

ビスポークテーラー 水野隆守が手掛ける既製服ブランド「ヒダル(Hidale)」が、2026年秋冬シーズンで本格始動する。
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水野は、高校卒業後にアメリカ・ニューヨークでファインアートを学び、帰国後に文化服装学院へ入学。卒業後、日本有数のビスポークテーラー「テーラー&カッター(TAILOR & CUTTER)」の有田一成に8年間師事し、2015年に自身のアトリエ「コンパニエ ヴァン ヴェール(Companie van Verre)」を立ち上げた。

Image by: Hidale

Image by: Hidale
ヒダルは、2025年秋冬コレクションでデビュー。テーラーの知見を古典的なスーツスタイルとは異なる文脈で応用することで、テーラリングを一般的にイメージされる体型補正ではなく、フォルムやテクスチャーを表現する手段として提示している。縫製はあえてオーダースーツ専門の工場を多用し、既製服の工場では実現できない作り込みを追求。過去2シーズンは、自身のアトリエや知人のショップでの受注会のみで販売していたが、今シーズンはセレクトショップへの卸を受け付けるなどブランドの本格的な拡大を目指す。



オーバーサイズのダブルブレステッドジャケット
今シーズンは「Form Within Movement」をテーマに、体や時間との関係の中で現れる服のかたちに着目。体と生地の間に生まれる空間、動作に応じたドレープ、経年による質感の変化などをデザインするため、多くのアイテムで接着芯を用いず毛芯のみで重層的に仕立てた。オーバーサイズのダブルブレステッドジャケットは、膨らみのあるチェストとの対比でウエストのシェイプを表現。「本物のテーラーメイドであるか否かは、ラペルと袖周りの表情に出る」と語る通り、肩パッド代わりに毛芯を入れて裄綿を薄く配することで、円を描くようなふっくらとした袖の立体感を生み出した。
3ピーススーツは、ヴァルーズ風のVネックに真鍮の留め具をあしらったチュニックをウエストコートの代わりに採用。20世紀の労働者の装いに着想を得て、雨ざらしでくたびれたスーツの風合いを表現するべく、テーラーでは厳禁とされる製品洗いを施した。「その時代は芯地をフラシで縫い付けるのが当たり前だった。同じように縫っているのだから、水に晒せば同じような表情が出ると思った」と水野。柔らかなシワとフォーマルな1つボタンのコントラストにより印象的な一着に仕上げた。




映画「ロスト・イン・トランスレーション」の主人公がアンゼルム・キーファーだったなら、という設定でデザインしたというセットアップ
コレクションの軸となるスーツに加え、カジュアルアイテムも幅広く製作。美術家 アンゼルム・キーファー(Anselm Kiefer)が広大なスタジオを自転車で移動する様子に着想を得たサイクルコートは、巨大なフードが目を引く彫刻的なフォルムが特徴だ。斜めにカットされたスラッシュポケットや、深いサイドスリットなど必要最低限の機能だけを残すことで、ユーティリティウェアの無骨さを限りなく排除。セットアップとなるパンツは、M-47カーゴパンツのディテールから運転に役立つ裾のボタン式アジャスターだけを取り入れることで、ミリタリーの出自を感じさせない洗練された表情を生んだ。
カジュアルアイテムではそのほか、肉厚なフランネルで仕立てたピンタックシャツや、光沢の強いソラーロ生地のチノパンツなどが登場。水野は、「ドレス専門の工場に、あえてカジュアルな服を縫ってもらう。コストはかかるが、その余裕こそが真の贅沢だと思う」と話し、「工場さんが生き残っていくためには、需要が先細るドレスアイテム以外にも仕事の幅が必要。無茶な注文だとは承知しているが、二人三脚で一緒に成長していきたい」と物作りへの思いを語った。また、アノラックパーカーの裏地にはコットンネルを採用し、ナイロンの表地だけでは生まれないふっくらとしたシルエットを実現。裏地やポケットまでを構造の一部として成形に利用する、多層的な服作りを熟知したテーラーならではの工夫が随所に見られた。

ベルテッドコート

背面のドレープ
ブランドを象徴するアイテムというコートは、重厚なウール地を用いたベルテッド仕様。ウエストを絞った時に生まれる生地の深い陰影は、総毛芯仕立てでしか出せない表情だという。着物のような直線的なアームホールだが、僅かにカーブさせることで生地の地の目をコントロールし、曲線的な袖のボリュームを実現。「重要なのはフォーマルのどの規則を残し、どの規則を破るかのバランス」という言葉通り、体型補正を旨とするテーラーの設計とは一線を画しながらも、その技術が光るユニークなフォルムを作り上げた。
コレクションは、コートやジャケット、シャツ、パンツ、ニットセーターなど全15型をラインナップ。価格帯は、トップスが4万8400〜12万1000円、パンツは5万5000〜12万1000円、アウターは9万6800〜38万5000円。
コンパニエ ヴァン ヴェールのアトリエで注文を受け付けているほか、東京・青山のセレクトショップ「シーラカンス(coelacanth)」で受注会を開催予定。期間は4月24日から26日まで。また今秋より、セレクトショップなどへの卸を開始するという。
最終更新日:
ヒダル:公式インスタグラム
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