

企業決算が次々と発表されている。筆者の生活圏である福岡では2025年に人流が回復したせいで、都市型SC(ショッピングセンター)が好調な業績となっている。福岡パルコは売上高286億5100万円で対前年比5%増と、3期連続で増収となった。テナントにおけるインバウンドの取扱額も対前年比33.5%増で、全パルコ中で最高額を記録している。福岡天神は距離的に近い韓国からの旅行者が圧倒的に多く、パルコもショッピングコースの定番になっている。また、IPコンテンツのポップアップストアやお笑い芸人・秋山竜次氏による「クリエイターズ・ファイル」の展覧会などの企画イベントも広域からの集客に貢献したとみられる。
一方、JR博多シティは売上高が対前年比微減の1485億円だった。だが、百貨店の博多阪急を除く7施設合計の売上高は、4%増の828億円と過去最高を記録。同駅ビルは中国人旅行客の減少でインバウンド全体の集客数は減少したものの、台湾などからの来店客が減少分をカバーしたと分析する。博多阪急の売上高は対年比5%減の657億円。インバウンド需要が落ち込み、免税売上げが22%減少した。中国に加え為替の影響で韓国からの訪日客の来店が減り、客単価が下がったという。だが、外国人旅行者もモノからコト、体験型消費にシフトしているとみられ、博多阪急の集客策が後手に回っている感は否めない。
キャナルシティ博多はKUOHKAやオニツカタイガーなどのテナントが好調で、賃貸事業収入が予想比で8.5%増加する(賃料増額は10%以上増)など好調に推移した。同施設の運営にあたる福岡リート投資法人は2026年8月期(第44期)以降も、同施設を中心に賃貸収益は安定的に成長していくと見込んでいる。だが、懸念もある。商業施設や賃貸マンションを併設した複合ビルに建て替えるため、23年5月に閉館したイーストビルが建設費の高騰により計画を変更。26年秋には国内最大級のグローバルワークや家具のローヤなど16店舗に加え、飲食店や体験型施設が入居し営業を再開するが、天神、博多駅との競合激化も指摘され予断を許さない。

商業施設は改装で新テナントを導入したり、施設そのものを傘下に加えたりと攻めの姿勢を崩さない。福岡パルコは天神二丁目南ブロック駅前東街区再開発に伴い、2027年2月末で閉館する。パルコ本館は1936年開業の旧岩田屋に入居したため老朽化が激しく、同店や新館、新天町と一体で再開発する計画だ。再開発事業は2030年頃に完工する予定で、建て替えによって耐震性をアップさせ、防災力を持つ施設に生まれ変わる。パルコ側はライブハウス、ギャラリー、ミュージアムなどの導入を図るというから、物販よりカルチャー発信の機能を高めることで、他の施設にない独自性を打ち出すとみられる。

パルコと対峙するのがJR博多シティだ。従来は九州の主要駅に駅ビルのアミュプラザを出店してきた。その事業が完了したため、2022年11月からは三井不動産系の不動産投資信託(REIT)から委託を受け、天神の都市型SCヴィオロの施設運営やテナント管理を請け負っている。JR九州としては人口減少で鉄道事業が頭打ちになる中、稼ぎ頭に位置付けるデベロッパー事業で駅ビル以外にも進出を目論む形だ。JR博多シティはヴィオロを27年春に駅ビルと同じ名称のアミュプラザにリニューアルする。ブランド力を生かしてテナントを誘致し、天神という激戦区で堂々と渡り合う覚悟のようだ。
JR九州の古宮洋二社長は2026年4月15日の定例会見で、(ヴィオロのアミュプラザ転換)について天神と戦うつもりはないと言い切る一方、岩田屋とかと当たらないテナントを揃えることでアミュプラザで培ったノウハウを使えると、自信をのぞかせた。ただ、ヴィオロは26年5月16日現在、地下から上層階までで11件もの空きスペースが発生。4月半ばには6件だったが、その後に5件も増えている。通常なら春には新店がオープンし集客の目玉とするはずだが、運営するJR博多シティのテナント誘致がうまくいっていないのか。それとも、パルコが27年春に閉館するため、ヴィオロ改めアミュプラザに移転する有力テナントを待っているのか。どちらにせよ、いろいろな問題点が露呈する。
まず、ヴィオロを所有する三井不動産系のREITとしては、テナントが完全に埋まり100%の賃料収入が入ってこないと、分配金にも影響が出る。REITはヴィオロが福岡天神の一等地にあることで投資をするに足る物件と判断し、含み益を顕在化しつつ資産規模を拡大できると考えたはずだ。もちろん、そのためにはデベロッパーが魅力的なテナントを誘致し、ビル全体の収益を上げていかなければならない。REIT側はJR博多シティがそれをできると思って任せたのだと思われるが、実際には空きスペースが11件も出ている。JR博多シティの親会社、JR九州も上場企業であるため、アクティビスト(物言う株主)から経営方針で何かと注文を受ける。パルコ閉店を待つなど悠長に構えている余裕はないはずだ。

