ADVERTISING

中古品ビジネスが活況 経済成長が鈍化するタイ市場が狙い目?

クリエイティブディレクター
HAKATA NEWYORK PARIS

 中古品のビジネスが活況だ。スマートフォン一つで気軽に売買できるメルカリ、競売で高値に持っていけるヤフーオークションなどが定着。バーニーズ ジャパンも2026年6月5日、ヴィンテージ・ユーズドアイテムを展開するCHELSEA VINTAGE ROOM(チェルシー ヴィンテージ ルーム)を銀座店にオープンした。高齢社会で家庭に眠る宝石、貴金属などの隠れ資産は推定90兆円とも言われ、質屋系からリサイクルショップまでが買い取りにしのぎを削る。有名タレントを起用したテレビCMの大量投下はその表れで、商業施設の空きスペースを埋めるのがブランド品の買取店というのも、新品よりリユース品の人気が上がっているからだ。消費者も成熟すれば購入する商品をじっくり見極める。選択肢はブランドや高級品に留まらず、今の自分にとって必要なもの。価格より価値を優先するケースは確実に増えている。

 おまけに昨今のサステナビリティ(持続可能性)に対する意識の向上がある。捨てればゴミにしかならないが、修理すればまだまだ使える。だから、使うほどに愛着が湧いてくる。SNSの浸透で、年代物の調理器具からアナログ家電、家具や調度品、ブリキのおもちゃ、はては車に至るまでレストアする動画が溢れている。それらも復元する楽しさに加え、サステナビリティが新たな価値を生むからだろう。ビジネスがデジタル、情報技術、人工知能によって仮想現実の中で答えが出るようになった。その反動として人間の嗜好がよりリアリティを感じるものに揺り戻されているのは確かと言える。使えるものは使って、必要でなくなれば換金する。持続可能性の背景には合理主義も見え隠れする。

 政府も成長戦略に循環型経済を掲げる。生産し、消費し、廃棄するだけが経済成長ではない。多方向の経済システムに転換し、資源を循環させながら廃棄物を最小限に抑えて経済成長する仕組み作りを進める。政府はリサイクル率の向上を目指しながら、普及啓発や民間企業との連携を図る。ただ、中古品やリユースに人気が集まり、各社が参入すればするほど、ビジネス競争が激化する。消費者も路面のリサイクルショップに持ち込んでも二束三文にしかならない商品はだいたい認識している。だから、個人売買で不特定多数の中から欲しい人を探し出すようになった。

 メルカリが浸透した背景には、時空を超えて売りたい人と買いたい人を結びつけられるシステムがある。アプリは売却代金がアプリに貯まり、そこで別の商品購入を促していく。多くの消費者、特に女性層にとって、リユースを身近なものにしたのは、正にメルカリだ。ただ、2018年に13%から21年33%に伸びたが、25年は34%と鈍化している。これはリユースビジネスがパイの拡大から質的な変化へと向かっている証左とも言える。

 その一つは約90兆円とも言われる隠れ資産を市場に吐き出させるか。日本国内のリユース実施率は約40%程度しかない。言い換えると、6割がリユースに回っていないのだから、これを取り込むのが成長のカギと言える。次に取引のコストをいかに抑えるか。そのためにはEC化やデジタルトランスフォーメーション(DX)、ひいては無人化が不可欠になる。現在、リユース企業のEC売上比率は35%ほどまでに上昇しているが、まだまだ伸び代はある。さらに人手不足とコスト削減を考えると、無人店舗や自動買取機など非対面、自動化をもっと普及させていかなければならない。

 リユース品はブランド、貴金属、着物、一眼レフカメラなどとカテゴライズされており、それぞれの真贋鑑定には特定ジャンルに特化した高度な知識や専門性を持つ人材や業態が求められる。また、日本が飽和状態であることから、買取品をニッチ市場であるアジアやアフリカへ輸出する仕組みも整備していかなければならない。政府は2030年に向けてリユース市場を現在の3兆5,000億円から4兆6,000億円規模に拡大するロードマップを策定した。この中では、ゴミを焼却する上で排出されたCO2をできるだけ削減していく文脈で、環境負荷の低い選択肢としてリユースを推進する。

 一方、企業側はリユース市場の伸び代はあると言いつつも、市場における需給が頭打ちになっていると、感じている。行き着く先は資本力のある大手による小規模事業者の吸収だが、異業種からの参入が相次ぎ競争は今後も続く。そこでは各社がどこを強みにしていくのか。中古品の売買だけでなく、圧倒的な鑑定力か。デジタル技術による利便性の追求か。顧客へのサステナビリティの訴求なのか。それらを全て組み合わせるのか。専門性、総合力、強みを持てる事業者が次の成長ステージをリードするのは間違いない。

経済成長が鈍化するタイ市場は狙い目か

 中古品買取のセカンドストリートを展開するゲオホールディングス(以下、ゲオHD)は、タイを新たな市場に位置付ける。2026年4月、同HDはバンコク郊外の商業施設に10店舗目となるセカンドストリートをオープンした。売場面積は約400m2でアパレルの他、靴やバッグなど1万点を揃えるほか、中古品の買い取りも行う。23年に1号店をオープンし、現在バンコクを中心に展開する。26年度中にあと4店舗を、27年以降はチェンマイやパタヤなどの地方都市にも出店し、30年には50店舗の展開を目標にする。順調な出店を支えるのが、商品の真贋や品質などを見極める世界共通のマニュアルだ。そこでは古着の判定を言語だけでなく、万国共通の視覚によって決められる仕組みを導入した。

