
Image by: Hidale

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ビスポークテーラー 水野隆守が手掛ける既製服ブランド「ヒダル(Hidale)」が、2027年春夏コレクションを発表した。今季は「Stereophony(立体音響)」をテーマに、シルエットと素材、縫製、ディテールの掛け合わせや、アイテム同士のレイヤードの妙を追求した。
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ヒダル 2027年春夏コレクション
水野は、文化服装学院を卒業後、日本有数のビスポークテーラー「テーラー&カッター(TAILOR & CUTTER)」の有田一成に8年間師事し、2015年に自身のアトリエ「コンパニエ ヴァン ヴェール(Companie van Verre)」を設立。2025年秋冬シーズンにヒダルを立ち上げ、昨シーズン本格的にデビューした。服の構造に関する深い知見を活かし、テーラリングを体型補正の技術ではなく、造形や風合いを表現する手段として取り入れたデザインを提案。縫製にはあえてオーダースーツの工場を多用するなど、一般的なカジュアルウェアの工場では実現できない作り込みも特徴だ。



昨シーズンから継続するダブルブレステッドジャケット(12万1000円)は、今季は軽量なリネンコットンのシャツ生地を使用。裏地を排した大見返しで軽やかに仕立てつつ、共布を裄綿として忍ばせて薄い毛芯を据えることで、生地の風合いを活かしながらテーラーメイド然とした立体的なフォルムを実現した。茶蝶貝を用いたボタンは、色むらの強い裏面をあえて表使いしたオリジナル。穴を開けない足つきの仕様でメタルボタンのようだが、目を近づけると有機的で複雑な模様に違和感を覚える。水野は「音楽におけるノイズのような役割」と語り、複数のアイテムに同ボタンを使用した。また、同じ生地を用いたシャツ(4万1800円)をセットで製作。ラペル付きのベストのような襟のパターンで、ジャケットの中に仕込むことで3ピースのような見た目になる。






“よく見ると奇妙”なディテールは、スーツの定番である「トニック」風のウールモヘア生地を用いたジャケット(14万3000円)でも散見。1ボタンの仕様に対して、ややアンバランスな低めのゴージラインを組み合わせ、ダブルブレステッドのようなスクエアカットを取り入れた。フロントボタンは、「ポルシェ(Porsche)」の名車「365」の幌にも使われたという、つまみを引き上げて着脱するユニークな機構のものを使用。生地のソリッドな質感とインダストリアルなボタン、直線的なエッジが好バランスを成した。コットン和紙生地のチノパンツ(6万9300円)は、通常巻き縫いする脇のシームなど、随所を断ち切りで縫製。職人の腕の見せ所である「いかに厚みが出ないように縫い代を処理するか」という問いへの、極めて原始的な回答だが、服作りを知り尽くす水野ならではのユーモアを感じる。




テーラーらしいテクニックがうかがえるのは、墨染めの和紙リネン生地のフォレスティエール風ジャケット(12万1000円)。芯地を排した軽い仕立てながら、肩周りのダーツで前肩処理をすることで立体感を生み出している。また、立襟を折り返したものが現代のテーラードジャケットの起源であることに着想を得て、折り返した時に襟がなじむようパターンを調整。強いカーブを描く上襟は立てると首にぴたりと沿い、丁寧な作り込みが光る。半袖シャツ(5万9400円)とイージーパンツ(6万9300円)のセットアップは、通常スーツに用いるREDA社の艶やかなウール地で製作。生地のドレープを生かしたたっぷりとしたフォルムで、襟は開襟とテーラードカラーを融合させた独自のデザインに仕上げた。




また、今季のスペシャルピースとしてジャンプスーツ(17万6000円)を製作。ラミーリネンのカジュアルな生地ながら、ジャケットと同様の手法で袖付けを行っており、ふっくらとしたアームの表情が上品な印象を与える。パンツ部分は裏地がフラシで縫い留めてあり、表地だけをロールアップすることでレイヤード風に着こなすことも可能。全体的にゆとりのあるフィッティングだが、ウエストに配したシンチバックでウエストマークすることができ、無数のタックが生まれることで柔らかな生地の質感をより楽しめる。「ただ大きく作れば良いわけではなく、締めるところを締めることが肝要。抑揚をつけることで初めて、ボリュームは美しさに転じる」と水野。フォルムと生地の表情を操ることに長けた、同氏の真骨頂と言えるアイテムだ。
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