福岡天神は再開発事業の天神ビッグバンで、商業施設のイムズが建て替えの最中にあるが、解体工事の遅れで26年末の完成が27年中にずれ込む。他の商業施設に移転したテナントもあり、フレンチテイストの「オクタホテル」「オクタカフェ」はヴィオロに移り営業を続ける。全国区の有名店ですら退店していく中、同店のような地元店は稀有の存在だ。一時は東京の渋谷ヒカリエにも出店し、テナントの辛口評論でお馴染みのコンサルタント小島健輔氏にも高く評価された。プロデュースし運営していたのは、老舗豆腐店松竹五右衛門のご子息、故・山縣永児氏。現在の経営主体は異なるが、山縣氏の感性が見事に受け継がれ、お客を惹きつけてやまないのだ。そんなテナントはそれほど多くない。 水面下では争奪戦が続いているはずだ。
とすれば、都市型SCは空きスペースを埋めるために期間限定店の導入も検討課題になるのではないか。西武渋谷店の閉店を取り上げた時、パーキング館1階のCHOOSEBASE SHIBUYAではD2Cブランドを扱い、OMO(デジタルのオンラインと実店舗のオフラインの融合)を目指していることに触れた。常設店だけでは集客が難しくなっていることを考えれば、ECが主力のD2Cブランドでもリーシングの対象にしてもいいのではないか。お客の側もネットだけでは購入を判断しづらいものでも、実店舗があれば現物を確かめられる。購入に結びつき、顧客化できる可能性は高い。もちろん、ブランド側は常設店は望んでいないだろうが、期間限定店なら出店はやぶさかではないと思う。
百貨店もSC化に舵を切り始めた
大手百貨店では高島屋が2026年2月期決算で最終赤字に転落した。免税売上げの減少が影響していたわけだが、前期が395億円の黒字だったところを見ると、5年ぶりの赤字は経営陣にとって相当な衝撃だったのではないか。他にも松屋が減益、大丸松坂屋百も免税売上げの低迷が収益を圧迫している。まあ、インバウンドを支えてきた中国人旅行客が国内の不動産不況や台湾有事に関する高市発言による渡航自粛要請で減少した面はあるだろう。でも、それだけが理由ではないと思う。このコラムでも以前から言っているが、外国人観光客も日本人以上に成熟している。だから、消費もモノからコト、カルチャーや体験型にシフトしているのだ。
福岡でも外国人観光客の買い物スタイルが変わってきている。従来は百貨店で人気の海外ブランドを購入していたが、それらも明らかに選別されている感じだ。先日も岩田屋1階の化粧品売場で、外国人が行列を作っていたのはシャネルのみ。1周年を迎えたワンビルでも、シャネルは入店制限を行い、お客が行列を作っていた。シャネルの2025年通期決算はまだだが、24年12月期は中国市場が停滞しているのに対し、日本や韓国は好調に推移したという。まさに店頭の状況が決算に現れている。他のブランドでは外国人が行列を作る光景は見られない。モノ購入にしてもアニメグッズやキャラクターのショップ、路地裏の雑貨店や古着店など、ネットでレアな情報を探して訪れるという話があちこちの店から聞こえてくる。
大手百貨店は免税品の売上げ低迷を受け、どんな対策を取っていくのか。選り抜いたモノを売っていくのは百貨店の使命。海外ブランドは日本人の顧客が一定数がついている。だから、商品政策の大胆な修正や売場の大幅な再編は難しい。できるとすれば、日本の文化や伝統技術を伝える陶器や磁器などの工芸品、鍋やフライパン、包丁といった調理器具、カップやカトラリー、テーブルウエアなど、単価が高い商品を打ち出していくしかない。並行して実演販売やイートインを通じた体験イベントを絡めていく手もある。百貨店が得意とする催事を訪日外国人向けにアレンジし、アピールする必要があるのではないか。