 タイの場合、古着店は屋外市場に出店するケースが多く、ブランド品を並べていてもデッドコピーの流通も少なくない。その点、マニュアルがあれば買い取り査定が正しく行われるため、お客にも偽物ではない商品が安心して購入できると好評だ。それが出店の引き合いにもつながっているとみられる。

 他社の動向はどうか。日系のトレジャーファクトリーもタイでの事業に注力する。現在バンコクを中心に5店舗を展開する。現地法人の2026年2月期の売上高は前期比39%増と好調だ。27年2月期には1店舗を出店する。ワールドはリユース業態のラグタグを海外ではタイに初出店した。同国の小売り大手のサハグループとの合弁会社を設立し、同社が店舗を運営している。タイでリユース店が広がっているのは、東南アジアでいち早く経済成長した点がある。消費者は生活にゆとりができれば、住宅や車、家電、衣服などを購入する。それがある程度揃えば、次はレジャーや旅行に投資し、その次は美容やダイエットへと移っていく。生活が豊かになればなるほど、物を手に入れることに拘らなくなる。したがって市場は成熟の過程へと移っていく。ファッションでは新品のブランド品を購入するより、古着をうまく着こなした方がお洒落だという価値感が醸成される。古着を含め、リユース品にも抵抗感がなくなるのだ。

 タイの古着輸入量は年間12万トン(世界銀行調べ)で、市場規模は10億ドル(1550億円)を超えていると。これは東南アジアではマレーシアに次ぐ規模になる。地政学的にも、日本や中国、シンガポールといったアパレルの消費地に囲まれているため、物流のジャンクションになりやすく、古着が集まりやすい立地にある。こうした利点から古着マーケットも定期的に開催されている。個人的にはタイでリユースが支持されるのは他にも理由があるがあると思う。タイは輸出と外資導入に依存した製造業主導の成長モデル(特に自動車・電子機器)を核として経済発展をしてきた。しかし、2010年以降は輸出が伸び悩み、成長率が低下してきている。一方で、個人消費と投資についても、2010年代に入ってから低調に推移しており、これも経済成長率低下の要因となっている。

 個人消費が低調な背景には家計のローン残高の大きさがある。これは2012年に新車購入インセンティブ政策が実施された際に、耐久消費財の購入等のため家計が借り入れを増やした後遺症と見られる。東南アジアでいち早く経済成長を遂げた反動で、次なる手段を見いだせないことから、成長が鈍化しているわけだ。消費者は景気がいい時に購入した消費財をローン残高を抱えていると、景気が鈍化してもローンを支払わなければならない。当然、家計の占めるローンを減らすために耐久消費財の新規購入を控える節約志向になる。それが皮肉にもリセールを活発化させる要因の一つになったとみられる。タイ経済全体をみると低迷気味ではあるが、経済構造の面では健全さを維持している。物価は安定し、財政規律も概ね維持されており、失業率は非常に低く、経常収支は黒字基調にある。

 ゲオHDやワールドなどの日本企業からみた投資先としてのタイの最大の魅力は、インフラ面を中心とした投資環境の良さだと思う。ただ、人気度という点では周辺諸国に比べて相対的に低下しており、労働者の質やコストといった面では、タイよりベトナムの方が日系企業から高く評価されている。リユース店が出店を拡大する上でも、いかに優秀な人材をリクルートできるか。タイ自体が人口が減少しており、労働力の確保は容易ではないようだ。かと言って、人手不足の日本から人材を送り込むことにも無理がある。そこで、ゲオHDは既存店間でスタッフを融通できる勤務シフトに変更。また、店長職を現地スタッフが担えるようにした。併せて広域で働けるスタッフは給与を増額するなど待遇の改善にも手をつけた。成熟したタイだからこそ、高給がもらえるところに有能な人間が集まるということだ。

 リユース店は買取だけでは成り立たない。買い取った中古品を確実に販売してこそ、収益が生み出され、次に商品を買い取るための原資となる。つまり、新品が売れることにより、中古品市場に一定数の商品が流通することが市場形成のカギというわけだ。ただ、中古品が生まれやすい日本や中国から商品を調達すれば、関税や輸送費などのコストがかかる。つまり、リユースビジネスは現地で商品を調達し、確実に売って収益を上げていくモデルを作り上げることが肝になる。市場の成熟と循環型消費、経済成長の鈍化やローン返済による節約志向で、急成長するタイのリユース市場。買取から査定、販売までのノウハウとスタッフの指導・育成と適正配置を確実に成し遂げるところはどこか。日本での成功モデルが次のタイ式になるのは間違いなさそうだ。

 ※当コラムは2010年ごろからGoo Blogにて執筆をスタートしました。ですが、25年11月18日でサイトのサービスが終了し、Amebaへの引越しを致しました。過去14年にわたる月別アーカイブは、2011年から併載していますlivedoorブログ(http://blog.livedoor.jp/monpagris-hakata/)でご覧いただけます。

最終更新日:

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント