なかなかプロパーでは買えなくて。特にこういうシグネチャーのアイコニックなアイテムは弾数も少ないので、巡り合えた時点でラッキーという感じでした。デザインについて言うと、デムナ初期のコレクションを象徴する柄使いはもちろんなのですが、ガウンみたいな大きな襟も気に入っています。首の後ろ側でエッジが切り抜かれたような形になっていて、そこにロゴがあしらわれているのも可愛いです。

BALENCIAGAのコート
BALENCIAGAのコート
BALENCIAGAのコート

F:遊び心があって、デムナらしいディテールですね。

大平:あと、このコートで面白かったのが、ポケットの中にキンパ(韓国の伝統的な海苔巻き)を買った数年前のレシートが入っていたんです。そのレシートの日付けが、なんと私の誕生日で(笑)。そういう縁も嬉しくて、買っちゃいました。

BALENCIAGAのコート
BALENCIAGAのコート

Meryll Rogge PVCセットアップ

Meryll Roggeのセットアップ

F:次は、「メリル ロッゲ(Meryll Rogge)」のセットアップですね。大平さんお気に入りのブランドというイメージです。

大平:好きですね。デビュー初期から結構買っています。彼女が経験を積んだ「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」も好きだし、ウィットに富んだ知性を感じるデザインが好みです。下にスーツとかを着ればきちんとした場面でも着られそうだと思って買いました。上がスーツのベスト型なので。かっちり着てもありかも、オフィスにも着て行けそう、着て行けるはずと思って(笑)。

Meryll Roggeのセットアップ

F:大平さんらしいプラスワンのアイテムだなと思いました。

大平:仕事で少しかしこまった場に登壇する時などに、クラシックなスーツに合わせて着たりしました。これを1つ足すだけでスタイリングが楽しくなるようなアイテムです。ただ、やっぱりこういう素材は熱がこもりやすくて。冬の方が着やすいだろうなと思っています。

F:確かにPVCを使ったアイテムはかなり蒸しますよね...。

大平:他のPVC製品と比較すると、これはすごくしなやかで柔らかさがあります。何度か着ているのですが、シワで折り目がついたりしなくて。ずっと綺麗な透明を維持できていて、着用に伴う劣化が今のところ無いです。他のブランドでこういうアイテムを買った時、すぐに真っ白になってしまった経験があるので、これは技術の進化を感じます。

F:確かに柔らかいですね。数年前にPVCのアイテムが流行った時もそういうアイテムを取り入れていましたか?

大平:10年くらい前にバッグとかが流行りましたよね。服だとレインコートみたいなドレスとか、買っていましたね。そういうちょっと面白い素材の服が好きなので。でも、あの頃のアイテムは良くも悪くも異物感があったのですが、メリルのこれは少しモダンな香りがする気がします。上品で洗練されたムードがある。パイピングでアウトラインを強調するグラフィカルな手法も効いていると思います。

Meryll Roggeのセットアップ
Meryll Roggeのパンツ

F:今日穿いているそのパンツもメリルのものなんですよね。

大平:そうです。かなり長かったので丈を詰めています。裾のスリットが本来はもっと複雑なデザインだったのですが、丈詰め時に再現するのが難しくてシンプルな仕様に変更しました。

F:そちらはベストバイには入らなかったわけですが、PVCのセットアップを選んだ決め手は?

大平:激戦でしたね……。最終的な決め手は、出番がより少ないアイテムだったことかもしれません。「数回しか着ない服=無駄」と言われることも多いですが、私はそうは思いません。ファッションの魅力は、その時々の自分の気持ちや挑戦を形にできること。服にはそれぞれストーリーがあり、人生の一部になっていきます。「その時の思い出や高揚感を大切にするための服」と考えれば、むしろ人生を豊かにしてくれる投資とも言えるかもしれない、だからこその「ベストバイ」なんだと思います。

F:メリルといえば、「マルニ(MARNI)」のクリエイティブディレクターに就任しましたね。

大平:そう、びっくりしました!ずっと応援していたバンドがメジャーデビューするみたいな感覚で、おめでとう!という気持ちです。今までマルニはそんなに頻繁には買ってこなかったのですが、今後どう変わっていくか楽しみですね。特に、自分の中でマルニはメンズが魅力的なブランドだと感じているので、メリルが手掛けるメンズウェアに期待しています。

KIKO KOSTADINOV「ARMANTROUT PEARL NECKLACE」

KIKO KOSTADINOVのネックアクセサリー

F:次は「キコ・コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」のネックアクセサリーですね。

大平:これは本当に、ベストバイ中のベストバイです。天才的なデザイン!いわゆるバンダナ巻きなのですが、生地にチェーンがついているのでネックレスとしても使えるんですよ。普通に巻いても使えるし、チェーン部分に首を通して垂らすだけでも可愛いし。チェーンの表に出る部分にはパール調のビーズもついていて、この盛り盛り具合が寂しい首元を彩ってくれて最高なんです。

KIKO KOSTADINOVのネックアクセサリー
KIKO KOSTADINOVのネックアクセサリー

F:大平さんの首元が寂しいと思ったことはないですが(笑)。

大平:そうならないためのアイテムを探しているんです(笑)。ブルーとピンクがあるのですが、私はこの色が気に入っています。このドットの透かしとマルチストライプの変な組み合わせが、超可愛くてお気に入りです。レイヤーになっている黒い生地が断ちっぱなしになっていたり、裏は真っ赤だったり、要素が多いのに不思議と調和しているのがすごい。

F:これもまた大平さんらしいアイテムだなと思いました。年中使えるという意味ではコスパも良い気がします。

大平:そうなんです。秋冬コレクションのアイテムですが、季節も服装も問わず使えるので既に元は取ったかも!

KIKO KOSTADINOVのネックアクセサリー
KIKO KOSTADINOVのネックアクセサリー

F:これまでのベストバイでもそうでしたが、大平さんは一着でスタイリングが完成するアイテムではなく、組み合わせることでコーディネートの幅を広げられるようなアイテムを選び取ることが多いイメージです。

大平:家に膨大なワードローブがあるので、その子たちをうまく組み合わせて楽しんであげたいという気持ちがあります。組み合わせ甲斐があるものを買いがちですね。

F:コーディネートはどうやって考えているんですか?

大平:その日着たい主役のアイテムを1つ決めて、そこに色々と足し算をして肉をつけていく感じですね。その日会う人や訪れる場所を起点に考えます。例えば、今日はベストバイ企画の取材なので、紹介できなかったお気に入りを着てきたり。あとは「UKロックのトークショーだから、フジロックで買ったTシャツを着て行こう」みたいなこともあります。ライブのグッズとして買ったり、旅行先で一目惚れして買ったり、ショーに感動して買ったり、そういう思い出買いが多いんです。なので、自分の中にあるストーリーと人や場所を紐付けるようにして、主役の一着を選んでいます。あとは、そこに今の気分を表現できるアイテムを合わせていきます。そういう時に、メリルとかの一癖あるデザインは、私の着たい服に程よく馴染みながら、独特なコーディネートを作ってくれるので重宝するんです。

COMME des GARÇONS メルトンコート

COMME des GARÇONSのメルトンコート

F:服ではこれが最後、「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」のコートです。

大平:これはもうどの店舗も完売で、すごく人気だったみたいです。着ると分かりやすくて、見頃がボコッと膨らんでいるんですよ。ショートとロングがあったのですが、ロングの方が裾の広がりがよく見えるのでこちらを選びました。これもドーバーで見つけて、友人と一緒だったのですが「これは買いだ」という話になったんです。以前、「ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)」のコートを買い逃したことがあって、ギャルソン系のコートはすぐに完売するイメージがあったので、買えるうちに買わなくてはと思って買いました。

COMME des GARÇONSのメルトンコート

F:置いてあるだけだと形が伝わりにくいので、着てみていただいても良いですか?

大平:着たら惚れちゃいますよ(笑)。かなり変わったパターンですけど、真っ黒なので意外とどこでも着て行けそうじゃないですか?ショートはこのバックのフレア具合が物足りなくて、やはりロングを選んで良かったです。何よりこの見頃のボコボコした形が可愛くて。1997年春夏コレクションの「こぶドレス」を思わせるような、いかにもギャルソンらしい造形なんですけど、全体の雰囲気はシックなところが気に入っています。

COMME des GARÇONSのメルトンコート
COMME des GARÇONSのメルトンコート

F:確かに、エッジの効いたフォルムですがどこか上品ですよね。

大平:最近はもう鎧みたいな強い服を着る気分じゃないなと感じていて。さっきのパンツのシルエットの話もそうですけど、気負わず自分に寄り添ってくれる服がいいんです。且つ、どこか一癖あって特別なものに惹かれます。このコートも、一見なんの変哲もない黒いコートに見えるところが心地良くて。これが見るからにアバンギャルドで過剰なデザインだと、重すぎて気疲れしてしまう。揺るぎない個性がありながら、軽やかさや余白も残すあたりが名品だなと思いました。