福岡の百貨店も同じ方向性で行くべきだが、外国人観光客に向けた商品政策や催事を強化する動きは見られない。むしろ、アパレルなど上層階のフロアが低迷していることで、売場の見直しに踏み出したところがある。それが福岡三越だ。三越伊勢丹ホールディングスが5月13日発表した2026年3月期連結決算で、岩田屋と福岡三越を運営する岩田屋三越の売上高は2.1%減の396億円で、会計ルール変更前の総額売上高では0.4減の1323億円だった。最終利益は前期比12.8%減の38億円となった。要因は円安を追い風にしたインバウンド需要が一服し、免税売上げが減少したのに加え、人件費や光熱費が上昇したためだ。それが三越伊勢丹グループの中では顕著だということ。特に福岡三越では外国人が9階にある100円ショップのダイソーを訪れると、他のフロアはスルーしていると言われる。予想以上に高級ブランドや化粧品の買い物離れが顕著になっていることが窺える。
九州運輸局によると、中国から九州への観光客は2025年1月から8割以上減少したという。クルーズ船利用の観光上陸者数も98.9%減のわずか670人。航空便も運休したため、中国からの入国者数は83.3%減の1万5939人となった。しかし、韓国や台湾からは3割程度増加しており、同運輸局が2026年4月27日に発表した26年1月の外国人入国者数は、1月としては過去最高の前年比1.5%増、47万8605人に達している。福岡は観光地が少ないと言われるが、九州新幹線や観光列車を利用すれば九州全体を回遊できるし、地域の物産も豊富なのでグルメや買い物需要も掘り越せる。九州経済調査会によると、九州では中国観光客の落ち込み分を韓国や台湾の顧客で吸収できるため、インバウンドの売上高は客数ほど落ち込んでいないそうだ。つまり、同売上げを挽回するには、成熟した外国人向けの仕掛けが不可欠なのである。
日本人、外国人を問わず新たな需要を喚起する。福岡三越は百貨店という業態からの転換に乗り出した。地下1階、9階に続き、5階から8階までを専門店フロアの「ラシック」に変更する。手始めに2026年3月24日から8階をクローズし、改装工事に着手した。岩田屋三越の経営企画部は、ラシックを拡大することで年齢や性別にとらわれない次世代のお客に来てもらう。百貨店にはこういう専門店フロアもあるんだなと気付いてもらい購買機会につなげられたらと、説明する。つまり、もう旧来のようなアパレルや服飾雑貨、誂え服、ゴルフ、旅行、美術品など百貨店特有の品揃えではお客に響かなくなったということだ。
言い換えると、フロアをフラットにしてテナントを誘致し、歩率家賃で稼ぐ戦略と言える。それは全館を百貨店として運営するのは不可能と認めたようなものだ。地方都市で次々と百貨店が閉店、営業休止に追い込まれる中、福岡三越は暖簾を存続するためにSC化に舵を切ろうとしている。訪日外国人が成熟し、買い物に対しても選別しているとすれば、自前でそれに合致するものを揃えるより、テナントに肩代わりしてもらう方が得策だとの考えなのか。だが、日本人客はそうはいかない。他の商業施設でも空きスペースが発生しているのをみると、テナント誘致が簡単ではない証左でもある。Jフロントリテイリング傘下の博多大丸は、シャネルがワンビル移転のために2025年3月末で撤退。その影響で同社の最終損益は4億3200万円の赤字に転落した。そこで、売れる商材を伸ばすことに舵を切る。

博多大丸が運営する福岡大丸天神店は2026年4月20日、投資額約10億円をかけてデパ地下の食品売場を改装すると発表した。本館と東館の地下2階の約7割の店舗をリニューアルの対象とし、手土産需要をねらった菓子店やベーカリーなどを拡充。ゴディバジャパン運営のベーカリーなど10店舗が九州初出店となる。いずれも営業を続けながら工事を行い、本館は5月20日から順次開店し、東館も秋ごろをめどに改装を終える。百貨店側はとにかく「九州初上陸」「福岡初出店」といった冠をつけて集客の目玉にする狙いだろうが、過去には同じようなテイストの店舗は数々登場している。どこまでお客に響き、集客に貢献できるかは未知数だ。

もちろん岩田屋、福岡三越、大丸福岡天神、博多阪急ともにお客が多いのはデパ地下。ここに注力してできるだけ稼いでいくのは、百貨店に残された勝ち方であるのは間違いない。岩田屋も2023年10月の改装で、地下1階に高級スーパーの紀ノ国屋や食材店のわた惣を誘致し、お客を集めている。それらをテコにいかに他の商材の買い物を促していくか。ただ、視点を変えてニューヨークのノードストロムのように商品を販売せず、受け取り・返品・試着・修理に特化したサービスの店舗も必要ではないか。これは都市型SCでも必要とする業態だが、日本、特に福岡のような地方ではまだまだ先のことか。もっとも、それを最初にやるところに商機が見えてくるのも間違いないような気がするが。勝つ手段、生き残り方の本質は見えている。
※当コラムは2010年ごろからGoo Blogにて執筆をスタートしました。ですが、25年11月18日でサイトのサービスが終了し、Amebaへの引越しを致しました。過去14年にわたる月別アーカイブは、2011年から併載していますlivedoorブログ(http://blog.livedoor.jp/monpagris-hakata/)でご覧いただけます。
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