Diffar「Fragrance Hair Oil」

Diffarのフレグランスヘアオイル

F:ラストは「ディファー(Diffar)」のヘアオイルです。大平さんの服以外の買い物を知りたくて、お出しいただきました。

大平:これはフレグランスヘアオイルというもので、香りにフォーカスしたオイルなんです。美容には疎いのですが、フレグランスとか香りにまつわるアイテムには興味があって。朝の支度の時間が豊かになるなと思って愛用しています。美容系のプロダクトのデザインで気に入るものってあまりないんですけど、これはパッケージもすごく素敵。色使いに「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」っぽさを感じたり、ボトルもガラス製で質感が良くて。服好きの方へのギフトにもおすすめです。

F:使い心地はどうですか?

大平:そんなにヘアアイテムに詳しいわけではないのですが、パーマヘアにこれを馴染ませるだけでいい感じにまとまるので気に入っています。東京の「SCENT」というヘアサロンがプロデュースしているみたいですよ。これ一本で済むので、あまり髪のスタイリングが得意じゃない人こそおすすめかもしれません。あと、私は仕事で集中したい時にタイのヤードム(スティック状のアロマグッズ)をよく使ったり、いつも香りの使い分けでマインドを切り替えているんです。ヘアアイテムで気分が上がる香りを楽しめるのは嬉しいですね。

Diffarのフレグランスヘアオイル
Diffarのフレグランスヘアオイル

今年を振り返って

大平かりん

F:今年は例年以上に服を買ったということでしたが、振り返ってどんな一年でしたか?

大平:若い世代の服好きの人たちとの交流が多い一年でしたね。「フォーブス ジャパン(Forbes JAPAN)」の「30 UNDER 30 」のアドバイザリーボードに任命していただいたり、学生を巻き込んだファッション系のプロジェクトを立ち上げたり、若い人たちと接点を持って学び合う機会がたくさんあって。あと、フォーブスの企画に参加したことをきっかけに、ファッション業界を目指す若者から相談を受けることも増えました。彼らと接する上で、自分がどんな服を着ているかがとても大切だと感じるようになったんです。ファッションを心から愛する大人としての姿勢を示し、若い世代が自分の「好き」を肯定したくなるような存在でありたいと思っています。

F:憧れや目標としてもらえるように、ということですね。

大平:若い人たちが抱える不安や熱い想いに耳を傾ける中で、好きなことを仕事にするためには、もっと幅広い可能性を示してあげることが大切だと感じるようになりました。そのために私が実践してきたことのひとつは、服をしっかり選んで購入し、自分らしく着こなして楽しむ姿を周囲に見せること。だから、この企画に継続して出演できることも有り難いです。私の姿を見て影響を受けた人たちが、自分の好きな服を自信を持って着て日々を過ごし、その姿がまた他の誰かに良い影響を与える——そんなポジティブな循環が生まれ、ファッション業界全体がより活気づいていけば嬉しいです。

大平かりん

F:2026年はどんな年になりそうですか?

大平:メゾンブランドのディレクターが大きく入れ替わって、潮目の変わる一年になる気がしています。自分としては、その新しい時代の流れに乗じて新しいことにチャレンジしたいし、業界全体を良くするための追い風になるようなアクションを起こしたいです。はじめの方に話しましたが、近年はファッションがより一層自由なものになってきていると思うんです。体型を良く見せるためとか、モテるためといった他者の視点に立った服選びよりも、自分視点で服を楽しんでる若者が多い。そういう尖った個性が、社会の荒波に揉まれて丸くなってしまったら勿体ないと思って。この先の未来は彼らのもので、その才能を発揮できるように背中を押したり、道を整えてあげるのが私たち世代の役目だなと感じています。来年のテーマは「サポート」です、昭和生まれに出来ることはこれしかない(笑)!

F:素敵な目標だと思います。来年も益々のご活躍とお買い物を期待しています!

■大平かりん
雑誌「GINZA」「BRUTUS.jp」の編集部を経て、現在はIT会社員兼ファッションエディター。「365日同じコーディネートはしません?」をモットーに、インスタグラムで更新している私服にはファンが多い。
インスタグラム:@ko365d

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